トミックスから2017年に発売されたC11 325号機が3年で発売中止になったあと、すぐに発表された新しいC11です。私はきかんしゃトーマス号自体にはそれほど入れ込んでいませんが、動力には注目していました。
微妙な感情も残していたC11 325号機の動力ユニットに比べ、ぐんと安定性が増して走らせるのが数段楽しくなりました。
※すべて私の手持ちの品(2両)でのピンポイントな感想ですのでご了承ください。多数市場に出ている製品が全体的にどうか、また買った人によって印象がどうかは知る由もありません。
いきなりケースの底で蚊がひっくり返って死んどりました。真夏に製造されたんだなぁ…。
そのほかの付属品としては、別付けのブレーキホース、つかみ棒、カプラー類、そしてキャブ内に積む補助ウェイトがあります。
C11 325号機にあったミニカーブ用のキャブ下パーツは今回ありませんでした。
ボディーを外し、C11 325号機の動力ユニットと簡単に比べてみました。
今のところ大変調子よく動いているため、あえて中のほうまでばらしてはいません。そのへんは最近になって学びました。
新しい動力全体です。
外形はC11 325の動力(旧動力)とほぼ同じですが、すぐに目に留まるのはモーターが変わったことです。
●旧動力
トミックスの国鉄形蒸機としては初めてコアレスモーターが採用されていました。
ウォームの前後の軸受けはダイキャストブロック側のガイドにはめ込まれていました。ウォームの前方はフライホイール的な形状ですが、サイズが小さく効果のほどはよくわかりません。
●新動力
モーターはC57やC61などと同サイズのものに変わりました。そのため最上部の高さが若干上がっています。トミックスには類形のモーターがいくつかありますが、説明書の交換用パーツリストにはモーター品番はなく、代わりに「修理対応」とだけあります。
ウォームの前後の軸受けは、上から被せるウォーム押さえの溝で支持されるようになり、ダイキャストブロック側には直接はめ込まれていません。
ウォームのほかジョイント類の形状やクリアランスが変わり、たぶんここに多くの改良ポイントがあったものと思います。フライホイールの前後長は旧製品よりも短いようです。
ちょっとした疑問ですが、このサイズのモーターが収まるならば、C11 325号機も最初からこの線でよかったのではないですかね…。
その時点では総合的に考えて、コアレスモーターが最良の選択肢だったということでしょうか。
今回ライトの消灯機構はなくなりました。
●旧動力(底部)
動輪押さえを外したところです。
旧動力では第2・第3動輪がギヤ連動しており、どちらにもゴムタイヤが付いています。
動輪の集電はおもに第1動輪に頼ることになりますが、私が持っていた個体ではあまり有効に機能していませんでした。ゴムタイヤの付いている第2・第3動輪に比べ、第1動輪が微妙に浮いていた(接触が軽い)ような印象で、第1動輪からほとんど集電されない個体もありました。
●新動力(底部)
新動力ではギヤ連動しているのは第3動輪のみで、ウォームから第3動輪まで第2動輪を避けるようにアイドラーギヤで伝達されています。ゴムタイヤは第3動輪のみについています。
旧動力に比べると第1動輪にも荷重が大きくかかるようになり、集電はしっかりなされるようになっているようです。私の手持ちの個体では全体的な集電性能の向上は明らかで、集電途絶は皆無となり低速からまったく安心して見ていられるようになりました。旧動力では個体差もありますが、いつ止まるかとハラハラするものもありました。
新動力はギヤ類の配置などが非常にシビアなようで、動輪押さえのネジ穴の位置もまさにギリギリですね。小さいNゲージでは、ネジって本当に場所をとるんですよね。
●旧動力(後部)
コアレスモーターがライト点灯よりも先に動き出すのを是正するため、後部には半固定抵抗器が設置されていました。
後部ライト基板の両端の接点はダイキャストブロックの枠の上に接していましたが、接触が不十分なことがあり、モーターにまったく通電しなくなることがありました。
●新動力(後部)
モーターが変更されて調整機構が不要となり、後部にはライト基板のみとなりました。
ライト基板の接点はバネでしっかりダイキャストブロックに圧着するようになりました(この上にプラスチックのふたをはめると押し付けられます)。
動力部外観からすぐ気づいたのは以上のようなところです。細かい調整点は他にもあるかもしれません。
通電式の先台車・従台車のパーツは見た感じでは旧動力と同じだと思います。また旧動力と先・従台車を交換しても、それぞれの走行性能は変わらないように感じました。
ちなみに私の個体(新動力)では、先・従台車のどちらかを外しても走行には影響がありませんでした。両方外すとさすがに止まりそうになる箇所がありましたが、それでも旧製品の普通個体と同程度です。
説明書にはいつものコンビネーションレバー(合併テコ)の記載のほかに、加減リンクが外れやすいとの記載があります。私はまだ経験がありませんが、同じような付き方をしている他社の模型で外れたことはありますので、あり得るかもしれません。もとの位置にピンセットではめればOKです。
私の手持ちの個体のことしかわからないことを強調させていただきますけども、断然良くなりまして大変嬉しいです。パワーパックのつまみを動かして、ちょっと動き出した瞬間からまったく手ごたえが違いました。
これは本来、平均的にこうあってほしかった当たり前品質だと思いますが、集電が本当にまともになりました。旧製品はたまに手を貸さないと謎の集電途絶を起こしてエンドレスを1周できないものもありました。良いものに当たれば普通だったのですが当たりはよくなかったですね。
これを書いている数十分の間、蟻が歩くより遅い程の速度で新製品を周回させ続けていますがまったく止まりません(繰り返しになりますが大手メーカーの製品として、それは当たり前品質だとは思います)。
走行中のフレもなく大変安定しています。
旧製品で特徴的だったのは、KATOのパルス式パワーパック(スタンダードSXなど)で走らせると、動き出しや止まる寸前の超低速時に「ジジジジ…」「ジョリジョリ…」のような聞きなれないノイズが乗ったことです。これは新動力でも鳴りますが多少低減したような気もします。ただ使うパワーパックと個体差によっては旧動力のほうが静かなものもありました。もし旧製品でこの点が一番の不満だったという方がいらっしゃれば、今回の私の個体ではあまり改善を感じないかもしれません。
私はこの音を、トミックスのコアレスモーターとKATOのパルスとの相性の問題かと思っていたのですが、モーターが変わっても消えないので原因は違うのですね。
ただ、動き出して常用速度に乗るまでにはほぼ消えるので慣れました。ジジジといって動き出す機関車なんでしょうね(笑)。販売店の環境音によっては店頭での試走でもわからないかもしれません。パルスとの相性といえば、動き出しの超スローのあたりでコギング的な断続感がありますが、これもGM3系モーターでよく見るような程度のものです。
一方、トミックスのN-600やN-1000CLなどのパワーユニットで走らせますと、そんな音はなくウソのように静かに出発します。超低速時の断続感もあまり感じませんが、その代わり動き出しの第1ノッチ?の速度はトミックスのほうがやや速いかもしれません。このあたりは好みも分かれるでしょう。
度々繰り返して申し訳ありませんが、私個人の所有するごく少数の車両を、限られた環境で走行させたときの感想にすぎません。皆様お持ちの個体がそれぞれの環境でどのような走りをするか、どのような印象を持たれるかはわかりません。発売されてから日も浅く、私の感想も今後変わっていく可能性があります。
なお「良くなったな〜よかったなぁ〜」と満足感に浸った後、KATOのC11を走らせてみると、それがまた滑るように静かに走り出しましてあっけにとられ、今はすごい時代なんだなぁと再認識したりします。
新動力の外形は旧動力とほとんど同じなので、C11 325に装着することもできます。
上廻りだけ不徹底に置き換えてみましたが、簡単にできました。
C11 325号機のボディーはどこも削り合わせていません。そのままパチパチとはめられました。
安全弁のみ、C11 325号機のままでは取り付け脚がモーターに当たって若干浮くので、きかんしゃトーマス号の安全弁に交換してあります(ボイラー内側への出っ張りが少し短くなっています)。
私はすでにC11 325号機をKATOのC11の動力と合成したものを作ってあるので、この改造―というか組み替え―を進めることはありませんが、発売終了となったC11 325号機が動力を置き換えのうえ再販されるという可能性は期待してしまいます。
(2年後に結局やってみました。→C11 325にきかんしゃトーマス号の動力を移植)
今後も恐らく動力の細かい改善は続いていくと思いますけども、ひとまず今回の新動力は今後のC11シリーズのバリエーション展開の土壌になり得ると思います。まずは第一歩と言いましょうか。C11は復活機も各地で活躍していますから、時代的な変化も含めてトミックスの得意な題材はあるでしょう。どんどん行きましょう(笑)。
オマケみたいになってしまいますが、ちょっと外観も置いておきます。