アーノルドカプラー用のアンカプラーは現在日本のメーカーからは販売されていませんが、海外製品は存在します。手持ちの品で動作を試した様子を書いてみます。
私は本来アーノルドカプラーが好きなので(このサイトをご覧いただくとそうは見えないかもしれませんが)、時として自動解放に無駄な執念を燃やしております。
2015.8.29
KATO(関水金属)がATLAS規格の線路を発売していたため、国内でもたまに見ることがありました。店や時期によって違いがありますが、概ね1,500円〜1,700円ぐらいで売られていたと思います。
パワーパックのAC17Vにつなぎ、モーメンタリーの押しボタンスイッチによって、ボタンを押している間だけ解放ランプを押し上げるものです。レールの長さは124mmで、現在のユニトラックと同じです。
なお関水金属も1972年頃まで、この次の品番#2508の電動アンカプラーを販売していました。機械部分の形状が#2507とはかなり異なりますが、残念ながら手持ちがなくご紹介できません。
箱の裏側の説明です。類似製品の中では詳しく書かれているほうです。
他の電動アンカプラーと同様、1個のソレノイドで駆動し、ACではなくDCでも動作します。しかしDCだと電流が流れっぱなしになるためか、短時間でコイルがとても熱くなります。断線しやすいように感じますのでACで使ったほうがよいように思います。
またACですと電流が断続するためか、開放ランプが細かくビリビリ震えるような動きをし(振動でブザーのようなビーという音もします)、それがカプラーを揺さぶるため解放しやすくもあるような気がします。
当時の電動ポイントにあったような、瞬間に電流を流さないと焼けるというような表記はありませんが、心構えとしては同じかと思います。何秒ぐらいの連続通電に耐えるのかは試していません。5秒ぐらいなら切れませんでした。
写真は今も売られているフライシュマンの22212(元ロコ)です。アトラス#2507と駆動部・機械部はまったく同じのようです。
レール長は104mmなのでそこだけ違います。
解放ランプの部分は形の異なる別パーツも付属しています。
両者を並べたところ。ご覧のとおり駆動部分は同じです。
さて、アトラス製品ですが、ユニトラックにつなぐためにコルク道床に載せることにしました。
ユニトラックは、コルク道床に載せた固定式線路と高さがぴったり合うように作られています。
接続しやすいよう、リード線の先端にコネクターをハンダ付けしました。トミックスの電動ポイントのものです。
押しボタンスイッチはアトラス製品には付属していますが、別途用意してコネクターを取り付けました。ちょっとふざけて、いかにも押しボタンらしいボタンにしました。片側はKATOの旧パワーパック・スタンダードののAC端子に、もう片側は電動アンカプラーに接続します。
ボタンを押している間、「ビー」という振動音がしてランプが上がります。これによりカプラーを押し上げつつ、機関車を移動して解放するという操作を数秒で行います。
※ユニトラック側のユニジョイナーは外し、別途固定式線路用のレールジョイントに交換しておきます。
カプラーが解放ランプ上に来るよう停止させたところ。
通電するとカプラーが上がります。
うまく解放するためには、カプラーが正しい高さで水平に取り付けられていることが絶対条件です。ねじれたり、斜めになっていたりすると、カプラーが完全に上がりきらずに解放しませんし、相手のカプラーに引っかかってしまうこともあります。きちんと直しておきます。
どうやってもカプラーの位置が定まらないような、ずさんな作り?の車両の場合、うまく解放できません。
その他の手持ちの製品をありったけ使ってみました。
左上:フライシュマン(元ロコ)22212
右上:フライシュマン(道床付き)9112
左下:ミニトリックス 4969
右下:フライシュマン 9114(手動式)
フライシュマン3種はいずれも現行製品があります。
ミニトリックスの4969は古い品番で、その後は14969が相当するかと思います。写真で見る限りは微妙な違いはあるものの、ほとんど同じのようです。
(2017.1.2 追記) ミニトリックスの14964を購入してみました。4969に比べコイル外見が少し長く、細くなっており、解放ランプの固定ツメの位置が少し違います。枕木裏の刻印は4964のままでした。動作の様子も同じです。
フライシュマンの9114は、手動つまみを引き抜いて駆動ユニットを取り付け、電動化することができます。ただ駆動ユニットは国内では入手難で、値段も取り扱い業者によって相当の差があるように思います(概して高い)。
電動式の9112は、手動式の9114に最初から駆動ユニットを取り付けた製品に見えますが、実際には別物で駆動部分は取り外せません。また機械部分の形が相当異なっています。
9114はランプが台形状なのに対し、9112はなだらかに丸みが付いています。
手動式の9114は、つまみ部分が軟式プラの一体構造になっています。レバーを倒してパチンと爪に引っ掛けると、解放ランプが上がった位置でロックされます。この状態で機関車を推進して切り離します。
切り離したら、端のつまみを押すと爪が外れ、レバーがプラの弾性で元に戻って解放ランプが下がります。古くなると弾力がなくなって戻りにくくなることがあります。
この手動式アンカプラーに、専用品でない適当な動力を付けて電動化してみました。
まず手動つまみを取り外し、厚さ1mmのプラ板で代わりの台座を作って差し込みました。
もう使わなくなった、初代トミックスの電動ポイントの駆動部を貼り付けておしまいです。
電動ポイントには左右ありますが、左用だと端がはみ出すので右用を使いました。
これはAC3線式です。そのまま専用のポイントコントロールボックスにつなぎ、パチンパチンと切り替えてUP/DOWNできます。
ただし後述しますがこれは惜しいところでうまく解放できませんでした。
すべて道床を付けました。
(話があっちこっちに飛んで申し訳ありません)
通常時・上昇時のアンカプラーを横から撮影しました。それぞれの解放部の形状の違いがお分かりいただけると思いますが、原理は同じです。
解放の成功率はまずまず。振動が結構あります。
アトラスとまったく同じ。ただ個体差はあるらしく(たぶんアトラスも)、手持ちのものでは若干アトラスのほうが解放しやすかったです。
ランプ形状のせいもあって適切な停止位置が決めにくく、やや解放しにくく感じました。うまくいけば丸みに沿ってカプラーのピンがすべり、するりと解放するのですが…。
音は静かで振動も少なく動作は最もスマートでした。
手持ちの中では動作が最も確実でした。見た目はどれも大して違いがないので、まあ偶然の揺らぎかもしれませんが。ランプは金属製のようで(他はプラ製)、非通電時はこの重みで定位置まで下がるようです。
単独ではうまく動いているようですが、実際にカプラーを押し上げようとすると、負けてしまってきちんと上がりきらず、解放できませんでした。もう一息のところです。駆動部のつまみの取り付け位置がいい加減だったからかもしれません。いずれ再挑戦したい…。
下手糞な動画で申し訳ありませんが少々用意しました。音声がありません。再生できないこともあるかと思いますのでご容赦ください。
短時間にしようとせわしない動きです。
フライシュマン 9112 (MP4形式・82K|MPEG形式・986K)
C11 SL「かわね路」号
フライシュマン 22212 (MP4形式・129K|MPEG形式・1.26M)
C11 SL「かわね路」号
ミニトリックス 4969 (MP4形式・154K|MPEG形式・1.25M)
D51 SL列車セット
駅に到着して機関庫に入るにも、ターンテーブルで向きを変えるにも、切り離し操作は欠かせませんから、自動解放ができると大変楽しいです。
いつか、1970年代頃のNゲージ車両が活躍するようなレイアウトを、当時の雰囲気で作ってみたいと思っています。
関水金属なら初期のC11・C62・D51といった1/140蒸機、トミーでいえばトミーナインスケールの頃です。
カプラーもアーノルドカプラーのままとするため、対応するアンカプラーを自作したり、中古品や海外製品を試したりしています。しかし、いつになるかわかりません。
旧記事:→アーノルドカプラーで自動解放