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 ジェンダー 
4.性差の生物学的な証拠?

「男女差は生まれつきの生物学的なものだ」という主張をよく聞きます。
でも、はたしてそう断言できるものなのでしょうか。





「左右の脳の分業の仕方と脳梁の太さが女性と男性とで違っていて、
     これが男女の言語能力の差をもたらしている」

  つまり、「女性は言語活動で左右の脳を使い、脳梁が太いから
        言語能力にすぐれている」
という説について

 実は、半球分化が進んでいる方が能力が発揮されやすいという説もあり、
 左右半球の機能差と能力とを結びつけるような確証は、
 まだ得られていないそうです。

 また、ある種の能力や傾向と脳の構造や機能との間に
 たとえ相関があったとしても、
 どちらが原因で結果なのかはわからないとは思いませんか。

 わたしたちが生まれたときには、脳は15%しか成育していないと
 言われています。
 残りの85%は、生まれたあとで起こるさまざまな刺激によって
 成長していくのです。

 たとえ今、女性の方の言語能力がすぐれているという
 実験や観察の結果があるとしても、
 「女性だからそのように生まれついている」というわけでは
 ないのかもしれません。

 子育てを任され、家族の世話をし、人間関係に配慮すべきだとされる
 女性の方が、現状として、結果的に言葉をより多く使うことになり、
 その経験の結果が、脳の機能差を生み出しているとも
 考えられるのではないでしょうか。


「女性は地図が読めない」とか「女性は空間図形が苦手」などの説について

 これも、「女性だからそう生まれついているのか?」という疑問がわきます。

 そもそも、地図を読むためや数学の空間図形を考えるのに必要な
 空間的な思考は、まわりの環境を探検し、からだの能力を発達させることと
 密接に結びついていると言われています。
 つまり、幼い頃の肉体的な自由が、空間的な思考のための技能を
 発達させるのだそうです。

 このような技能は、およそ8歳くらいまでは、女の子と男の子のあいだで
 差はないと言われています。
 そしてその後、子どもたちの技能に、少しずつ違いが現れ始め、
 思春期の頃に、その違いは最もはっきりするそうです。

 8歳というと、そろそろ女の子たちに対して、「おてんばではいけない」
 「女の子らしくしなさい」と言われはじめる頃ですよね。

 そして思春期の頃の女の子たちの行動の自由は、
 男の子たちに比べて、かなり厳しく制限されています。

 また、ほとんどの女の子たちと同じように、
 のびのびとからだを動かすことをあまりよしとされなかった男の子たちにも、
 この技能に関して、女の子たちと同じような発達の傾向が見られる
 という事実があるそうです。

 ですからこれらの能力は、生まれつきではなく、
 その後の経験によるものであると言えるのだと思います。





現在、確かに男女による能力の差や脳の違いなどが測定されています。

でもそれは、生まれつきのからだの違いが原因だとばかりは
言えないのではないでしょうか。

からだの違いと能力差は、どちらが原因で結果なのかはわかりません。
また、たとえからだの違いが原因だとしても、
それが生まれつきであるとは限りません。
育てられ方によるものなのかもしれないのです。

今、観察されている性差は、乳幼児期からの経験や学習によって
もたらされた社会的な性差(ジェンダー差)であり、
今後、男女の経験が似たようなものになるにつれて
その差は縮まっていくのではないかと、わたしたちは考えています。


    参考文献:『ジェンダーの心理学――「男女の思い込み」を科学する』
                /青野篤子 森永康子 土肥伊都子/ミネルヴァ書房
           『ほんとうの自分を求めて ―自尊心と愛の革命―』
               /グロリア・スタイネム 道下匡子 訳/中央公論社



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