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モラルハラスメント

          2.合理化


加害者は、どんな方法をとってでも、虐待の事実や権力の濫用を正当化し、
合理化します。
冷たく、固い感じで自信を持って言い放つ合理化の言葉は、たとえ被害者が、
「あの人の主張は、何かおかしい」と感じていても、反論する隙がないように
感じるほどで、第三者なら、ほとんどが納得させられてしまいます。
その基本的な考え方は、自分は絶対に正しいという思い込みであり、
したがって相手に問題があるということになります。

加害者自身、自分がしていることが暴力であり、虐待であるとは
思ってもいないのです。

1.自分は正しい

加害者は、自分は正しい、自分は全てわかっていると思っています。
自分の価値観が正しいということをまるで疑っていないのです。
自分を基準に考えると、自分の考え以外は認められず、
他人からの助言や示唆を拒否します。
あなたのしていることは虐待だと言われても「違う!」と主張します。

ときには、相手を「何か」から救ってやるためにしていることだと思い込み、
虐待よりもその「何か」の方が大変なことであると信じ切っていることも
あるのです。
その大変な「何か」から救ってやるのですから、加害者にとっては
「正しい」ことになります。

その場ではいつも、加害者がルールブックなのです。

2.相手に問題がある
 1)責任転嫁


加害者は被害者に問題があると主張します。
暴力行為が、被害者の問題として正当化されるのです。
加害者の会話のパターンは、「あなたは…」「おまえが…」であり、
「俺を怒らせるおまえが悪い!」と、被害者の側に責任を押しつけます。
もし、被害者が暴力を受けたとまわりに話し始めると、
その人の性格、能力などの問題点を(たとえ作ってでも)訴え、
その人の話には信憑性がないと主張するのです。

 2)指導、教育

加害者は、自分の考えは正しいと信じているので、自分がしていることは
暴力ではない、指導、教育だと思っていることもあります。
そうして暴力は、指導、教育という名、つまり、いたらない相手のために
愛情のある自分が指導、教育してやっているという意識で行われ、
実際は相手を支配するのです。

その上、加害者は、被害者自身にも愛情からのことだと認めるよう強制し、
自分がしていることは正しいことだと認めさせようと躍起になります。

この関係は、親子に限らず、夫婦、恋人、職場での上司と部下、
いろいろな場所での先輩と後輩などの間でも起こり得ます。

3.虐待の否認

加害者は、されることには敏感で、自分の苦しさは強く訴えますが、
その割には自分がする事には鈍感で、虐待をしているという認識が
ありません。
感覚が麻痺しているように、自分の行為に伴う受け手の苦痛には
鈍感なのです。
今起こっている問題を認識せず、虐待をしているという自覚がありません。
虐待しているときの自分自身の葛藤や罪悪感は、意識化されず、
被害者が「つらい」「きつい」と言っても、自分が原因だとは思いません。
たとえ虐待だと本人に伝えても、思い当たらないと言います。
自分の行為の原因と結果がわかっていないのです。

また、加害者は、自分自身の衝動的な暴力行為を、あまり記憶していない
ことさえあります。

4.抑圧し、抹殺したい部分

実は、加害者が暴力を合理化するために被害者に対して指摘することは、
加害者自身にも当てはまることが多いのです。

加害者は、被害者に問題があると主張しますが、実はその問題の部分は
自分自身の中にも見られます。
自分がその問題の部分のような考え方をするからこそ、相手の行動が
そのような意味にとれるのです。

加害者は、自分の中にあってはならないと思い込み、抑圧しているある側面を
他の誰かの中に見つけると、その人を抑圧します。
自分の中のその部分を見るのに耐えられないため、相手にそれを投影し、
相手の問題として論じていく。
または、自分はきつい思いをして抑圧しているのに、それを平気で出している
相手に対して腹が立ち、そのような相手のあり方自体を問題にする。
いずれにしても、相手の問題として合理化していくのです。

そのようにして、加害者は自分を見つめることなく、生きのびていきます。
まるで自分の力を、他者を抑圧するためか、自分を抑圧するためにしか
使えないかのようです。

また、加害者は、相手の中に自分のありようを脅かすと感じるような
危険なものを認知した場合、それを抹殺しようとします。
そのために、相手のその側面こそが問題の部分だと訴え、
暴力を合理化して相手を抹殺するのです。



加害者の精神的暴力は加害者自身によって合理化され、
被害者はひとり、卑劣で理不尽なモラル・ハラスメントのアリ地獄へと
追いつめられていきます。

次は、そのモラルハラスメントの「卑劣さ・理不尽さ」について
まとめます。          


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