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モラルハラスメント
7.被害者の心理状態A
1.アリ地獄
被害者は、加害者から小さいことをこまごまと管理され、支配されます。
しかし、どんなに加害者の期待に添うように努力しても、加害者がその瞬間に
思い描いている完璧さと全く同じでなければ、攻撃されてしまうのです。
そのような完璧さなど実現不可能なことですので、何をしてもしなくても、
常に攻撃はやってくるということになります。
被害者には、加害者の怒りや恨みの力には限界などないように感じられます。
永遠に続く、地獄のような生活は、自分にトドメを刺すまで続けられるのだと
思い知らされてしまうのです。
逃げたいと思っても、逃げる行為自体までも攻撃されるため逃げられません。
被害者にとっては、八方ふさがりのアリ地獄状態なのです。
2.アイデンティティのゆらぎ
1)孤立無援感
被害者は、加害者によって外部の人たちとの関係を厳しく制限され、
連絡を取ることを許されません。
連絡を取ったことがわかれば、それは加害者への裏切り行為として、
激しく攻撃されてしまうのです。
また、被害者にとって仲間であるはずの内部の人たちも、加害者によって
分断されており、被害者は孤立無援感を感じます。
被害者は、「こんな気持ちになっているのは自分だけだ」と思わされ、
「誰に話してもわかってもらえず、かえって自分の方が悪いとされる」
と感じています。
また、「相談したことはきっと加害者にわかり、そのことでまた新たな攻撃がくる」
と思うと、誰に話すこともできません。
加害者によって、被害者同士もつながることができないのです。
2)自尊感情の破壊
被害者は、他者との関係を持てなくなり、自分自身の感覚も
信頼できなくなります。
そして、自分というものがゆらいできます。
ことあるごとに加害者から非難され、その存在さえも否定されるような
扱いを受け、自尊感情が破壊され続けているように感じます。
そのような状況の中では、自分自身を守っていく力さえも、見失ってしまいます。
3)判断力の低下
そのようにして被害者は、考えることも理解することも、判断することも
難しくなっていきます。
極度の緊張と孤独感、自尊感情の低下という状況の中で、
本来は簡単に判断できるようなことさえ、できなくなってしまうのです。
そして、とても理不尽なことに、そのことがまた、加害者の新たな攻撃の
材料にされてしまうのです。
3.降伏
1)無能感
被害者は、もう何もできなくなります。
何をしても加害者から常に軽蔑され続けると、本当に自分は何もできない、
軽蔑されてもしかたのない人間なのだと感じるようになってしまうのです。
その結果、ひどい扱いを受けていると感じたとしても、それを他の人に
伝えることができない状態に落ち込みます。
2)無力感
常に変化する加害者の気分に逆らうと、大変なことになります。
そのような日常的な恐怖感の中で、被害者は力を奪われ、事態を
変化させようと自分で考えたり、抵抗したりすることができなくなります。
被害者には、加害者に従わないという選択は許されてはいないのです。
その結果、虐待を逃れるためには屈服するしかないと思ってしまいます。
他者の要求を断る力を奪われ、無力感、無気力を学習させられて
しまうのです。
3)麻痺
虐待されることに慣れると、被害者は状況に無頓着になります。
でもそれは、その状況に適応しているというより、意識が麻痺して
しまったと表現した方がいいようです。
被害者は、無意識のうちに感覚や感情を意識から分離しているため、
今起きている出来事が他人事のように思えます。
感情的な苦しみに気づかないようにしたり、自分の感情を凍結保存し、
感じないようにしているのです。
被害者は、生きていくためには、このように麻痺せざるを得ないのです。
4.人間性の破壊
加害者による暴力や脅しは、被害者の人間性をつぶし、その人が
本来持っているやさしさや、健康な能力を発揮できなくさせます。
人が人らしく振る舞うことを困難にさせるのです。
そして、被害者は、加害者のもとで支配され、別の被害者への加害行為を
行ってしまうようにもなります。
そこが暴力の、恐ろしく、そして深刻な犯罪性なのです。
次回は、虐待からの脱出とその後のつらさについてまとめます。
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