フランス菓子 Maison Wenikoの四季

2011年1月 エピファニー

「ボンナンネ(新年おめでとう)」と口々に交わして祝う大晦日が過ぎると、フランスの元日は寝正月を決め込む人が多いようです。昨夜シャンペンを飲みすぎた人や、ダンスに興じすぎた人や、たった1日の休日を大事にして(?)怠ける人や…。クリスマス前からスキーや冬のバカンスに行ってしまう優雅な人もいますが、たいていの会社は2日からいつものように仕事が始まるので、日本のようにゆっくりしたお正月休みは味わえません。でも、1月6日にはエピファニー(主顕節)のお祝いがあります。といっても、この日は会社も学校も、お休みではありませんが、家族そろった晩餐のデザートにガレット・デ・ロワというお菓子をいただく習慣があります。熱心な信者(カトリックの)でなくても、このころは町中のパティスリー(お菓子屋さん)、ブーランジェリー(パン屋さん)のウィンドーには、このお菓子が盛大に並ぶので、「あら、王様の日が来たわ」と誰でも気がつくのです。エピファニーの日は、王様の日ともいわれて、キリスト生誕の日に東方から来た3人の王様のための祝日なのです。ですから、この日にちなんでいただくお菓子をガレット・デ・ロワ(王様のガレット)と呼んでいるわけでしょう。このお菓子には面白い工夫があって、中に「フェーブ」といわれる小さな陶器の人形が1つひそんでいるのです。この日だけは、晩餐のテーブルに小さい子供たちも揃っています。ガレット・デ・ロワを食べるのを一番楽しみにしているのは子供たちなのですから。デザートにこのお菓子が出ると、人数分だけ切り分けて、それぞれお皿にのせて分けた時、フェーブが入っていた人が歓声をあげます。そして子供たちの中から1人だけ選んで、フェーブをプレゼントします(たいてい一番幼い子)。その子は、金の紙で作った王冠をかぶせてもらって王様に選ばれたわけです。子供たちの笑い声と、にぎやかな騒ぎのうちに、王様の祝日の晩餐は楽しく過ぎていきます。

2011年1月第1週

わんだふるはうす、メゾン・ベニコに行く

「明けましておめでとうございます!(^O^)/」「ワンダフルハウスさん、明けましておめでとうございます」
フランス菓子 Maison Wenikoは2011年は1月4日(火)から新年の営業を開始。5日(水)は定休日で、6日からガレット・デ・ロワの販売を開始し、月末まで販売するそうです。ガレット・デ・ロワは予約が必須。なお、1月13日(木)の週から水曜日と木曜日が定休日に変更になりました。
「本年もどうぞよろしくお願いいたします」「おおっ!?これは!?(^O^)「クリスマスにベロが来日して描いてくれました」
紅子さんの経歴をアルザス在住のアーティストWeroさんがイラスト仕立の作品にしてくださいました。「紅子さんは子供の頃、お母さんのヨーコさんのお菓子作りを手伝っているうちに、将来はパティシエールになりたいと思いました。ルセットはセルジュ・フリボーさんの本を使っていたそうです。ヨーコさんは1968年のルコント六本木店開店直後からルコントさんのお菓子を食べていて、1970年代にはパリのパティスリー、ショコラトリーを制覇していたハイセンスな感覚の持ち主。現在ではヨーロッパやアメリカだけでなく、アフリカ、中米、南米まで世界中のお菓子を食べ歩いている人です」
「紅子さんはパリのギャラリー・ラファイエットで買ったクリスティーヌ・フェルベールさんのコンフィチュールを食べて感激し、将来はメゾン・フェルベールで働きたいと思いました。ル・コルドン・ブルー代官山校を卒業後は西麻布『ル・スフレ』と麹町『パティシエ・シマ』で修業しました」
「紅子さんはアルザスのニーデルモルシュヴィル村へ…」
「念願かなってメゾン・フェルベールで修業することができたのです」
「帰国後は、島田進さんの紹介でジョエル・ブリュアンさんのレストラン『cuisine francaise JJ』でシェフ・パティシエールとして働き、2010年12月1日メゾン・ベニコをオープンしました
「おめでとう!頑張って!」とベロ(Wero)さん。
「おおっ!?(^O^)
ガレット・デ・ロワ
王冠とフェーヴ付き 18cm 2100円
(発売当初は3150円でしたが1月3週目に2100円に値下げされました)
1月初旬〜1月末まで販売
「メゾン・ベニコのガレット・デ・ロワです!\(^○^)/」
「フェーヴはクグロフですね」
「焼いもペースト!?(゚O゚)\」「クレーム・ダマンドにサツマイモのペースト(鉾田産)をブレンドしています」
「ワンダフルハウスさんのガレット・デ・ロワは、もう少しで焼き上がります」「おう、焼けてる焼けてる(^O^)…客の来店時間に合わせて焼き上げるとは、さすがにレストラン出身のパティシエールですね」
焼き上がった!
艶出しを塗って完成。
メゾン・ベニコのガレット・デ・ロワは、島田進シェフ(パティシエ・シマ オーナーシェフ クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ会長)から学んだスタイルに、茨城県産の素材を使用するなど、自店の個性をプラスして作られました。
ガレット・デ・ロワとは、1月6日のエピファニーの日(公現祭)に食べるアーモンドクリームが詰まったパイ菓子。
Galette des rois
ガレット・デ・ロワ
2100円
この日は、キリストの誕生を聞きつけた東方の三博士が、はるばるベツレヘムの馬小屋を訪問してキリストに謁見した日。
Galette des rois au chocolat
ガレット・デ・ロワ・オ・ショコラ
4200円
(参考価格 要予約)
フランスでは1月6日に限らず、1月の第1日曜日に家族や友人が集まって、このお菓子を囲んでエピファニーをお祝いします。
お楽しみは中に隠れているたった1つの幸運のフェーブ。直訳するとソラマメという意味です。これが当たった人は、その日は王様あるいは女王様となって皆から祝福されます。
今回、紅子シェフが表面に入れたクープ(模様)は「月桂樹の葉」と「シュロの葉(麦の穂)」。
このクープは「太陽」。どれも自然をモチーフにしたもので、大地の恵みや自然を表現する事でキリストの誕生を祝うと同時に、自然への感謝、そして宗教を通した幸せへの祈りも示しているのです。
「それでは、ガレット・デ・ロワをカットしていただきましょう!(^O^)/」
「このタルト・アルザシエンヌは新作ですね(^-^)\」
「おおっ!?このショコラのプティ・シューは!?(゚O゚)
「それは遊びで作ってみました」「こ…これが遊び!?(゚O゚)
ガレット・デ・ロワがカットされました。
クレーム・ダマンドに焼き芋ペーストをブレンドしたガレット・デ・ロワの登場です。
「うおーっ!これは凄い!(゚O゚:)
茨城県鉾田市産の「紅あづま」というサツマイモを使用した産地ならではのガレット・デ・ロワです。
鉾田産「紅あずま」を一度焼いて、焼き芋にしたものをペースト状にしてあるので、香りがとてもいいです 〜(^Q^)
アーモンドクリームにカスタードクリームを混ぜたものをクレーム・フランジパーヌと言うのですが、その応用版「クレーム・ダマンド・やきいも」といったところでしょうか。
アーモンドと焼き芋とバターの風味が口いっぱいに広がります)^Q^(
着色料・香料・保存料は使用しておらず自然な美味しさです。
「このショコラのガレット・デ・ロワですが、クーベルチュール・チョコレートは何を使ってるのですか?(^O^)/」
「ヴァローナのP125です」
ガレット・デ・ロワ・オ・ショコラ
P125 クール・ド・グアナラ&新宿花園 ぬれ甘なつと
製作 島田進(パティシエ・シマ)
特注品
P125といえば、一昨年9月、島田進シェフに作っていただいたガレット・デ・ロワを思い出しました。
あの時、島田シェフはフランス・ヴァローナ社のP125を使ったクレーム・ダマンド・ショコラに、東京新宿花園万頭の「ぬれ甘なつと」を合わせてきました。このガレットは紅子シェフも試食しています。
Galette des Rois au Chocolat Individuel
ガレット・デ・ロワ・オ・ショコラ・アンディヴィデュエル
一人用ガレット・デ・ロワ・ショコラ
製作 島田進(パティシエ・シマ)
特注品
ここで今までに島田進シェフに作ってもらった4種類のショコラのガレット・デ・ロワを振り返ってみましょう。1985年秋にパリの「La Maison du Chocolat」での短期研修によって、ロベール・ランクス氏の薫陶を受けた島田進シェフが作ったショコラのガレット・デ・ロワは、ラ・メゾン・デュ・ショコラのガレット・デ・ロワと同じく、ガナッシュを挟んだものでした。
Galette des Rois au Chocolat Noir
“SHUNSUKE SAEGUSA”
パレ・ド・オール 三枝俊介シェフに贈った
ガレット・デ・ロワ・ショコラ・ノワール
製作 島田進(パティシエ・シマ)
特注品
これより下の3種類がパイ生地にカカオパウダーを入れたフィユタージュ・オ・ショコラ…つまり黒いパイ生地でした。島田進シェフがパレ・ド・オールの三枝俊介シェフに贈ったガレット・デ・ロワ・ショコラ・ノワールも紅子シェフは試食済み。ワンダフルハウスがcuisine francaise JJで三枝俊介シェフにお会いした時に「ここのパティシエールは天才ですよ」と紹介したのが紅子シェフなのです。
ガレット・デ・ロワ・オ・ショコラ・ノワール・ア・ラ・パレ・オール
製作 島田進(パティシエ・シマ)
特注品
これはベルナッションのパレ・ドールをイメージしたガレット・デ・ロワ。ブラック・チョコレートのガナッシュをサンドしてあります。
ガレット・デ・ロワ・オ・ショコラ・ラクテ・ア・ラ・パレ・アルジャン
製作 島田進(パティシエ・シマ)
特注品
こちらはミルクチョコレートのガナッシュをサンドしたガレット・デ・ロワ。以上、全てのガレット・デ・ロワを試食した紅子シェフが最初に作ったショコラのガレット・デ・ロワは…
ガナッシュをはさまないクレーム・ダマンド・ショコラタイプでした。
「ショコラと何かを合わせる時はショコラの味が弱くならないようにP125を使うようにしています」
Chou a la creme au chocolat
シュー・ア・ラ・クレーム・オ・ショコラ
3個 420円
「例えばこのシュー・ア・ラ・クレーム・オ・ショコラにもP125を使っています」
「これがフランス焼菓子職人が焼いたシュー生地なのか!(゚O゚)\」皮をしっかり焼き込んであるから時間が経ってもサクサクですよ」
「見るからに濃厚で艶やかなクリームの色合い…確かにこれは普通のクレーム・パティシエール・ショコラではありません!(゚O゚)\」
「なんという力強いショコラの味…なんという滑らかな口溶け…そしてこれはなんというサクサク感なのでしょう!(^Q^)」
「P125」のPは「Puissance ピュイサンス」(英語だとパワーという意味)のP。P125はカカオの固形分のパワー(力価)が125%のショコラなのです。
P125のおかげで、これまで重くなりがちだったクレーム・ダマンド・ショコラも軽くなり、同時にカカオの香り、口溶けの滑らかさ、そして濃厚で鮮やかな仕上がりの色をはっきりと感じられるようになりました。

Tarte alsasienne
タルト・アルザシエンヌ
367円
ル・スフレの永井春男シェフからはスフレだけでなく、焼菓子も学んだそうです。オーボンヴュータン開店時、河田勝彦シェフの片腕を務めた永井春男シェフ直伝の焼菓子には、やはり河田勝彦シェフの姿もチラチラ見え隠れしています
リンゴのアルザス風タルト「タルト・アルザシエンヌ」。紅子シェフのは河田シェフのと同じく、アパレイユ(タルト生地)にフレッシュリンゴ、その上から白ワイン風味のアーモンドソースをかけて焼いたものです。
Tarte alsasienne
タルト・アルザシエンヌ
2100円
オーボンヴュータン
「これがオーボンヴュータンのタルト・アルザシエンヌですか。リンゴが餃子のように並べられていますね(゚-゚)\」
河田勝彦シェフ「このタルト・ラルザシエンヌは見栄えは悪いですが、どのタルトにもない味を出しています」
河田勝彦シェフ「アルザス地方は豊富なフルーツ産地であって、1970年代に記録されていただけでも33種のリンゴ、87種の梨、36種の桃、10種のアプリコット、29種のプラム、12種のスリーズ等々があります。フルーツの盛んな地方だけにタルトが非常に多く、総称して『タルト・ラルザシエンヌ Tarte l'Alsacienne』と呼ばれています。このタルトはセークル型にパートをひき、生のフルーツを入れて、卵・生クリーム・砂糖を入れて焼き上げています」
続く

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