肝臓癌

肝臓癌

1.肝臓癌の現状について

 肝臓癌は、ほかの臓器にできた癌が転移してくるケースもありますが、
そのほとんどは肝硬変がもとになって発生する、肝細胞癌です。
つまり、慢性肝炎から肝硬変に進行してくる過程で発生します。
 
日本人の慢性肝炎は、そのほとんどがウイルス性ですから、
肝臓癌から肝炎ウイルスに感染することが、原因になっているということです。
日本人の肝臓癌は、C型肝炎が原因のものが約80%、残りの大部分はB型肝炎が原因です。

理由ははっきりしませんが、肝硬変になると肝臓癌が発生しやすくなります。
 
C型肝炎の場合は、肝硬変になった人は、
年率7%の割合で肝臓癌になることが統計上わかっています。
100人の患者さんがいるとすると、
年間約7人の患者さんが肝臓癌になるということになります。
肝硬変の人にとって、肝臓癌への移行は、とても大きな問題です。
 
最近、肝臓癌による死亡率は増加する傾向にあります。
これは、肝硬変の治療が進歩したことが挙げられます。
かつては、肝硬変の合併症である肝不全や食道静脈瘤で死亡する人が多かったのですが、
治療法の進歩により、そうした肝臓癌になる以前の死亡例が少なくなってきました。
その分、肝臓癌まで進行する人が増え、その結果、
肝臓癌による死亡者数が増加したと考えられます。

2.肝臓癌の早期発見について

肝臓癌を早期発見するためには、血液検査(腫瘍マーカー)、
画像検査、腫瘍生検などの検査が行われます。

1)血液検査
血液中の腫瘍マーカーを調べる検査です。
ただし、こうした腫瘍マーカーは、癌がでなくても増加することがあるので、
これだけでは肝臓癌と診断するわけにはいきません。
これだけで経過を見るのは危険です。

2)画像診断
最近、特に進歩が著しいのが、画像診断です。
以前はかなり大きくならないと癌は診断出来ませんでしたが、
最近は高度の画像診断機器で直径1cm以下の癌も発見できるようになっています。
 
ただし、それぞれの検査には特徴があり、どの検査でもすべての癌が見つかるわけではありません。
いくつかの検査を組み合わせて行うことで、より正確な診断が可能となります。

超音波検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、
血管造影検査などがあります。

3)腫瘍生検
 
小さな癌は、肝硬変の結節との区別が難しいことがあります。
このような場合には、確定診断を行うために腫瘍生検を行います。
腫瘍部分に体外から針を刺し、組織を採取して、癌細胞があるかどうかを詳しく調べます。
腫瘍生検は、腫瘍部分に針を刺すときは、正確を期すために超音波画像で確認しながら行います。

3.肝臓癌治療について

肝臓癌の治療では、肝臓癌の進行度が大切です。
癌の進行度によって治療法が異なるからです。

進行度は、癌の大き、癌の数、転移の有無などが関係します。
また、肝臓癌は、血行性に転移することが多いので、
癌の組織が血管内に進入しているかどうかも調らべる必要があります。
さらに、肝臓の予備能力も治療法を決定するうえで大切な要素です。

肝臓癌の治療は、癌以外の肝臓にも負担をかけることになりますが、
予備能力が低い場合には、負担の少ない治療法を選ばなければなりません。
そこで、あらかじめ肝臓の予備能力を調べておいてから、治療法を決定することになります。

つまり、最も適切な治療法の選択には、
癌の進行度と肝臓の予備能という二つの要素を考慮する必要があります。

1)エタノール注入(PEIT)
 エタノール(エチルアルコール)を癌に注入し、それによって癌病巣を凝固させる治療法です。
超音波画像ガイド下に注射針を癌病巣に刺し、エタノールを注入します。
癌組織にエタノールが行き渡ると、それで癌は壊死し、成長は止まります。

この方法は、肝臓への負担が少ないので、同じ治療法を繰り返すことができます。
ただし,この治療法ができるのは、癌が小さく、たくさんできてない場合です。
また、腹水がある患者さんや、血液が固まりにくい患者さんは、
肝臓からの出血が止まらなくなることがあるので行いません。

2)癌塞栓療法(TAE)
 
癌に酸素や栄養を送る肝動脈にスポンジ状の物質を詰めて血流を止め、癌細胞を壊死させる方法です。

また、この血管から油性造影剤と抗癌剤の混合物を送り込むことで、
できるだけ癌の部分だけを攻撃するように行いますが、
どうしても癌以外の部分にもかなりの負担がかかります。
そのため、肝臓の予備能力の悪い患者さんにはこの治療法は行えません。

3)肝臓の部分切除
 
開腹して、癌病巣を切除する手術です。
小さな癌が一個しかない場合、あるいは癌が大きかったり複数であったりしても、
癌が肝臓の一部に限られている場合に行います。

早期の癌に対しては、肝臓の切除とエタノール注入法は、
同じ程度の治療効果が期待できます。
また、予備能力がよければ、肝臓の半分を以上を切除することも可能です。

4)持続動注化学療法

血管内に贈入したカテーテル(細い管)を、肝臓の動脈に留置して、
そこから抗癌剤を持続的に繰り返し注入する治療法です。

多数の病巣が、肝臓全体に広がっているような進行した癌に対して行います。
治療効果が著しく向上しており、まれにこの方法で癌が完全に消えることもあります。
肝臓予備能力のある患者さんに限られますが、最近はよく行われています。

現在はこうした治療法が発達し、肝臓癌になっても治療することができます。
ただし、効果を上げるためにはやはり定期に検査を受けて、早期発見することが大切になります。

検査の進歩により、ごく小さな癌も発見できるようになりました。
早期に発見し、適切な治療を行うことで、癌の進行を防ぐことが重要です。


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