千葉県木更津市馬来田の万葉歌碑
千葉県木更津市(きさらずし)の馬来田(うまくた)にある万葉歌碑を訪ねてきました(2012年11月)。
万葉集に歌われた馬来田(うまぐた)は、現在の木更津市や袖ヶ浦市を流れる小櫃川(おびつがわ)流域の広い地域のことだったようです(古くは、マクタ、マグタとも)。なお、現在、町村合併により行政区域としての馬来田は消えていますが、駅名、地区名等として残っています。
さて、JR久留里線の馬来田駅の近くに、万葉碑(いしぶみ)の里コースと呼ばれる散策路があり、そこに7基の万葉歌碑が置かれています。この散策路は、小櫃川の支流である武田川河畔に作られています。路にそってコスモスが植えられており、コスモス・ロードと呼ばれているようです。私が訪れたのは11月初旬で、コスモスは終わりかけていました。
各万葉歌碑の位置は下の地図のとおりです。馬来田駅から順に番号が振られています。できるだけ正確な位置を表示するようにしましたが、Googleマップに路が表示されていない部分もあり、ちょっとあいまいなところもあります。
以下に、各歌碑を紹介します。なお、ここに書いた歌碑情報(建立、揮毫、碑石)については、宇麻具多(うまぐた)の山の学校に掲載されているデータを参照させて頂きました。詳細を知りたい方は、そちらのページを御覧ください。
万葉歌碑 1
この散策路は馬来田駅前がスタートです。地図のマーク1です。
馬来田(うまぐた)の 嶺(ね)ろに隠(かく)り居(ゐ) かくだにも 国の遠かば 汝(な)が目欲(ほ)りせむ (巻14-3383) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 未詳
(大意) 馬来田(うまぐた)の嶺に隠れるほどに我が郷は遠いので、あなたに会いたくなるのだろう。
(建立) 平成9年
(揮毫) 千代倉桜舟
(碑石) 茨城県真壁産 御影石
馬来田駅前の様子は下の写真のとおりです。
万葉歌碑 2
この歌は、望陀郡(まぐたのこほり)、つまり馬来田の出身の防人の作です。歌碑は、歌に合わせて寝転んでいるのだそうです。周りの石は子供に見立ててあると。地図のマーク2のところにあります。
旅衣(たびころも) 八重(やへ)着重(きかさ)ねて 寝(い)のれども なほ肌(はだ)寒し 妹(いも)にしあらねば (巻20-4351) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 望陀郡(まぐたのこほり)の上丁(かみつよぼろ)玉造部国忍(たまつくりべのくにおし)
(大意) 旅衣を何枚も重ねて寝たけれどもやはり肌寒い。衣は妻ではないので。
(建立) 平成11年
(揮毫) 辻元大雲
(碑石) 茨城県筑波産 筑波石
下の写真を見ると、石碑が寝転んでいる様子が分かります。ここは、「小さな路の駅」という店の前です。
万葉歌碑 3
この歌碑は武田川沿い、地図のマーク3のところにあります。写真の歌碑の後が武田川です。
馬来田(うまぐた)の 嶺(ね)ろの小竹(ささ)葉の 露霜(つゆしも)の 濡(ぬ)れてわきなば 汝(な)は恋ふばそも (巻14-3382) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 未詳
(大意) 馬来田(うまぐた)の嶺の小竹葉についた露霜に濡れながら来たのは、あなたが恋しいからなのだ。
(建立) 平成8年
(揮毫) 伯ケ部総龍
(碑石) 茨城県稲田産 御影石
この歌碑のロケーションは、下の写真からわかると思います。右はコスモス、左は桜並木になっています。春も絶好の花見スポットです。
万葉歌碑 4
平成24年10月に建立された、この散策路で最も新しい歌碑です。場所は、地図のマーク4のところです。
東(ひむがし)の 野に炎(かぎろひ)の 立つ見えて かへり見すれば 月傾(かたぶ)きぬ (巻1-48) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 柿本人麻呂
(大意) 東の野に曙が輝くのが見えている。振り返ってみると月が西の空を渡っている。
(建立) 平成24年10月
(揮毫) 飯高和子
(碑石) 岡山県産 竜王石
この歌碑は、川から少し(100m弱)離れたところに置かれています。下の写真から、歌碑の前が少し広くなっていることが分かりますが、地元の新聞 によると、私が写真を撮ったひと月前に除幕式がとり行われたようですので、おそらく、その時の名残かと思われます。
万葉歌碑 5
歌碑4から少し歩き、橋を渡ると歌碑5があります。地図のマーク5の辺りです。
春の野に 霞たなびき うら悲し この夕かげに 鶯鳴くも (巻19-4290) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 大伴家持
(大意) 春の野に霞がたなびくのはうら悲しいものだなあ。夕暮れの光のかげで鶯が鳴いている。
(建立) 平成14年
(揮毫) 種谷扇舟
(碑石) 神奈川県真鶴産 本小松石
下の写真は、橋から写したものです。ススキとセイタカアワダチソウを背景に建っています。
万葉歌碑 6
武田川宿地区にあります。
春の野に すみれ摘(つ)みにと 来(こ)しわれそ 野をなつかしみ 一夜(ひとよ)寝にける (巻8-1424) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 山部赤人
(大意) 春の野にすみれを摘もうと来た私は、野に心をひかれたので一夜寝てしまった。
(建立) 平成21年10月
(揮毫) 高木厚人
(碑石) 静岡県伊豆の国市産 若草石
この歌碑は、野原と畑を縫って進む散策路が集落にぶつかる辺りにあります。地図のマーク6のところです。
万葉歌碑 7
妙泉寺の参道にあります。地図のマーク7のところです。
銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに 勝(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも (巻5-803) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(作者) 山上憶良
(大意) 銀も金も玉もなんの役に立とう。優れた宝も、子供に及ぶことなどあろうか。
(建立) 平成18年10月
(揮毫) 浅見錦龍
(碑石) 群馬県鬼石産 三波石
妙泉寺の山門脇の道路に置かれています。下の写真の中央から少し左にずれたところに歌碑がありますがわかりますか。
所在地と行き方
住所は、千葉県木更津市真里谷(まりやつ)です。電車を使う場合は、JR久留里線馬来田駅が最寄り駅です。車の場合は、東京湾アクアライン連絡道の先、木更津東ICを降りて北東へ1kmあまりのところです。馬来田駅の近くの富来田(ふくた)公民館の駐車場を使うと大変便利です。各万葉歌碑の正確な位置については、このページの先頭近くにある地図を拡大して参照してください。