茨城県下妻市大宝八幡宮の万葉歌碑
茨城県の下妻市の大宝八幡宮に置かれている万葉歌碑を訪ねてきました(2019/4)。境内には、5基の万葉歌碑があります。
その一
拝殿に向かう参道に2基の歌碑があります。下の写真はその一つで、筑波山に登る歌一首と反歌が彫られています。
歌
草枕(くさまくら) 旅の憂(うれ)へを 慰(なぐさ)もる こともありやと 筑波嶺(つくはね)に 登りて見れば 尾花(おばな)散る 師付(しづく)の田居(たゐ)に 雁(かり)がねも 寒く来(き)鳴きぬ 新治(にひばり)の 鳥羽(とば)の淡海(あふみ)も 秋風に 白波立ちぬ 筑波嶺(つくはね)の よけくを見れば 長き日(け)に 思ひ積み来(こ)し 憂(うれ)へはやみぬ (巻9-1757) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 草枕の旅の憂いを慰めてくれるかと、筑波嶺に登りって見ると、ススキの穂が散る師付の田居を雁が来て寒々と鳴いていた。新治の鳥羽の湖も、秋風に白波が立っていた。筑波嶺のよい景色を見ていたら、長い日々思い悩み重ねてきた憂いが止んでいた。
(作者) 高橋連虫麻呂
反歌
筑波嶺(つくばね)の 裾廻(すそみ)の田井(たゐ)に 秋田刈る 妹(いも)がり遣(や)らむ 黄葉(もみち)手折(たを)らな (巻9-1758) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 筑波山の裾の周りの田に秋の稲を刈っている乙女のもとにやる黄葉を手折ろう。
(作者) 高橋連虫麻呂
その二
上の歌碑と並んでもう1基の歌碑があります。下の写真です。
歌
筑波嶺(つくはね)の さ百合(ゆる)の花の 夜床(ゆとこ)にも 愛(かな)しけ妹(いも)そ 昼も愛(かな)しけ (巻20-4369) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 筑波山の百合の花のように、夜床でもいとしい妻は昼もいとしい。
(作者) 大舎人部千文(おほとねりべのちふみ)。
その三
境内社の若宮八幡宮の前に3基の歌碑が置かれています。下は一番手前の碑です。
歌
梅の花 今咲ける如(ごと) 散り過ぎず わが家(へ)の園(その)に ありこせぬかも (巻5-816) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 梅の花が今咲いているように、散り過ぎることなくわが家の園に咲き続けてほしいものだ。
(作者) 少弐(せうに)小野太夫(をののだいぶ)
その四
上の歌碑の少し奥に狛犬があり、その台座に歌が彫られています。下の写真の狛犬の台座には、原文で彫られています。
歌
筑波嶺(つくばね)の 新桑繭(にひくはまゆ)の 衣(きぬ)はあれど 君(きみ)が御衣(みけし)し あやに着(き)欲(ほ)しも (巻14-3350) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 筑波山の新しい桑で育てた繭の糸で織った衣もよいのですが、貴方のお着物こそとても着たく思います。
(作者) 未詳
その五
上の歌碑に対置した狛犬の台座には、同じ歌が書き下し文で彫られています。
歌
筑波嶺(つくばね)の 新桑繭(にひくはまゆ)の 衣(きぬ)はあれど 君(きみ)が御衣(みけし)し あやに着(き)欲(ほ)しも (巻14-3350) ← 歌をクリックすると注釈へジャンプします。
(大意) 筑波山の新しい桑で育てた繭の糸で織った衣もよいのですが、貴方のお着物こそとても着たく思います。
(作者) 未詳
所在地
茨城県下妻市の大宝八幡宮の境内
下の地図のマークのところです。