電池管とICのコラボレーション
書き掛けです。これからゆっくりと追記をして参ります。
これをトランプケース大に収めることが出来るかどうか・・・LMF501TのAGCは30dBとれるが12AD6のAGCは如何ほどか・・・利得配分は12AD6で20dB、LMF501Tで70dB、LM386Nで40dB程度・・・最後は電池と電池寿命との闘い・・・とラジオ少年の思いが膨らむ!。
真空管を回顧したモノ作りではなく、デバイスの特徴を生かした生活の道具作りに視点を置く・・・50を過ぎたラジオ少年の一風変わったラジオ製作

1球2ICスーパーラジオの実験(Aug 3, 2009〜)

長野ハムセンターのWebサイトを覗いていたら12Vでも動作する電池管が紹介されていた。懐かしい12AD6(5グリッド7極管)は6BE6/12BE6相当の機能でスーパーラジオの周波数変換管だ。その他に5級スーパーの電池管バージョンが数種類リストされていた。この辺りは真空管展示室ポータブル・ラジオのWebサイトが詳しい。 実はこの12AD6を始めとする電池管には思い出がある。昭和43年頃、同郷の同級生D君から、廃車になった初代トヨペットクラウンから外したカーラジオをプレゼントされた事があった。彼の家には当時珍しい乗用車が昭和30年代から有った。当時は未だ5球スーパーが据置きラジオとして存在していたが、カーラジオは既にトランジスタの時代だった。だからこれも同様だろうと中を覗くと予想外のMT管が満載。トランジスタ式でない事のショックは直ぐ収まったが、次は真空管なのに動作電圧が12Vと言うショック。12BE6等を使い、B電源はバイブレータ式だろうと想像したが、見たことも無い真空管の寿司詰め状態には絶句だった。そして、良くもこの大きさに詰め込んだものだと感心したが、さらに驚いたことがあった。何とスピーカーに内臓されたAFアンプにはTEN神戸工業のパワートランジスタ2S41が使われていたのだ(久しくSONY/2SC41と誤認していた)。これらは既に捨てられてしまったと思っていたのだが実家の物置で見付け40年振りの再会となった。そんなことがあり、冒頭に記した12AD6は大変懐かしく忘れられない真空管なのだ。 それでその12AD6を周波数変換に使い、後段は半導体に依存したラジオが作れないか考えた。実は、以前LMF501TのAMラジオを作った時から、IFアンプ段以降に使ったら面白いだろうなぁと思っていた。12V程度で使える周波数変換管があれば実現性があると考えていた処、長野ハムセンターのWebサイトで偶然12AD6を見つけ、このプロジェクトの発起となった。


 ☆AFアンプがLM380Nの場合(ST-15無し)
  @カソードリンクコイル方式
  Aカソードタップ方式

 ☆AFアンプがLM386Nの場合(ST-15無し)
  @カソードリンクコイル方式
  Aカソードタップ方式


LMF-501Tの出力がどの程度のレベルかを確認する。即ちこのレベルが12DA6のG3をAGC制御できるかを確認する。
オシロスコープでローカル放送局のJOFGを受信し、LMF-501Tの出力をオシロスコープで見た。
負荷は10KΩVRが接続され、また100KΩ経由で入力側のアンテナコイルコールド側へ接続されLMF-501TへAGCを掛けている。
写真は測定した様子。AFレベルにして約0.3V(P-P)程度が得られている。
これをGeダイオードで倍電圧検波すれば相応のAGC電圧が得られそうだ。
ちなみにプログラムは甲子園高校野球で校歌が歌われていた。
なおLMF-501Tの出力ピンはDC1.1V、入力ピンはDC0.756Vが掛かっている。

秋月電子の通販でムラタのセラミックフィルタSFU455Aを購入。左は2個カスケードにして、SG(50Ω)をスイープしスペアナ(50Ω)で表示させたもの。入出力Zは3KΩなのでオーバーロードであるが凡その特性は確認できる。
このフィルタは1セットが2個で\100である。通信機用クリスタルフィルタにはとても及ばない特性だが。数個並べれば中波ラジオとしては十分と思われる。またトランジスタ用IFTではこの特性は望めない。別項にSFU455Aの特性をまとめた。下はツーショットと6個カスケード時の特性。



12AD6の周波数変換部の実験。
VCはトラッキングレス2連(約70pF+150pF)、局発コイルとアンテナコイルはTrラジオ用の発振用コイル、IFTはTrラジオ用を使用。
発振は配線により位相が反転すると発振しないので、直ぐ配線変えが出来るようにする。この他にG1抵抗47KΩ、G1コンデンサ300PFを使用、電源は12VのSW電源。
これで電源を投入するが何と12AD6のヒーターが点かない。テスターで12AD6の3番Pin-4番Pin間をあたると完璧に断だった。
止む無く実験は中止となった。12AD6は長野ハムセンターへ緊急発注した。
写真は12AD6周辺のトップビュー。この大きさでアンテナコイルも含め周波数変換が出来てしまうと、電池寿命は別にしてトランプケースに収まる勢いだ。
実は12BE6で何とかならないかとJUNK箱を探し回ったが無かった。しかし6BE6は多数在庫・・・でもこれらは目的外なので棚上げ。

長野ハムセンターから12AD6が届く。早々に取替え通電する。455KHzのIF受信はIC-756で対応。局発が心配でオシロ・プローブを12AD6のG1に当てていたが、ヒーターが灯った直後勢い良く発振した(約3.5Vp-p)。配線方向はOKだった。VCをMax/Minにして発振レベルがほぼ一定である事も確認。非常に良好だ。既にIC-756がザワザワ。ワニ口リードで2m程の線材をアンテナリンクコイルへつなぐ。VCを回しJOFGを捉え、最大レベルになるようにアンテナコイルのコアを回す。トラッキング確認は未だだが多くの放送局が確認できた。JOFGはS9+10dB振った。昔懐かしい5Grid 7極管の周波数変換を組むのは40年振り。中学3年以来だ。その後は局発管と混合管を別にする作りをしてきたから・・・。
真空管なのに12V電源ってのはおかしな感覚を誘う。プレートの5番Pinやスクリーンの6番Pinは、従来なら感電の対象だったがその必要が無いからだ。この感じだとLMF501Tの455KHz受信機との組み合わせも先が明るい。局発回路をカソードタップのハートレーに変更してみたが、コイルのタップ位置がかなり低い所にあるためか、現状では発振継続が難しい状態だった。左は実験風景で青がANT、赤がIF。下は届いた新品箱入りのRCA/12AD6。



12AD6の周波数変換部にLMF501Tラジオをつなぐ実験。
昨年製作したLMF501TラジオのアンテナコイルとVCの代わりに455KHz/IFTを仮付けする。IFTのリンクコイルにセラミックフィルタSFU455Aを1個取り付ける。
一方12AD6周波数変換器のIF出力リンクコイルからセラミックフィルタ間をワニ口リードのツイストケーブルでつなぐ。周波数変換部とLMF501Tラジオ間のグランドを結び電位を揃える。
VCを回すとローカル局が飛び込んでくる。JOFGに周波数を合わせ、音量が最大になるように2つのIFTを調整する。
写真はその状況でワニ口リード(青)をアンテナにしてローカル局JOFGを受信している。僅か30cm程度のワニ口リード線で十分な音量で受信が可能。ちなみにワニ口リード無でも音量的には万速出来る。
セラミックフィルタは1段であるが実用上問題ない分離を示している。
この状態は12AD6はフルゲインで動作しているはずで、AGCはLMF501T側のみしか掛かっていない。それでも30cmのワニ口リードを取り付けたときと外した時の音量変化は聴感だが3〜6dB程度である。
この後、LMF501TのAF出力を負検波・平滑し、12AD6のG1へAGC制御を掛けてみたがAGC電圧がやや不足の模様で、先にLMF501T側のAGCが効いて来る。このため検波方式を半波倍電圧整流に変更し、時定数回路をCRの並列回路とした。これにより僅かだが改善方向を見る事が出来た。

AGCの考察と思い・・・試みにアマチュア無線用のアンテナ(1.9MHz同調のWindom/40m長)をアンテナリンクコイルにつなぐ。もう完璧に歪んで間欠的にしか音が出て来ない。明らかに入力のオーバーレベル(ロード)である。アンテナ入力にATTを入れ減衰させると約60dBで普通に聞ける状態になる。このレベルは数mのワイヤーに比べたら遥かに高いレベルで、少なくとも60dB以上の差が有る。ここがAMポータブルラジオの難しい所で、強烈な電界差の中でも一定の受信感度やIM(歪み)特性を維持しなければならない。だからカーラジオは良く出来ていると思う。
現状は利得は十分あるが12AD6に十分なAGCがかかっていない状況と思われる。それでアッテネータスルー時でも「聴ける」状態にするには何Vの制御電圧がいるか測定すると-3.5〜-4V以下が必要である事がわかった。これはAFアンプの利得を上げ、LM386Nの出力からAGCを返して判明した。現状では一桁違うので無理からぬ話である。
と言う事で何らかの方法で-3.5V〜-4V以下のAGC電圧を得る方法を考える。実はこれは当初予想していた状況である。マイナス電源を用意してFETゲートを増幅制御するか・・・或いはLMF501T出力をステップアップして昇圧するか・・・過去の経験から色々なアイデアが頭に浮かんでくる。しかしアンテナ環境やアース環境が限られるポータブルラジオの場合はそこまで神経質になる必要は無いのかもしれない・・・などと考えていると楽しい。
「たかがAMラジオ」だが「されどAMラジオ」と、ラジオ受信機の基本を指南してくれる様な気がしてならない。AGCはこの世界には無くてはならない機能。したがって受信者が聴くプログラムは、放送局が発するそれとは大きく異なったエンベロープを聴いている。音質に関してf特や歪みの議論も大切だが、私的にはこのエンベロープの議論も同様に重要だと思っている。

いよいよ汎用の蛇の目基板に戦場を移す。立体的に仮配線していた部品を分解し、基板上に並べ配線をルートを検討。イメージが出来たところで一機に加工作業に入る。加工と言っても相手はベーク基板なので大した作業ではない。ポイントは10mm角のIFTが巧く収まる基板を探す事。一般的な2.5mmピッチの基板ではIFTのPin位置が合わない。12AD6のソケットは16mm径のシャシパンチで打ち抜く。
左は上面のレイアウト。右より2連VC、アンテナコイル(下)、局発コイル(上)、12AD6、IFTプレート側(下)、IFT出力側(上)。セラミックフィルタは基板の裏面に配置。下は基板配線面。真空管ソケット周りの配線方法は従来と変わらない。455KHz受信機としてIC-756をつなぐと良好にローカル放送が受信できる。さあこれにLMF501TやLM380Nを組み込めば一定の形になるぞ。



基板に収まった事で、実際の受信可能周波数を測定する。即ち局発周波数が「455KHz+目的周波数」を満たしているかどうかを調べる。この際調整要素は局発コイルのコアとトラッキングVCのTC。まず以下の条件で発振周波数を見る。また発振レベルの変動も無い事を確認する。カウンタは10MΩプローブを12AD6のK(カソード)に当てた。
 @TCとコアを最大に入れた場合の発振周波数・・・727KHz-1391KHz
 ATCとコアを最小に抜いた場合の発振周波数・・・1104KHz-2448KHz
さらに・・・
 BTCとコアで放送用周波数にセンターリング・・・973KHz-2080KHz
 と言う事でBが示すように可変範囲にAM放送帯域が綺麗に収まることが分かった。コイル側とVC側でトリミングが可能なため調整に融通性がある。
アンテナコイルも局発コイルと同等品であり、トラッキングレスVCを含めTCとコアによるトリミングで、局発周波数に応じたアンテナコイル同調を実施することになる。
ちなみにコア(L)は最低周波数を、TC(C)は最高周波数で調整を繰り返して行い、総合的なトラッキングずれを吸収する。
写真は周波数カウンタで測定中の様子。ここでは見えないが12AD6のK(2番Pin)に10MΩプローブを当てている。カウンタ表示は1122.7KHzなので、受信周波数=1122.7+455=1577.7KHz。

ラジオの電波は何処から入る・・・ラジオを作りだした小学生時代、アンテナをつながなくても大きな音が出るラジオが良いラジオだと思っていた。携帯ラジオはバーアンテナ形式のアンテナ回路が殆どであるから、アンテナなどが突起しているのは感度が悪い証拠とされていた。それも一理あるが、多くの経験を踏むと「良いラジオ」の定義が大きくゆらいでくる・・・。AGCの無い、或いはAGC効果の少ないストレートラジオを作ったりすると良く分かるが、アンテナは同じでもラジオの置き場所を変えると音量が大きく変わることに気付く。そうした体験をすると一体電波って何処から入って来るのと疑問がわく。ステンレスの流しの上に置いた場合や、GNDラインへ指をタッチしたときに驚くほど音量が上がったりする。AGCの十分に効いたスーパーヘテロダインではここまで顕著ではない。そんなことを考えていると、AMラジオってアバウトそうに見えて相当シビアに思えてくる。電池駆動だとアンテナ回路もラジオ回路も大地から浮いた状態だから、触れたものや近傍の物体や人体との結合全てがアンテナ回路の一部になってしまう可能性がある。AC電源を使ったら、ACラインとラジオ基板との間に静電結合があるだろうから様子がまた変わってくだろう。店に並ぶラジオのケースは全て樹脂で出来ていて、人体が回路に触れられないようになっている。それはまるで感度を抑制しているかの様だ。肝心なのはアンテナコイルを目的周波数に適切な経路で共振させ、どれだけ目的信号のみを歪み無く程よき強度で検波回路に導くか・・・改めて基本が見え出した。それにしてもラジオ作りは色々な事を教えてくれる。
いよいよLMF501Tを実装する。基板が余り広くならない様に真空管回路に沿わせて配置する。
部品は基板上と基板下に配置したものがある。無理して基板上に全てを乗せなくても、元々真空管のソケットを抱えた立体構成なので、CR類は基板の下側に集めてしまっても問題ない。
基板上にはLMF501Tと定電圧源用LEDに抵抗2本と積層セラミックコン2個が追加された。また基板下には抵抗1本と積層セラミックコン1個を追加している。
写真はその様子。既にアンテナにワニ口リード線をつなぎ、出力はPC用のアンプ内臓スピーカーにつなぎ鳴らしている。電源は13.2V/8AHのリチウム水素バッテリを使っている。このバッテリで2昼夜以上の稼動が可能。
ただこのスピーカーアンプはPC用で利得が少なくフルボリューム状態。次段に構える予定のLM386Nへの期待が大いに高まる。
写真でも分かるように、LMF501Tは小型トランジスタ1個分の大きさで、IFアンプと検波回路までを含む機能を持つ。如何にスペースファクタが良いかが見てとれる。もちろんAMラジオ限定での話だが・・・。
さぁ次はLM386NによるAFアンプの組み込みになる。基板穴のピッチが4mmなので2.5mmピッチのIC実装にはサブ基板が必要になりそうだ。

12BE6で鳴るか?・・・ 誰しも興味あるテーマである。実家に帰省した折、JUNK真空管箱からHITACHI製の1本を持ち帰り入替えてみた。まぁダメもとの話だが、これが何と感度は低下するものの十分な音量で鳴るのである。利得は別途測定しなければいけないが、明らかに局発が発振して周波数変換が行われているのである。外見やグリッド支持棒間隔に極端な差異を見出せないのだが、12AD6がこれだけ利得が高いと言うことはグリッド・ピッチが非常に細かいのではと推測している。 12BE6でもEpやEsgを50V程度に上げれば様子がぐんと変わって来るものと思われる。 ヒーターはDC12.6V/0.15Aで12AD6と同じである。このDC12.6VからインバータでDC48V程度を生成するDC/DCコンバータは種々あるので、2・3個カスケードにすれば12BE6を通常電圧で動作させる事も可能だろう。
AFアンプをLM380Nでサブ基板に製作し、メイン基板に仮接続して様子を見る。またIFTのスペースを最小につめた。
また全体に利得が高いため、IFTは12AD6側とLMF501T側双方でタップダウンした。この際タップは低Z側になる配線としている。
さらに懸案のAGCは、LMF501Tの検波出力に対して時定数回路が比較的軽負荷なので、検波出力をそのままGe-Diodeで負方向整流して時定数回路へつないだ。LMF501T側のAGCが常時効いているので、12AD6のAGCとのコンビネーションをもう少し検討する必要があるのが課題。
写真はその様子でアンテナコイルがシールドボックス収まっているにもかかわらずアンテナ無しでも十分な音量で鳴る。もっとも、アンテナ無しと言うよりは、全体が浮いているので全てアンテナになっていると言った方が良いかも知れない。
ここではAFアンプにLM380Nを使用したが、6dB程度だが利得を欲しい場合はLM386Nを使うと良い。ただ不測の入力レベル増に対しては、出力に余裕のあるLM380Nの方がベターかも・・・。

LMF501Tの入出力特性カーブが入手できないので、参考にほぼ同等と思われるSANYO/LA1050のデータを左に示す。このデータは「保守廃止品」とスタンプが押されたLA1050データシートから、必要部分のみコピーさせて頂いたもので、見え難い文字やスケールをオーナーが修正した。このデータは入力に共振回路を付け、RAGC=1KΩ、Rf=100KΩ、Vcc=1.5V、fo=1000KHz(搬送波)、fm=400Hz(変調周波数)、Mod=30%(変調度)の条件で、入力レベルを可変しそれに応じた出力レベルを0dBm=0.775V(rms)を基準に示したものである。但し出力負荷は600ΩかHi-Zかは不明。
これによると入力が70dBμを超えた辺りからAGCが掛かり、100dBμまでの30dBの変化を凡そ10dBの出力変化に押さえている。入力100dBμ以上については示されていない。
出力は-33dBm程度に抑えられているからマグネチック式のイヤホンを鳴らすには馬力がなく、1W程度のスピーカを鳴らすには少なくとも50dB程度のAFアンプが必要と思われる。
LMF501Tの場合は前述の出力写真が示すように、出力レベルが0.3V(p-p)≒0.1V(rms)ある。この値をdBm換算すると・・・G=20log0.3/2√2・0.775=-18dBm・・・でLA1050より10数dB高めと思われる。したがってAFアンプの利得はLM380Nの34dB程度で良いと考えられる。当然一定レベルの入力(アンテナレベル)が必要だが・・・。
ここまで分かると12AD6に期待すべき変換利得とAGCへの期待度も見えてくる。LMF501TやLA1050は元々バーアンテナレベルを扱うので、12AD6の変換利得に依存する必要は全く無い。むしろIF選択度やAFアンプの利得を十分に考慮する必要がある。

IFTの位置を球側に1区画寄せ、さらにLM380Nアンプ基板の不要部分を切り落としコンパクトにする。AGC回路は初期のシンプルな回路に戻した
AGCについてはLMF501TのAGCが効いているため、現状では12AD6のAGC制御に余り大きな期待が持てそうに無い。AGCアンプを用意して12AD6も十分なAGCループの中に入れたい気もするが、そうするとLMF501Tのカーブとの関係と、AGCの制御源として取り出せるのはすでにカーブが掛かっておりやや複雑だ。LMF501TのAF出力を負整流して12AD6にAGCをかけると聴感で数dBの利得抑制があるが、LMF501T側のAGCも動作しているので本当の処が明確ではない。それから現状はバーアンテナではないのでアンテナ条件による利得変化も大きい。
ただ、これでも一定のラジオとして動作しているため、一定の区切りをつけるためにキャビネットへの組み込みを始めた。キャビネットは手持ちのPC用スピーカーボックスを用意した。前面の空きスペースに小型のボールドライブ機構(JA2TNY高須氏提供)を取り付け、基板のポリVC間をポリロッドでつないだ。写真はその様子。実装しているスピーカーは実は別物なので後日交換予定。さすがに能率が低いので音量は落ちるがそれでも8畳間で聞くには不足は無い。

入出力特性が気になり測定・・・SG(HP8657J)出力は1000KHz/40%変調、AF利得最大。出力はスピーカー端子で0.775V(0dBm)基準にdB表示。 LMF501T以降の利得はLM380Nにより34dB程度高くなり、また12AD6の変換利得でスケールが大分左へシフトしている。
低入力から制限が掛かり出す辺りまでのカーブはLA1050と良く似ている。それ以上の入力では一度落ち込んでから上昇している。上昇の原因は良く分らないが12AD6のAGC効果か、或いは後述のfズレを再同調しているためか。AGCをオフして確認が必要かも知れない。 40dBμ(100μV)〜90dBμ(31.6mV)の50dBもの入力変化を10dB程度の出力変化に押さえている。ちなみに40dBμ付近の歪率は1%台だった。
スピーカーマグネットに基板がぶつかるため、基板上のCRを1区画内側に寄せ、端を1区画切断した。また自信をもって取り付けたボールドライブだったが、上記関連で右方向へ3mm程度移動する事になった。箱に収め同調を取って聴くJOFGが心地よい・・・。
12AD6の前後には共振した高周波トランスがあり電磁結合されている。入力信号はステップアップされ無負荷に近い共振回路でQ倍されてG3に入力される。またプレート側やLMF501T側も共振回路を持ちタップダウン接続されている。12AD6の変換利得は前後の高周波トランスと共振に大きく依存している。
入力レベルを高くすると局発周波数が引張られ数KHzのfズレを生ずる。懐かしい現象でピークを追うには再同調が必要になる。このfズレは入力共振回路のZとG3に関係する電子レベルの話と思われる。安定動作には、G3をオープン(無負荷)で使うよりある程度Rでダンピングさせた方が良いのかも知れない。Hi-Zだと電子・電荷レベルの変化が気になってくる。

初登場のフロントパネルと裏蓋・・・赤色プラ板による指針を作りボールドライブ軸に取り付けた。このボールドライブはビス締め機構が無いため、プラ板に空ける丸穴サイズを小さ目に調整し、強く押し込んで固定する。プラ版の弾性によるフリクション機構だ!。レタリングは後日予定。
この後電源SWとVR、電源コネクタやイヤホンジャック等の取り付けがある。SW付VRにして右側面に取り付ける予定だが、小型で平らなノブなら上面や前面取り付けも有りかも知れない。電源コネクタは裏蓋背面、イヤホンジャックは左側面に・・・色々考えていると楽しい。基板はスピーカーに触れる半固定状態なので、これをベルトでスピーカーマグネットに固定する。さらにアンテナコイルのバーアンテナ化も考えているが、現状でもワニ口リード1本をケース内に巻き込めば実用上問題ない。なお、せっかくの「真空管」なので、何とか外から見える構造に出来ると面白い。例えば上面をメッシュか透明構造にするとか・・・。

局発回路方式・・・実は12AD6の局発(局部発振)回路で気になっていた事がある。それは発振コイルの関係でリンクコイル方式による結合回路を採用していた事だ。元々トランジスタラジオ用の発振コイルなので、結合度が真空管回路にマッチしているとは思えない。非常に元気良く発振するので余り気にもしていなかったのだが、プレートIFTのリンクコイル側にオシロを当てると局発成分の漏れが相当量ある。発振レベルを見るためにG1に10MΩプローブを当てると0.72V(p-p)もある。それで回路をカソードタップ方式に変更(タップはGNDに近い方に設定)すると0.2V(p-p)程度になった。これにより同調周波数がずれるので調整し直すと受信音量に変化は感じられない。とい言うとはリンクコイル方式は発振が強すぎる可能性がある。IF回路でのスプリアスの比較はしていないが、総合的な特性を考慮してカソードタップ方式に変更する事にした。
これは余談だが、カソードタップにしてもリンクコイルにしてもカソードがインダクタで浮いている。したがって局発が発振するとG3を常に局発信号がBIASする事になる。これは昔からずっと疑問を持っていた。DC的にゼロバイアスで混合管を使っていると、局発エネルギーが入力信号に影響を与える可能性があるからだ。しかもDC的にHi-ZのAGC回路を併用しているとさらに怪しい動作を招きそうな気がしている。如何だろうか?。

AGC再び・・・ 再びAGCの話。真空管の動作はグリッドバイアスをマイナス電位に深くすると利得が低下して行く。リモートカットオフ管なら相当深くしてもカットオフにはならないから面白い。これらは明らかにDCによる制御である。標準的5球スーパーの制御は負極性の検波出力(負極性にバイアスされたAF信号)をAGC電圧として利用している。これはどうも妙・・・検波出力で混合管やIF管が変調されるような気がしてならない。十分な時定数回路でこれを阻止しているのかと自問自答。でもクリスタルイヤホンで音が鳴るぞ・・・等と考えながらも、本日試しに整流ダイオード(1N60)を撤去し、LMF501Tの音声出力を直に2.2MΩにつないだ。これでもAGC効果があるのは、12AD6のG3自身にまつわり付く電子のチャージによるDC電位との関係によるモノなのだろうか。少年時代はこの辺りの事は考えもしないでラジオ作りをしていたため、これは新しい発見の連続だ。
やっぱり悩むのはAGC・・・上記では1N60による制御電圧生成を取り止めたが、あらためて入出力特性を取ると大入力時の動作が不十分。
それから局発回路をカソードタップ方式に変更し発振レベルを抑制したが、やはり大入力時は入力信号との混合比が満足できずIF出力が歪んだりレベル低下を招く模様。そのため一夜にして1N60整流と局発カソードリンクコイル方式が復活となった。
左はこれら作業によるAGCによる入出力特性をまとめた。Linkとは局発がCathodeLinkCoil方式。TapはCathodeTap方式。Tap方式は100dBμ以上を入力すると出力が出て来ない状況に陥るためデータが取れなかった。このため90dBμまでの入力レベルに統一して表示している。また参考までに12BE6での状況も記した。感度は低下するものの使えない事はない特性を示し驚きである。
一寸した細工で全く異なるAGC特性が得られ面白い。ちなみに信号源は1000KHz/40%変調(1KHz)。

アンテナコネクタと電源コネクタの実装・・・アンテナコネクタ(RCA-JACK)と電源コネクタを裏蓋背面に取り付けた。アンテナコネクタは1.5D-2Vでコネクタとアンテナリンクコイル間をつなぎ、シールド線はラジオ回路のアースに落とした。電源は赤黒平行電線でLM380N基板へ給電した。これにより装置全体が初めて箱に収まった。12V電源とアンテナリード線をつなげば良好にローカル放送が鳴る・・・取り敢えず。

バンド幅調整とトラッキング調整・・・続いて受信周波数が531〜1602KHz(中波放送帯)をカバーするようにバンド幅を調整する。先ず局発周波数の調整(受信周波数+455KHz)を行う。同調ノブの上下に若干のクリアランスを持たせた受信周波数がVC回転角180度に収まるようにする。低い側はコイルのコアで、高い側はVCのトリマコンデンサで調整する。LとCの調整要素があるので可変範囲を容易に設定することが出来る。SGより531/1602KHzを40dBμ程度でアンテナコネクタに放り込む。高・低の調整が相互に影響するので繰り返し程良き位置に持ち込む。アンテナコイルも同様。既に可変範囲は局発周波数で決まっているので、同調ズレを局発と同じ方法で吸収する。

面白い現象・・・実はアンテナコイルの調整で面白い現象を確認した。今まではアンテナが無かったり、有ってもワニ口リード1本程度で受信音量が最大になる点に調整していた。今回はSGからの信号を直接アンテナコイルのリンクコイルに給電し調整した。するとどうだろう、アンテナコネクタにリード線をつないだときには良好に受信できるが、外すとカスカスの受信状況になった。そこでハッと気が付いた。つまり今までは装置全体がアンテナになるような整合をアンテナコイルやアース回路を含めて行っていたようだ。この辺がポータブルラジオにおけるチューニングの難しさかもしれない。現在、50cm程度のリード線で十分な音量でローカル局を鳴らしているが、リード線が気になる場合バーアンテナの力を借りることになる。

その他課題 ・・・電源はトランス式のシリーズレギュレータで良好に動作している。ところがスイッチング電源に変更すると途端にノイズの嵐。電源入力に強力なLFPが必要になりそうだが、これってやっぱりラジオ側の問題かしら・・・アナログは大変な時代になった。

SW付VRの実装とノブ交換・・・左上にSW付VRを取り付けた。適当なモノが無かったのだが、若松通商の通販でカーブ/50KΩを見つけ発注した。非常に小型でこの種の用途に最適だ。最近Aカーブの品揃えの無いパーツ店が多くて困惑する。VR配線は2線シールド線を使い、SWは基板からDC12Vラインを往復させた。そして手持ちの関係で写真の様に黒ノブに統一した。イヤホンジャックやパイロットランプも考えたが、これらは今後の課題として裏蓋をビス締めした。多少の課題が残るが、このページはここで一定の区切りとしたい(Oct 24,2009)。



同調ハム対策・・・ 実はこれが一番厄介かもしれない。完全に電池駆動のラジオなら考える必要もないのだが、商用ACラインから電源をとる場合の最大の課題と言えよう・・・等と言っていると電池駆動で全くフロート状態でも発生するから厄介。ただのハムかと思うと同調を外せばしっかりとなくなる。明らかに搬送波が電源ハムで変調され、それをラジオが感じている。それが成立する要件を考えているだけで楽しい。それはまた色々とあって勉強になる。ラジオ受信機は何処も複数信号との闘いのようだ。
フィールドテスト@・・・一区切り宣言した翌日の2009年10月25日。車のダッシュボードの上に乗せ、カーバッテリーからDC12Vを供給しアンテナは約1mのビニール電線をダッシュボード上に伸ばしフィールドテストを行った。アンテナの位置が車のボディ内になるから当然感度が悪い。JOFGの下馬放送所を右方向に見てR158を東へ向かうが最初のトンネル辺りで受信不能になった。やっぱり車外のアンテナが必要かとも思ったが、利得をあげるためにLMF501Tの入力IFTのタップダウンをフルタップに戻した(回路図修正)。タップは直流抵抗で概算すると約1/3の所にあるため、フルタップにすれば3倍(≒9.5dB)程度利得が上がると思われる。それにしてもカーラジオのAGCは素晴らしい動作をしている・・・と言うより常にAGC制御状態にある。ちなみにこの手直しで1mのリード線でも3mのリード線でも音量の変化は殆ど無くなった。 ちなみに12AD6のプレートIFTはタップが数dB利得が高かく現状のままとした。
何時までも気になるAGC・・・またまた追記。AGCが殆どLMF501Tに依存している状況、すなわち12AD6にAGCが掛かる前にLMF501TでAGCが掛かってしまう事が気に入らない。大入力で12AD6が歪む事が容易に想像できる。12AD6に早めのAGCを掛けるためLMF501Tの出力を山水のST-15で昇圧した(回路図修正済み)。ST-15は1KΩ:50KΩで巻き数比が7程度あり16dB程度の利得が期待できる。AFアンプの音量増とAGCの生成電圧も上がり一石二鳥だ。AGC側の負荷は2.2MΩと0.1μFであり非常に軽い。結果はどうか・・・40m長のウィンドムアンテナをアンテナ端子へ接続してもまずまずの動作を示した。今まではカツカツ音だった。またアンテナが1m程度のリード線の場合と大した音量差にならない。ただウィンドムアンテナの場合は強電界のため局発周波数が引っ張られる現象は変わらない。このチェックは相当厳しいと考えられるが、普通のトランジスタラジオはどの程度なのだろうかと興味が沸いてくる。
フィールドテストA・・・前回のばん回戦とばかり2009年11月8日、帰省に併せてフィールドテストを行った。アンテナは約1m長のビニール電線をサンバイザー間に張ったが、室内アンテナに変わりは無い。電源はシガライターソケットから直接取り込んだ。が、受信電界が落ちるとダイナモのノイズが混入してくる。
北陸道の武生IC辺りまではJOFGが良好に聞こえるが深夜の移動のため、それから先は外国電波にマスクされNG。JOCKは養老SA辺りから岡崎IC辺りまで、JOPKは牧之原辺りから自宅まで聞こえたが、据付のカーラジオシステムの安定感にはほど遠い。本体の最高感度は大した違いはないと思われるがアンテナ系が不十分と思われる。ポータブルならバーアンテナの併用、モバイルなら外部にしっかりとしたアンテナが必要だと改めて認識した。ただ前回のフィールドテストに比べれば明らかに受信状況は改善されている。
写真はダッシュボードに設置した単球2ICラジオ(実家にて)。こんな実験をするハンドメーカーは余り居ないのではと、自分自身にやや呆れている。
 関連情報@:LMF501Tを使ってAMラジオを試作する
 関連情報A:ゲルマニュームラジオにLMF501Tを組み込む
 関連情報B:ゲルマニュームラジオを組む
 関連情報C:真空管式カーラジオ(初代トヨペットクラウン搭載)の修理