FL-2100BにGU-74B/4CX800Aを50MHzで組み込む(Jun 6〜. 2013)
 関連情報・・・Yaesu FL-2100Z/Bのテストと改修
はじめに
2013年6月9日、甲府在住のJA1KAWから古びたと言うより、ゴミと言われても可笑しくないYAESU FL-2100B(6N814451/300030)が転がり込んできた。
このFL-2100Bは1998年頃、50MHz専用に改修されたモノで、月刊59誌でも紹介されたことがある。 しかし572Bx2と横置きシャシ構造は一筋縄では扱えず、覗いてみるとアース処理で苦労の痕跡が複数確認できた。
これにGU-74Bを組み込みたいと要請があり、ソケットSK-1AやGU-74B等をお届けしていたが、それも一緒に出戻ってしまったHi。
こりゃチト面倒なモノをと思っていたが、不思議なものでケースを外してシャシを眺めていると血が騒いできた。
短時間に回路図を修正(下記)し、シャシに89mmパンチを入れソケットと真空管の穴を開けた(写真)。過去の改修経験を生かしながら、ケチケチ作戦で経費をなるべく掛けない改修がスタートした。(2013.06.13)
主な内容は・・・。
@50MHz専用GU-74B(4CX800A)/GGアンプ
A入力非同調π型LPF処理、出力πL型タンク回路
B電力利得17dB、出力1KW(目標)
CAC200V受電専用
D高圧3端子Reg使用
Eメーカーオリジナリティの尊重

ソケットSK-1Aを固定
写真の様にSK-1Aを固定した。
パンチした直径89mmは、SK-1の取り付け穴の外周にあたるサイズのため、頭部が大き目の4mmトラスビスを使う。
この際、鉄シャシ厚と同じ1.5mm厚のアルミ板で写真の様な金具を作り、ビスが傾かない様細工をする。
ビスは金具とソケットを貫通し下側からナット締めする。
この構造はビス・ナットを緩めると、ソケットを自由に回転させることが出来るため、角度合わせに便利である。
穴を89mmにする理由は90mm角ファンを使うため、ファン面積を目一杯使うためである。
ちなみにチムニィはトラスビスの外側に収まるサイズとするが、円柱型か円錐型かは作業の状況や手持ち材料の関係で決めて行く。
ソケットが取り付くと、シャシ上が締まり、俄然雰囲気が出てくるから面白い。(2013.06.14)

プレート及びロードVCとタンクコイル設置
プレートVCはシャフトが短いためシャフトカップリングとベーク棒及び6mm軸受けで延長。カップリングのスペース確保のためにポリスペーサでVCを奥に押し込んだ。
バンドSW位置にあったロードVCは、オリジナル位置へ移動。オリジナルVCと異なるため取り付けビス穴を開ける。
タンクコイルは両VC間のステータ間に設置。プレート側は高圧DCブロックコンのネジでVCへ共締め、ロードVC側はヤスリでU字に溝を付け半田上げ。プレート側は先端をハンマーで叩きドリルで穴を開けた。
コイルは依頼主がオリジナルの銀メッキ製を切り出したものだが、果たして共振周波数は如何に・・・。
なおπLで構成予定なので、ロードVCからLで取り出し両VCの接地点との間から出力を取り出す。
PSはプレート金具AC2とDCブロッキングコンへネジ締め。
俄然雰囲気が出てきた。(2013.06.16)

プレート共振周波数及び整合の確認
GU-74Bの出力回路をつなぎ、簡易的に共振周波数と整合を確認した。今回の出力回路はπ回路のまま、EsgはSK-1内蔵パスコンで接地、EcgやKはパスコンで接地。
プレートには手持ちの関係でちょっと高いが2.7KΩを負荷、出力からは50Ωワニ口同軸をつなぎ、BR-510Dで観測。
写真は50.6MHzでSWR=1を示している。ちなみに出力VC/250PFは容量がギリギリのため100PFを並列につないでいる。プレートVCは一杯入る手前だがバンド幅4MHzがチューニング範囲に収まっている。
ただしプレート負荷抵抗の変化で微調整が想定される。上蓋を取り付けた場合も状態が変わるので、バンドの上下に相応のクリアランスが必要である。
ちなみにプレート抵抗を1KΩに低下させると、さすがにプレートVCとロードVCの分担比が変わり、プレートVC容量は不足してくる。
なおロードVCシャフトはパネル面で接地していないのでノブを触るとSWRに変化をもたらす。高出力時にはRF輻射が生じるため何らかの接地対策が必要である。
これでほぼ動作イメージが見えてきた。GU-74Bへ電圧を掛ければ容易にKWアンプが出来上がる勢いだ。(2013.06.17)

ファン用ポスト設置とパッド製作
90mm角ファンを取り付ける金属ポストを取り付ける。ポストは15mmm高で片方は3mmのビス処理され、もう片方は3mmのネジが彫られている。これをシャシ側に3mmのタップを立てねじ込む。15mmでSK-1Aの端子をクリアする高さになり、ファンを取り付けると底カバーの内側に綺麗に収まる。
パッドは15mm幅のウレタンゴムをファン穴とポストの間に収まる長さに切断し、ソニーボンド等で両端をつなぎ円状にする。
写真はファン穴周辺に金属ポストを取り付け、パッドをはめ込んだ様子。(2013.06.25)

チムニーを作ってみる
1mm厚x50mm幅のテフロンシートを丸め込んでチムニーを製作した。
外周は300mmで、両端は10mm程度のりしろを作り、重ね合わせてホッチキスで留める。ホッチキスが嫌ならビス・ナットやハトメでも良いかも知れない。
75mmおきに上部にピンバイスか千枚通しで子穴を開け、スプリングを取り付ける。スプリングの反対側は卵ラグを付けておく。
シャシへの固定は、ファンポストのビスがシャシ上に顔を出した所へ卵ラグを折り曲げてナット締めする。
写真は取り付けた様子。テフロンは久しく狭いところへ丸めてしまっていたため、形がやや歪んでいる。
高さはGU-74Bのプレートフィン程度だが、テフロンシートに余裕があればもっと高くしたい。
この方法は空洞の中にGU-74Bをさらす方式で、ファンには静圧より風量を期待している。フルレートで使う訳ではないので、経験的にこの形で行けると思う。(2013.06.27)

オンディレーリレーを取り付ける
オンディレイリレーは電源投入後ヒーターの予熱が完了するまで高圧投入を控える仕掛け。ここではDC24Vで最大180秒のタイマーリレーを使う。
高圧制御はトランスの1次(低圧)側で開閉するのが筋だろうが、ヒーターと高圧巻き線が同じコアに巻かれているためそれが出来ない。苦肉の策で2次(高圧)側巻き線のコールド側を開閉する。
実はこれ、真空管がカットオフ状態なら、高圧生成はもとよりプレートへの高圧印加をやっても問題ないと思うのだが・・・。絶対に送信へ移行できないロジックにして・・・どうだろう。 2回路あるタイマーリレーの1回路をスタンバイ回路に直列に組込み込むから、高圧の開閉をやらなくても・・・と思うのは自然な成り行き。後で可否を考えることにする。
この外、高圧投入する条件に「-Ecg立上り情報」と「ファン回転情報」も入れている。
さて写真は、オムロンMY-4型のソケットの支持金具を利用し、タイマーリレーMY2Vを取り付けた様子。FL-2100Bの側面に3mm穴を2つ開け金属ポストで固定した。この種のタイマーリレーのPin配列には、見た目は同じでも内容が異なる場合があり要注意。(2013.07.01)

入出力リレーを取り付ける
入出力リレーは、入力側・出力側・スタンバイの3系統を同時切替する。
リレーはオムロンLY4で、4回路の2回路は並列にして出力側、そして1回路を入力側、もう1回路をスタンバイに使う。取り付け場所は背面ボックス内。
入出力の結合をなるべく嫌うために、スタンバイ回路が入・出力回路を挟むように位置し、スタンバイ回路は積極的なパスコン対策を施す。
写真はアルミアングルに四角穴を開けシャシに固定し、ソケットとリレーを取り付けた様子。アングルは元々あったセルフタップ穴へのビス締めと、新規に穴開けしブラインドリベット留めした。
シャシ底にリレーを転がし、むき出しのスズメッキ線を引き回すより、箱に収め同軸処理した方が不要輻射を低減できる。(2013.07.06)

エンブレムの製作と配線開始
バンドSWの穴とパネル面の文字消しのためにエンブレムを製作し貼り付けた。「FL-2100B 50MHz Special for JA1KAW by JH2CLV Jul 2013」と粘着シールへプリントし、ビールのアルミ缶を切り出し貼る。それを両面テープでフロントパネルに貼り付けた。穴が開いて不恰好だったフロントパネルが俄然しまってきた。
この作業の他に、何故か上下逆に取り付けてあった(依頼人も記憶無し)スタンバイSWや脱落していたパイロットランプを補修。また入出力リレーとオンディレイリレー周りの配線、真空管ソケット周りの配線を行う。 (2013.07.20)



ソケットとリレー周りの配線と通電
左はソケット底面の配線の様子。カソードRFCは#43材コアに4Tの約7μH。入力LPFはL(6mmΦ7T/1mmEC)とC=56PF&Cin(GU-74B)で構成するカットオフ約60MHzのπ型。
下は、高圧の投入シーケンスの確認。約3分のオンディレイ後投入される。それに外部の実験用電源から-Ecgと+Esgを供給しIpの流れ具合を確認。Esgが300VだとIpカットオフ-Ecgが100V近くなる。-Ecgを可変しIpをスケールアウト(600mA超)させるがスムーズにIpメータが触れ、妙な発振などは無い。
これを見ているとRFを入れたくなるのは人情。IC-756から20W程度を供給し荒チューンすると300〜400W程度出てくる。ただロードVCの接地が良くなくノブをつまむjと強烈に発熱する。それに現状だと50.5MHzでプレートVCが一杯入りもっと欲しい。何れも要検討だ。入力SWR=1で非常に良好。








下は入出力リレー配線の様子。シールド側の処理は高電力系で泣き別れない様に配線している。黒同軸は3D-QEV、白同軸は元々使っていたテフロン。(2013.07.21)



ロードVCを奥へ移動しシャフトを延長
ロードVCのノブが瞬時に触れない温度になるため、タイト製シャフトカップリングとベーク棒で延長する。
作業を簡易にするために、30mm金属スペーサでVCの固定ネジ部を延長してパネル側から締め付けた。本来ならプレートVCを含めてLアングルへ取り付けGU-74Bの根元へ固定したいのだが・・・。
パネル側はプレートVC同様に6mmの軸受けを取り付けようと考えたが、元穴が大き過ぎ断念。
この作業によりロードVC補助Cはシャシ上に移動し、ロードVCの接地もそこへ共締めとした。
上記作業のためにまたしてもフロントパネルを取り外した。一体何回パネルの取り外しをやったことだろう・・・。(2013.07.23)

出力回路を修正して動作させてみる
ロードVCを奥へ移動したことで接地線路長が変わるため、SWRアナライザを出力側につなぎ(プレートは2.2KΩのR負荷)様子を見た。
ところが初期に確認した様なSWR=1が出ない。どうしても1.5付近に留まっている。ひょっとして部品類に損失部分が出来てしまったのだろうか・・・。
追い込みたいがこの状態で通電してみる。25W程度の駆動で600W超の出力が容易に出てくる。
しかし可笑しい、それ以上に駆動レベルを上げても出力が殆ど延びない。入力SWRがほぼ同じタイミングで急上昇することから、カソードRFCのコアの発熱と想像する。空芯にしようか・・・と思いが過ぎる。
600W出力時のキーイング波形をオシロスコープで見るが、電源リップルを僅かに感じる程度で特段問題は無さそう。
ちなみにロードVCの接地経路は大幅に短くなったが、ためしにVCシャフトをドライバーで最寄シャシに接地すると同調周波数が大幅にずれる・・・やはり出力側もちょっと変か・・・こんなもんか?。
写真は本日の体制。FL-2100Bの左は実験用電源。Esgと-Ecgを供給。その上がBIRD43/1000A。Esgと-Ecg電源を早く組めば良いものを、時間が取れずこんな調子でやっている。(2013.07.25)

カソードRFCのコアを#61材に変更
ドライブレベルと上げると暫くしてSWRが突如として悪化する。その多くは部品の温度特性が原因の場合が多い。当初より#43材はきついかと思っていたが案の定だった。コア温度の上昇で透磁率が低下し、所定のインダクタンスが得られなくなっていた。4T巻いてあるカソードチョークを解いて同じサイズの#61材コアに巻き直した。インダクタンスは約1μH。これにより40W以上のドライブでもSWR=1を確保できる様になった。
これで出力は700Wを得ることができる。ところがロードVC(250PF)が補助C(調整中で300PF)を含めると容量が550PFもあるが未だ増やしたい方向でちょっと可笑しい。プレート同調容量はVC+Cout+ストレー=10+11+5=26PF程度はあるはず。大雑把に変換比=550/26=21と見るとプレート負荷抵抗は50x21=1.1KΩ・・・大分オーバーロード?。それより当初SWR=1にチューニング出来た状況が再現できていない。何か有りそうだ・・・。
Esg電源を高圧回路のコールドエンドケミコンから取ろうと目論んでいたがあっさり個別のトランス方式に戻す。試してみたが相手はしょせんは蓄電器から取り出す電源。おのずと限界があった。Ecg-Bias設定VR(10KΩB)やツェナーダイオード等を設置。しかしEsg/-Ecg電源は相変わらず外部から。 (2013.07.27)

現状で30分の500W連続Keyingと温度測定
未解決課題があるが、それを承知で500W連続Keyingを30分間続けてみた。
出力500Wとしたのは、電源トランスの容量不足を懸念してのこと。案の定トランスの温度は触れない程に上昇。ただ出力の低下は見られず安定に500Wを継続、見事だった。 Keying中に以下ポイントの温度をレーザー温度計で測定したが、特段の異常は確認できなかった。GU-74Bプレートは130℃、VC類・タンクコイル・ドアノブコン・プレートRFC・カソードRFC・入出力リレー・出力同軸・電源トランス・筐体・etc・・・これらは50〜60℃程度。電源トランスは温度上昇とともにニスの匂いが漂う。
左はビス締めでは運用性が悪いためRCA-JACKに交換したRYとALC端子。
700W出力時のデータ・・・ドライブ40W、Ep/Ip=2KV/500mA(プレート入力1KW)、BiasIp=100mA、効率70%。目標はハードルが高過ぎるか・・・。

ドジど不思議な話・・・オリジナル回路はトランスの6.5VCTを接地している。本改修では6.5V巻線を13Vに直列接続しリレー電源やバイアス電源を生成する。ところがこのCT接地をカットしてなかった。本日突如としてトランスが発熱し煙を出した。調べるとCT接地だった。一瞬ダメかと思ったが接地回路を撤去すると無事復旧。では今までは何だったんだろうか・・・狐か狸に化かされた感じだ。(2013.07.28)

Esg電源基板を製作する
如何に手を抜こうかと考えていたが、結局元の方式へ戻ってしまったEsg電源。お決まりのトランス(ノグチ250V/35mA)にパワーMOS-FETとツェナーダイオード(300V/5V)によるシャットダウン機能付のシリーズReg。
写真は後部室の横壁に取り付けた基板。基板はスルーホールのモノを使ったが非常に使い易くグッド!。手前の空きスペースは-Ecg電源用の3倍圧整流回路を組もうと考えているが果たしてどうなるか。1倍圧はシャシ内に残し、2倍圧と3倍圧回路のみを基板に乗せる手もある。
なおこの日電源トランスに4ターンの補助巻き線を施し、-Ecg様のトランス出力を23.5Vまで上げた。こうなるとリレー用のDC24Vには高すぎるので抵抗による降圧が必要になる。
なお後部室は入出力リレーと同梱となるためRFの被り対策が必要になってくると思われる。(2013.07.29)

Esg電源基板にEcg電源の一部を同梱する
昨日作業したEsg基板の空きスペースに-Ecg回路の一部を組み込んだ。
一部としたのは、1倍整流部はオリジナルと同じ場所で作り変えた。即ち巻き線電圧が23.5Vに達しているためオリジナルの平滑ケミコン1000μ25Vでは耐圧不足のため50V級に変更。そして基板には2倍圧・3倍圧回路のみを組み込んだ。
なおリレー電源は24Vのため、1倍圧電源は容易に30Vを越えるためRを直列挿入して降圧する予定。
写真はコンパクトに納まったEcg&Esg電源基板。ケミコン容量を減らせば1倍圧回路も組み込み可能。(2013.07.30)

リレーおよびグリッドバイアス電源用のトランス巻線電圧が4ターンの補助巻線を追加したことで23.5V/ACとなった。 これを3倍圧整流すると、無負荷なら23.5x3x1.414=99.687V/DC。またリレー電源用の1倍圧は23.5x1.414=33.2V/DCとなる。 リレーはDC24Vなので抵抗で降圧することにする。 入出力リレーのLY4-4/DC24Vはメーカーデータによると動作電流69mA/350Ωとなっている。 またタイマーリレーMV-2/DC24Vは手元にデータが無いが、類似品のHY型が消費電力1.1Wとなっている。これから逆算すると動作電流は45mA程度。 したがって両者の消費電流は69+45=114mA。負荷時の1倍圧出力が30V程度と見込むと、降圧用の抵抗は(30V-24V)/0.114A=52.6Ω/0.68Wとなる。 取りあえず手持ちの56Ω/2W程度の抵抗を取り付けておこう。 送信に移らないと上記関係は成立しないため、スタンバイ時はタイマーリレーの動作電圧が24Vを超え27V程度になってしまうが拘らないことにする。 1倍圧ラインの状況を見ながら抵抗値を微調整しておくと良いが、嫌なら降圧抵抗をリレー毎に挿入すればよい。
…などと独り言を言っていたら、やっぱり入出リレーとタイマーリレーの負荷の重さは大違い。これは別々に降圧抵抗を設けないと危ない・・・24Vの3端子Regを持ち出す程の元気もないし。(2013.07.31)

3倍圧-Ecg電源が可笑しい
訳あって通電を控えていたが本日通電をすると出力が低い。可笑しいと思ってるとケミコンC2から熱気。慌てて通電を切りC2を触ると猛烈な温度。即極性間違いと気付く。
ダメモトで極性を入替えて通電するが-32V程度しか出ていない。これじゃ1倍圧もいいとこだ。色々調べると、D2の焼損、D3の短絡を招いていた。これらを交換しC2は現状のままで無事復活。配線チェックはしているモノの、やはり注意力や洞察力が低下していることを改めて自覚。 些細なことが他へ飛び火する良い例を作ってしまった。
これでようやく外部電源依存から開放されることになった。写真は苦肉の策、電源トランスの補助巻き線の様子。(2013.08.01)

出力タンク回路を追い込む
出力タンク回路のSWRが1に落ちなかったり、π回路の出力側Cが500PFを超える異常な状況を調査した。既に700W近い出力が可能であるが、出力VCの接地リン青銅ベルト(25mm幅)の発熱もある。
これらは本来のπ回路ではない部分で50MHzに共振している可能性がある。それで広く共振周波数を探すと60MHz付近に本来の共振を確認。それでVC類の動きと周波数関係、さらにアナライザによりSWR=1に同調が可能であることも確認。
インダクタンスを増加したコイルへ変更し当初の目的を果たした。
写真はタンクコイルを変更した出力部。コイルは4mm/25mmΦ/5T。オリジナルのコイルスペースはアルミ板で塞いだ。下はファン制御サーモSWを天板に取り付けた様子。排気穴は75mmΦでダイアプレスネットをブラインドリベットで固定。 なおプレートRFCは巻き過ぎの印象だが、巻き線長がλ/4の丁度3倍あるのでこのまま使うことにした。






下はようやく単独でテストできるようになったFL-2100B SPECIAL。 40W/CW(入力SWR=1)程度でドライブすると700W程度出力する(Ep=1950V/Ip=520mA/Bias=100mA)。SSBならオシロスコープで見ると1KW/PEPを超える。オリジナルの電源の弱さが露呈されてしまうが、それでも572Bx2の50MHz改修に比べたら雲泥の差だろう。
ちなみにEpを2.2KV以上に維持できればCWでも容易に1KWに達する。(2013.08.03真夜中)







700W/CWで30分連続Keying
700W出力で連続30分のKeyingを実施。出力低下無し。
これによる各主要部品の温度を測定。 Plate:127℃(最大)、T1(Core):62℃、T1(Coil):105℃、VC1/2ローター:50℃、TankCoil:43〜45℃、Plate_RFC:43℃(上・中・下)、高圧ケミコン:40℃〜45℃、サーモSW:55℃。気温32℃。
電源トランスT1が一番余裕が無い感じなので、CW運用では出力を落とすか間欠的な運用が必要(SSBでは問題ない)。他は局部的な温度上昇も無く、まずまず良好と言えそうだ。
レーザー温度計:CUSTOM CT-2000D  (2013.08.04朝)

キャビネットに通風穴を開ける

キャビネット上下に通風穴を開けた。穴サイズはGU-74Bのソケットと同じ89mmΦ。穴の処理は90mm角のファンガードで行った。FL-2100Bの通風スリットの間隔が必ずしもファンガードのネジ穴と一致しないので騙し騙し行う。
上部のファン穴は、ファンガードのスリットへのビス締めを考慮した結果、GU-74Bより数mm背面側に寄っている。写真にはサーもスイッチが顔を出している。
下部ファンは偶然にも良い位置に来てあつらえた様だ。
手持ち品の関係で、上部のファンガードはゴールドメッキとなりやや違った趣だ。
この作業に併せ、ファンを当初予定のIKURA/200V/回転センサー付きに交換したが、センサーのI/Fが取れずタイマーリレー制御は現在行っていない。このファンは金属プロペラで慣性力があるためか、キャビネット底の空間が狭くなっても安定に吹き上げている。
本体にキャビネットを取り付けてみたが、随分と雰囲気が出てきたと思う。ただ依頼人からは締め付用鉄板ビスが届いていない・・・。(2013.08.04深夜)

ALC回路追加とFAN回転センサー
ALC回路を背面箱内に組み込んだ。写真中央のラグ板がそれ。まだ結合コンデンサ(1〜5PF程度)は取り付けていない。スレッショルド設定VRはシャシ背面、写真右下に取り付けた。
なおFANの回転センサーを利用してオンディレイタイマーリレーへの通電条件にする予定だが、センサーの出力状態がイマイチ把握できずにいる。現在調査中。場合によってはAMPが必要になるかも知れない。下の写真で、FANの左側の四角い部分が回転センサー部分。
本日坂口電熱よりサーモSW固定金具が届き、タイラップから変更しブラインドリベットとビス&ナットで固定。 (2013.08.05)



ALCピックアップCと取り付けと背面レタリング
入力リレー送信系からALC回路への結合を5PFのセラミックコンで実施。これにより40W(SWR=1)でドライブすると-2V超えのALC電圧をRCA-Jackから得ることが出来た。
また未実装だったπ回路のDC接地(保護)用のRFC(FL-2100Bオリジナル)も実装した。 更に背面のBIAS_SET-VRとALC_SET-VRにレタリングを施した。フロントパネルで使ったエンブレム用シールも入出コネクタの間に貼ってみた。完成の域に大分近づいたか・・・。(2013.08.06)

ファン回転センサーでオンディレイリレー制御
ファンの回転センサーはIKURA社のPLC5でファンはN3951。センサー出力は同社資料によると、回転時100KΩ、停止時10Ωの抵抗値出力。論理が逆なのでこのままではオンディレイリレーを制御できない。Trでインバーとしようと作業を始めたが実験要素(定数出し)を含むためあっさりと24Vリレーに変更。
何らかの原因で回転が停止(低下)した時、そのリレーが働きブレーク接点でオンディレイリレーの電源供給を切り高圧遮断する。センサーは一度動作すると電源を完全に落とさない限り復帰しない。
写真はオンディレイリレーの右に設置したリレーRL2。空き接点を使えば「ファン異常」表示も可能。
下はシャシ内部全景。入出力・スタンバイリレーを一まとめにして(RL1)後部箱へ入れたためスッキリしている。HFタンクコイルスペースはアルミ板で塞ぎ、シールドとタンク回路リターンルート改善を果たしている。(2013.08.07)



再びタンクコイルを製作
これは全くの浮気心。先日タンクコイルの温度分布を図ったら全体にわたり同じ温度だった。しかも常温に近い温度で全く問題は無かった。
しかし余裕が出てくるとちょっと線材を太くしたらどうだろうと浮気心が出てくるのは人情。 写真は今まで直径4mmだった銅パイプを6.4mmで製作したコイル。多少の出力増加(低損失)を期待したのだが、全く変化無しだった。
何も成果無しではしゃくなので、50〜54MHzがプレートVCの調整範囲の中央に収まるように微調整し気を紛らわしたHi。ちなみにインダクタンスは0.34μHが3μHになった。
なお高圧バイパスコン(1000PF/6KV)はパネルからのビスに触れるため細めの500PF/10KVに交換。配線材のガラスチューブ端が解れみっともないので赤色伸縮チューブで処理した。(2013.08.08)



忘れ物と手直し諸々
中をの覗いていると忘れ物や簡単な間違いに気付いたりする。たとえば入出リレーコイルのアブソーバダイオード。各リレーの降圧抵抗の挿入。FL-2100B特有の天板パンチ板の寸足らず。ALC_SET-VRの方向。必要なモノは対応し、運用で逃げられるモノはそのままとした。
アブソーバダイオードはリレーコイルへの通電入・切時に発生する自己誘導による高電圧を吸収するダイオード。この高電圧によりエキサイタ内のリレー接点を傷める場合があるので必ず入れたい。リレー用の降圧抵抗は、複数個入れるのは馬鹿馬鹿しいので、結局24Vの3端子Reg7924のご出馬となった。ALCのVRはゴメンナサイと逃げることにした。 左は実装した-24V3端子Reg7924。ヒートシンクが無いとさすがに熱く触れなくなる。
天板の寸足らずの目的は何かYAESUの方にお聞きしたい。フロントパネル裏の隙間へ27mmx182mmx1mm厚アルミ板をビス締めして固定。送信中に天板中央と箱の縁をドライバーでタッチさせると火花を散らす。これを見るとどうしても塞ぎたくなる。下は塞いだ様子。 (2013.08.10)



波形観測
高調波特性。
2ndが基本波に比し-39dB表示、サンプラーの減衰量(-6dB/Oct)を加味しても-45dB。πL回路のLを同軸リードの「r」に依存する手抜きのため、もう少しインダクタンスの追加が必要か・・・。

サンプラー:Bird 4275-20(-6dB/Oct)
ダミーロード:Bird 8404
電力計:Bird 43(1000A)
オシロスコープ:Tektronix 476
スペアナ:Advantest R4131A
ATT:多摩川電子 UBA-761A
エキサイタ:icom IC-756(50.2MHz)


ツートン波形。
3目盛りが700W/CWのライン。Ipバイアスは100mA。下のエキサイタ出力(約30W)に比べクロス前後がやせ細っている。 Ipバイアスを150mA以上にすれば改善される方向だが、冷却との兼ね合い。SSB運用が前提だとするとIpバイアスは高めに設定した方がベター。波形先端が後述するリップルの影響を受けている。
余談だが、変調内容をボイスにすると先端は700Wラインをつき抜け容易に1KW/PEPに達する。



CW波形。
先端が700W(3目盛り)。掃引速度の関係でやや見難いが、先端にリップルがある。高圧の電圧降下(2.4KV→2V)が有るため、CWで現状では700W出力が最大。

CW Keying波形。
上記高圧の電圧降下やリップルがKeying波形に重畳されている。FL-2100Zのテストでもかつて同様のリップルを確認している。この波形を見ると、高圧電源部の強化を図りたくなるが、限られた容積の中では自ずと限界がある。この特性は高圧ケミコンを交換・増量しても劇的は効果は得られないと思われる。高圧整流後にチョークトランスによるリップル抑制対策が考えられるが、これも容積の問題とコストの問題。或いは-Ecg電源のリップルも考えられるか?。 (2013.08.12)

波形観測その2
スペアナをTR3273に変えて高調波特性・IMD特性・近傍特性について測定してみた。
波形は左がFL-2100B改修機出力(700W)、右がエキサイタIC-756出力(30W)
波形をクリックすると拡大表示します。(2013.08.13)
高調波特性・・・10倍まで表示してみました。RBW10KHz、スパン564.8MHzです。エキサイタ出力はさすがに良好ですが、アンプ出力は賑やかに拾い上げられています。ただ前項で確認した値より良好で2倍で-50dB以上落ちています。サンプラーのf特が6dB/Octのため、実際の値は周波数2倍で-6dB、4倍で-12dB、8倍で-18dB・・・となります。

IMD特性・・・これが一番課題です。RBW30Hz、スパン5KHzです。エキサイタ出力は30W程度ですが、3次で-35〜37dB程度取れています。ところが、アンプ出力ではこれが-22dB程度止まりです。数字は2トーンの先端からですから、アマチュア的に言うと-28dBになります。しかし先端から-30dB以上は欲しいところで要検討です。この値はIpバイアスが100mAでも200mAでも変化はありませんでした。

近傍特性・・・スペアナのRBW(分解能)が10Hz程度でないと見ることが出来ません。スパンは5KHzです。前項で写真で紹介している様に、リップルによる成分がキャリアの±120Hzに確認でき、エキサイタ出力では確認できない±60Hzが確認できます。
前後しますが、前項は2トーンとその関係の歪の他に、こうした成分も含まれて居ますから複雑です。


その後の対策@
再びタンクコイルの変更・・・コイルの直径が大きくなった分シールドボックス壁との結合が気になり、元のコイルへ戻すことにした。指先で天板のアルミ板に触れたときの体感温度が全く違うから。交換する前は触れない程の発熱があった。またアルミ板とパンチ板の隙間にマイナスドライバーを突っ込むと火花が散る。これらは交換により回避された。この際若干切り詰めプレートVCの位置が程良い角度になるように調整。発熱も無く動作は良好である。写真はその様子。

24Vリレー電源経路のバイパス・・・CWでの連続Keyingでは問題なかったが、2トーンでの連続送信を10秒程度行うと、突如としてタイマーリレーが落ちた。当初は24V3端子RegへのRF被りと考え、7924の出力にパスコンを取り付けたが変化無し。続いて入出力リレー巻線のコールド側をパスコン処理するとこれが見事的中。それもそのはず数百Wの電力が露出しているリレーの配線には、反対側が低Zであっても一定の電力誘起するはずだから。エンベロープに複雑な変化のある信号が24Vラインに重畳されタイマーリレーが妙な動作をしたものと推測される。(2013.08.14)

その後の対策A
GU-74Bを交換・・・手持ちに複数個のGU-74Bがある。試しに別のGU-74Bを差したらこれが何と50W以上の出力アップ。CW飽和出力は700Wを軽く超える。IMDも改善かと期待したが僅かな改善は見られるももの殆ど変化無し。

高圧ブロッキングコン・・・途中から500PF/DA30に変更していたが、10分程度の連続Keying後プレート側電極面の温度が100℃を超える。耐電流が低いと考えオリジナルの1000PFに変更。それでも100℃以上になるので改善が必要。そして500PF/10KVのTAMURA製で試すと数分で容量抜けし2.5PFに。結局300PF/DA40に落ち着くが、温度は相変わらず100℃を越える。π回路側は問題ないのでプレートからの熱伝導と判断した。

ちょっと高級な話・・・エキサイタのSWRメーターはSWR=1で微動だにしない。これは送信中の話。実はブレークインでKeyingした瞬間を観察するとSWRが一次的に上昇する。何かと考えたらエキサイタは瞬簡に立ち上がるが、アンプ側はエキサイタのリレー情報でスタンバイリレーが動き送信に切り替わる、いわゆる遅延がある。遅延の間エキサイタ出力は短時間ではあるがオープン状態になる。そしてSWRが上昇し出力制限が掛かり、アンプを含めた立ち上がり特性が悪化する。悩ましい。エキサイタのリレー接点出力による制御を止め、TX-DCから取りアンプのリレーを電子SWすればエキサイタのリレー遅延分は稼げるが、総合的に見てどの程度改善するか・・・。

アンプスルー時のSWR改善・・・アンプスルー(STBY)時のSWRをエキサイタで見るとSWR≧2で、殆どの場合出力制限が掛かってしまう。
これを入出力リレーのスルー部に補償Cを抱かせてSWR=1にする。Cは22PFセラミックを使用した。
リレーの信号経路はむき出しでインダクティブなのでCで補償することにより悪化したSWRを劇的に改善できる。
写真の水色のセラミックコンが補償C。

もっと利得が欲しい・・・入力回路は広帯域の整合(無調整)を優先させ、カットオフ周波数約60MHz超のπ型LPF方式である。もとより目的周波数50MHzの共振には全く依存していない。これを仮にπ型で50MHzに共振させたらどうなるだろうかと興味がわく。現状のπ型LPFのCはGU-74Bの入力容量に依存しており、これを減らす事は出来ない。したがってその値がそのまま同調容量になる。この場合50Ω負荷をつないだ場合の負荷Q=1/ωCR=1/ωCx1/50=1/2πfCR=1/2x3.14x50MHzx50Ω=1.13・・・これをどう見るか。少なくとも現状よりは利得が上がると思うが・・・ただしSWR=1が条件だが・・・。 (2013.08.15)

その後の対策B
入力πLPFを50MHzに共振・・・LPFのLを増やして50MHz付近に共振周波数を持ってきたが、予想した通りSWRが悪化、とたんにエキサイタ出力が低下する。この調整の面倒臭さを回避するためにLPF型を採用している経緯を思い出し、浮気心は一瞬にして吹き飛んだ。やはりLPF型の簡易さは素晴らしい。なお本格的にπ回路の容量を調整できればこの限りではないが、現状のスペースにその環境を作るのは容易ではない。

高圧巻線電圧を上げる・・・外部に200V程度の絶縁されたAC電源を用意し位相を合わせて高圧を上げる。HVメータは500mA負荷時で2.5KV程度になるが、出力は容易に800Wを超える。1KW程度まで伸びるかと思ったが意外に伸びなかった。写真はその様子。外部トランスのAC150Vをワニ口リードでFL-2100Bの高圧巻線へ位相を合わせて接続。

πL回路のLを増加・・・現在20mmΦ半ターンの同軸芯線コイルでお茶を濁しているが、これに約0.15μHのコイルを追加。CWで最大出力(700W)に同調後高調波特性を見る。良好で2次で-59dB(スペアナ表示、-6dB/Oct補償なし)まで落ち、πLの特徴を確認できた。ただコイル線材が1.6mmΦでロスがあるため確認に留め元に戻した。(2013.08.16)

その後の対策C
後部室にシールド処理・・・後部室には入出力リレーがあり、50Ωラインとは言え送信時は強電界の巣。またEsg&Ecgボードが実装されているが、半導体デバイスが組み込まれ強電界による誤動作が心配。更にGU-74Bや出力タンク回路が、オリジナルの572Bソケット穴から丸見え。
当初から気になっていたが、ここに来て一機にアルミパンチ板によるシールドを行った。これは気持ちの問題で、効果の程は定量的には不明。
写真はEsg&Ecgボードと入出力リレーを仕切るアルミパンチ板。そして572Bソケット穴を塞いだアルミパンチ板。(2013.08.17)

COFFEE BREAK・・・意外と面倒 GU-74B/4CX800AのSK1Aへの挿入方法について。
総合回路図(クリックすると全画面表示、予告無しに修正し履歴は残しません)


オリジナル回路図(クリックすると全画面表示)