見通し外の方が強い中波ラジオ受信を考察し直したら…(Apr 10. 2017)
80m長22m高逆V-Windomアンテナに誘起するローカルラジオ局(JOPK/882kHz/10kW/140mVertical_ANT)の受信レベルが、自宅のそれと山頂のそれとで凡そ8dBの差があり、かつ放送所から見通し(16.1km)の山頂より間に山を挟んだ見通し外(14.4km)の自宅の方が高いときた。若干距離が短いことを差し引いても大きな数字である。
想定した状況が逆になってしまい、しばらく困惑の時間が経過した。
一体どこで8dBもの差が出来てしまうのか…考察してみた。
左は放送所から自宅と山頂(リモートシャック)を含めたスパン(画像クリックで拡大)。
下は自宅と山頂の拡大。細線はWindomアンテナの張り方向。上◎が山頂(リモートシャック)で、下◎が自宅。山頂側の数字は自宅-放送所-山頂までの距離。自宅から約500mの所に、東名-新東名連絡道路のある山(150m)がありシャドウになる。放送所側も5〜6kmの駿河区池田付近に日本平の裾があるが、こちらは高さが無い。画像はGoogl_Earth利用。




地図上に自宅と山頂の逆V−Windomアンテナの方向をなるべく正確に記し、放送所から来る電波の方向との平面上の角度を調べた。
その結果、ほぼ同等だろうと目測していた入射角度に大きなずれがあった。正確には以下の通りである。
1.放送波の到来方向とワイヤーエレメントの角度を地図上で確認すると。
 @自宅Windom(南北張り):64度…放送所から14.4km
 A山頂Windom(東西張り):21度…放送所から16.1km

2.これは大変な違いとばかり、電波の入射方向から見たアンテナの実効長と全長との比率計算してみる。
 @自宅Windom:sin64度=0.8988
 A山頂Windom:sin22度=0.3746

3.この両者の比率から利得差を算出してみる。
 G=20log0.8988/0.3746=20log2.4=20×0.38=7.6dB

4.参考…882KHzの自由空間損失差は。
 @放送所〜自宅:55.48dB
 A放送所〜山頂:54.51dB
 損失差=55.48-54.51=0.97dB
 *計算式…LOS(dB)=20*log(4*π*r/λ)
    λ=波長、r=距離
 見通しでの比較なので参考。
 放送所〜自宅は見通しではなく山(自宅手前500m/標高150m)が遮るが、地表波伝搬で影響なく伝搬。

5.総合評価
 距離による損失差が0.97dB(地表波伝搬も同等だろうと見込んで)ある。実測値8dBはそれが加味された値。この数字を見るとなんとなく頷けてしまう。
 結論は見通しでも見通し外(標高150m山を挟んでも)この距離なら其々の地点の電界には殆ど違いは無い。
 アンテナを張る方向の違い(40度程度の違い)が受信レベルに反映されていたと思われる。


○目的波は882KHz(10kW/140mVertical)。逆V-Windomは給電点が地上高22m、エレメントの両端は地上高2〜3m程度。自宅・山頂共ほぼ同等。
○元々米Buckmaster社が製作するOffsetCenterFeedダイポールアンテナ。
○自宅及び山頂とも同等の逆V設置環境にあり、水平偏波成分及び垂直偏波分も同等と考えられる。基本的には水平偏波が主であるが、浅い逆Vにしている関係で垂直偏波成分も一定量あると思われる。
○給電部に4:1のバランを使用、1.8MHz〜50MHzバンドの仕様となっている。中波ラジオ帯のf特は相応の落ち込み(バランf特)があると思われる。
○見通し・見通し外で差が出ない理由は、中波は地表波伝搬だからと考えている。
○大変大雑把な試算だが実測差の8dBにほぼ一致した。ここではアンテナエレメントの平面角度の違いのみに着目しているので、その他の要件は省略している(標高差・大地導電率・誘電率etc)。
○何方かご意見をお願い出来ないだろうか…。