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館娃宮畔千年寺,
水闊雲多客到稀。
聞説春來更惆悵,
百花深處一僧歸。
靈巖寺
館娃宮畔 千年の寺,
水 闊(ひろ)く 雲 多くして 客 到ること 稀なり。
聞く説(なら)く 春來 更に 惆悵(ちうちゃう),
百花 深き處 一僧 歸ると。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。
※靈巖寺:江蘇省蘇州のすぐ南、呉県の西南にある。嘗てここに呉王夫差の宮殿・館娃宮があったという。この作品は日本の藤井竹外『遊芳野』「古陵松柏吼天飆,山寺尋春春寂寥。眉雪老僧時輟帚,落花深處説南朝。」に影響を与えたか。『三體詩』では趙の作とする。
※館娃宮畔千年寺:館娃宮の側にある千年の古寺・霊巌寺(は)。 ・館娃宮:〔くゎんあ(い)きゅう;guan3wa2gong1●○○〕呉王夫差の宮殿。美人西施のために建てた。「娃」は呉の方言で美人をいう。白居易の『楊柳枝』其四に「紅板江橋青酒旗,館娃宮暖日斜時。可憐雨歇東風定,萬樹千條各自垂。」がある。 ・畔:ほとり。 ・千年寺:千年の歴史がある寺。ここでは、霊巌寺のことになる。
※水闊雲多客到稀:(見わたせば、太湖の)水が広がっており、(山深いので)雲が多く湧きだして(仙境の趣を漂わせて)いるので、参拝の人が来ることもまれである。 ・水闊:太湖の水が広がっている。 ・闊:〔くゎつ;kuo4●〕ひろい。見て限りがあるが、幅広であるさま。 ・雲多:(山深いので)雲が多く湧きだして(仙境の趣を漂わせており)。 ・客到:行客が来ること。 ・稀:まれである。=希。
※聞説春來更惆悵:聞くことには、春になれば、一層もの悲しい思いが増すということであり。 ・聞説:聞くことには。きくならく。 *伝聞を言い表す。「聞説」は、「春來更惆悵,百花深處一僧歸」までかかる。 ・春來:春になる。 ・更:一層。さらに。 ・惆悵:〔ちうちゃう;chou2chang4○●〕うらみなげくさま。失意のさま。うれえ悲しむさま。曹丕の『寡婦』に「霜露紛兮交下,木葉落兮淒淒。候鴈叫兮雲中,歸燕翩兮徘徊。妾心感兮惆悵,白日忽兮西頽。」とある。用例は婉約詞に多い。
※百花深處一僧歸:多くの花が咲き乱れているところを一人の僧侶が(霊巌寺に)帰って行く(のみということである)。 *花を愛でる人がたくさん来べきであるのにもかかわらず、僅かな僧侶以外の人影はない様をいう。 ・百花深處:多くの花が咲き乱れているところ。 ・一僧:一人の僧侶。 ・歸:(霊巌寺に)帰って行く。
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◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「稀歸」で、平水韻上平五微。次の平仄は、この作品のもの。
●○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
○●○○●○●,
●○○●●○○。(韻)
2004.12.12 |
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