大火已西流, 郊墟涼氣浮。 暑殘梧葉雨, 洗出一天秋。 ![]() |
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立秋の雨
大火(たいくゎ) 已(すで)に 西流し,
郊墟(かうきょ)に 涼氣 浮かぶ。
暑は 殘れども 梧葉の雨は,
洗ひ出す 一天の秋を。
◎ 私感註釈 *****************
※徳川光圀:江戸時代前期の水戸藩主。寛永五年(1628年)~元禄十三年(1700年)。初代頼房の三男で、二代目藩主となる。字は子竜。号は梅里など。藩制創業を継ぎ、『大日本史』の編纂、各制度の整備に努め、士風の高揚を図ったに努めた。名君の誉れ高く、後世、『水戸黄門漫遊記』がつくられた。
※立秋雨:立秋の雨。立秋の日に降った雨が、暑気を追い払ったことを詠う。 ・立秋:太陽暦の八月七日頃に当たり、この日から秋が始まる。二十四節気の一。
※大火已西流:夏の暑さは、すでに西の方へ流れていき。 ・大火:〔たいくゎ;da4huo3●●〕夏の暑さ。炎暑。また、木星の周期でいう「卯」。 ・已:とっくに。すでに。 ・西流:西の方へ流れていく。秋の方へ流れていく。「西」は「秋」。
※郊墟涼氣浮:田舎では、涼しい気配が浮かんでいる。 ・郊墟:〔かうきょ;jiao1xu1○○〕野や丘。田舎。 ・郊:〔かう;jiao1○〕町外れ。田舎。野原。 ・墟:〔きょ;xu1○〕大きなおか。もと、住居のあったところ。 ・涼氣:涼しい空気。涼しい気配。 ・浮:浮かぶ。
※暑殘梧葉雨:暑気が残っているが、アオギリの葉に(降りかかる)雨は。 ・暑殘:暑気が残っている。残暑。 ・梧葉:〔ごえふ;wu2ye4○●〕アオギリの葉。落葉するので、秋の象徴でもある。
※洗出一天秋:(アオギリの葉に降りかかる雨は、暑気を取り去って「秋」を残暑の中から)洗い出し、空一面の秋になった。 ・洗出:(梧葉の雨)が「秋」を残暑の中から洗い出した。 ・一天:空一面。満天。
◎ 構成について
韻式は「AAA」。韻脚は「流浮秋」で、平水韻下平十一尤。次の平仄はこの作品のもの。
●●●○○,(韻)
○○○●○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
平成17.10.16 10.17 |
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