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安石變法          

煕寧新法出苗,
元祐温公斷一刀。
朝議紛紛水滸亂,
新亭揮涙靖康朝。



煕寧 き ねいの新法  せいべうを いだすも,
元祐げんいうをんこう  一刀に 斷ず。
朝議てう ぎ  紛紛ふんぷんとして  水滸すゐ こ  亂れ,
新亭に 涙を ぬぐふ  靖康せいかうあした

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  北宋末の廟堂を詠うを以てす。

  王安石は宰相となり、財政改革として軍事費、官僚の余剰人員削減、格差問題の解決を目指して組織や制度の改革を始めた。これを新法と謂う。
  この急激な改革に反対したのが反対派・旧法派の司馬光。彼は、王安石に替わって宰相となり、即座に新法を廃止しする。
  しかし、双方の党派ともに指導者(王安石、司馬光)なき後、後継者に人材が無く、勢力争いだけの醜い党争に堕し、どちらかの派閥が勝利する毎に、法令も一新されるということが繰り返され、重大な政治的混乱を招来した。
  対外関係でも、宋は、異民族の遼や西夏、金との間で同盟や媾和条約を結んで、バランスをとって平和を保っていたが、党派が替わることに因って前の盟約を無視することともなり、相手国を怒らせた。これらの廟堂内の政治的混乱が、国を弱体化させ、国家間の信義を軽んずる結果となり、金軍の侵入をきたして靖康の変となって、北宋は滅亡した。


・安石: 王安石。新法を強行する。
・煕寧: 王安石の字。
・苗: 青苗法のこと。新法の一。
・元祐: 当時の北宋の年号。
・温公: 温国公。司馬光のこと。新法の反対派である旧法党の急先鋒。
・水滸: 『水滸伝』のモデルとなった宋江の乱をはじめとして、諸乱が誘発された。
・新亭: 建康(現・南京)にある労労亭のこと。嘗て、亡国の歎きを吐出していたところ。(西)晋が胡に滅ぼされた後、江南半壁に追いやられ、皇帝を拉致(永嘉の乱)されながらも、江南の地に拠って漢民族の国家を保持し続け、長江を南渡して(遁れてきた)人士たちは、)いつも休みの日になると、長江南岸の建康(=南京附近)の新亭(労労亭)に集まって、酒を酌み交わし、郷土中原を偲び、歎いていた処。周は、『風景(=風と陽光)は(故国)とは異なってはいないが、目にする川の姿、全てが新たで異なったものである』と言ったので、みんなは、見つめ合って、涙を流した。ひとり、王導だけは、形を改め正して、憤りを見せ『(我々は、)一緒になって王室のために力を尽くして(建設すべきであり)、祖国の故地・神州を恢復させるべきであり、何をめそめそと亡国の民のようになっているのか、この江南に新天地があるではないか!』と言ったので、みんなは彼に謝った。『晉書・列傳・王導』「晉國既建,以(王)爲丞相軍諮祭酒。桓彝(桓階の弟、桓温の父)初過江,見朝廷微弱,謂曰:「我以中州多故,來此欲求全活,而寡弱如此,將何以濟!」憂懼不樂。往見(王),極談世事,還,謂(周)曰:『向見管夷吾,無復憂矣。』過江人士,毎至暇日,相要出新亭飮宴。中坐而歎曰:『風景不殊,舉目有江河之異。」皆相視流涕。惟(王)愀然變色曰:「當共力王室,克復神州,何至作囚相對泣邪!』衆收涙而謝之。」。李白の『勞勞亭』「天下傷心處,勞勞送客亭。春風知別苦,不遣柳條。」 のみならず、この部分は、南宋の豪放詞には、常に出てくる部分である。民族の怨念がこもっている部分。辛棄疾の水龍吟「渡江天馬南來」 や、宋 劉克莊の『賀新カ』「北望~州路,試平章 這場公事,怎生分付? 記得太行山百萬,曾入宗爺駕馭。今把作握蛇騎虎。加去京東豪傑喜,想投戈、下拜真吾父。談笑裡,定齊魯。兩河蕭瑟惟狐兔,問當年 祖生去後,有人來否? 多少新亭揮泪客,誰夢中原塊土?算事業須由人做。」に詳しい。南宋末の汪元量に『題王導像』も「秦淮浪白蒋山,西望~州草木腥。江左夷吾甘半壁,只縁無涙灑新亭。」 とある。
・靖康: 北宋の年号。ここでは靖康之変のことをいう。侵攻した金軍のために、北宋の二帝が金国に拉致され、北宋は滅亡した。

平成十九年八月二十四日

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