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 これは井古先生の詩で、読み下しも井古先生になります。
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 偶謁有智子内親王墓

京洛嵯峨落柿傍、
廳標戚歴泛寒光。
無心鳥雀囀靈域、
有意茶梅彩柏牆。
夙學詩歌仰閨秀、
幼承宸旨了齋王。
嗚呼耐閲小墳墓、
才藻却高於彼蒼。



 

京洛嵯峨 落柿の傍(かたは)ら、
庁標戚歴 寒光に泛
(うか)ぶ。
無心の鳥雀は 霊域に囀り、
意有る茶梅は 柏牆を彩る。
夙に詩歌を学んで 閨秀と仰がれ、
幼く宸旨を承して 斎王を了す。
嗚呼閲するに耐へたり 小墳墓、
才藻は却って 彼蒼よりも高し。

      *********


・落柿=落柿舎。
・庁標=宮内庁の。
・宸旨=父、嵯峨天皇のおことば。
・斎王=賀茂神社に奉仕した未婚の皇女または女王。
・彼蒼=ここでは、あの大空の意。

※ 15,6年前落柿舎を尋ねた際に、その隣に内親王の墓があり、内親王の漢詩は以下の 「春日(しゅんじつ)山荘」しか知らないが、これが17歳の時の作と聞いて、早くからその卓越した才藻に驚嘆、尊敬していた。

 春日山荘           有智子内親王
寂寂幽荘山樹裏、     寂々たる幽荘山樹の裏、
仙輿一降一池塘。     仙輿一たび降る一池塘。
棲林弧鳥識春沢、     林に棲む弧鳥は春沢を識り、
隠澗寒花見日光。     澗(たに)に隠(かく)るる寒花日光を見る。
泉声近報初雷響、     泉声近く報じて初雷響き、
山色高晴暮雨行。     山色高く晴れて暮雨行(つらな)る。
従此更知恩顧渥、     此れより更に知る恩顧の渥(あつ)きを、
生涯何以答穹蒼。     生涯何を以って穹蒼(きゅうさう)に答へん。



2007.10.23




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