秋水蘆花一片明, 難同鷹隼共功名。 檣邊飽垂頭睡, 也似英雄髀肉生。 |
舟中獵犬 を見て感 有り
秋水 蘆花 一片 明 かなり,
鷹隼 と功名 を共にし難 し。
檣邊 に 飽 きて頭 を垂 れて睡 れば,
也 た似 たり 英雄髀肉 の生 ずるに。
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◎ 私感訳註:
※宋琬:清の文学者。明・萬暦四十二年(1614年)〜清・康煕十二年(1673年)。字は玉叔、号は茘裳・二郷亭主人。莱陽(現・山東省内)の人。順治四年(1647年)の進士。累進して吏部郎中に至ったが、讒言されて下獄。三年して冤罪が晴れて釈放されて帰郷した。康煕十一年(1672年)に四川按察使に起用された。燕台七子。詩詞の多くは、悽愴・沈痛である。
※舟中見猟犬有感:舟の中で猟犬を見て、感じるところがあ(って詩を作)る。 ・猟犬:狩猟に使役するイヌ。=猟狗。 ・有感:感じるところがあって(詩を作る)。
※秋水芦花一片明:秋の清く澄みきった水やアシの花で、一面に(ぱっと華やかに咲き乱れているため、そこだけが)明るく感じられる。 ・秋水:秋の清く澄みきった水。 ・芦花:アシの花。 ・一片:一面に。広くちらばっているさま。 ・明:花がその一角にぱっと華やかに咲き乱れているため、そこだけが明るく感じられることをいう。北宋・歐陽脩の『別滁』「花光濃爛柳輕明,酌酒花前送我行。我亦且如常日醉,莫ヘ弦管作離聲。」と正反対になるが、その趣は似ており、北宋・蘇舜欽の『淮中晩泊犢頭』には「春陰垂野草,時有幽花一樹明。晩泊孤舟古祠下,滿川風雨看潮生。」とある。
※難同鷹隼共功名:(舟の上の猟犬は、現役で猟をして活躍している)タカやハヤブサと功名を共にすることは、難(むずか)しい。 ・難:むずかしい。 ・同:…と。介詞。 ・鷹隼:〔ようじゅん;yin1sun3○●〕タカとハヤブサ。 ・功名:てがら。 ・同…共功名:…と功名を共にする。
※檣辺飽飯垂頭睡:(猟犬が)マストのそばで、腹一杯に食べて、頭を垂れて眠っている(姿は)。 ・檣辺:帆柱。マスト。檣=艢。 ・飽飯:〔bao3fan4●●〕充分に食べる。たらふく食べる。飽食する。「飽」:満腹する。腹がいっぱいになる。 ・垂頭:〔chui2tou2○○〕うなだれる。元気のないさまでもある。「垂頭喪氣」。
※也似英雄髀肉生:まるで、英雄が「髀肉(ひにく)の嘆(たん)」を託 (かこ)つかのようである。(まるで、英雄が戦場で活躍する場が無くなり、馬に乗らなくなったため、内ももに肉が附いたことの嘆きのようである)。 ・也似:〔ye3shi4●●〕まるで…のように。 ・髀肉:〔ひにく;bi4rou4●●〕ももの肉。内股の肉。「髀肉(ひにく)の嘆(たん)」のことを謂う。功名をたてる機会に恵まれないことの嘆き。蜀・劉備が久しく(無事平穏な日が続いたため、戦場で)馬に乗らなかったため、内ももの肉が増したと嘆じたこと。『三国志・蜀書』の註に基づく。『三國志・卷三十二 蜀書・先主傳第二(八七六頁 中華書局版230ページ)(の南朝宋・裴松の注引)に「『九州春秋』曰:「備住荊州數年,嘗於表坐起至廁,見髀裏肉生,慨然流涕。還坐,表怪問備,備曰:『吾常身不離鞍,髀肉皆消。今不復騎,髀裏肉生。日月若馳,老將至矣,而功業不建,是以悲耳。』」とある。
◎ 構成について
2016.1.18 1.19 |
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