Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye


      



松前城下作
              長尾秋水 

海城寒柝月生潮,
波際連檣影動搖。
從此五千三百里,
北辰直下建銅標。





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松前城下の作

海城の寒柝かんたく  月 うしほを生じ,
波際の連檣れんしゃう  影 動搖す。
これより 五千三百里,
北辰 直下に  銅標をてん。


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◎ 私感註釈:

※長尾秋水:江戸時代後期の漢詩人。名は景翰。字は文卿。通称は直次郎。秋水はその号。別号に(臥牛)山樵など。越後村上の人。ロシアが我が国の北辺を脅かし始めた文政二年(1819年)、蝦夷地の松前に赴き、情況を悉に観察した。爾後、諸国をめぐって北方防備の急を説く。安永八年(1779年)〜文久三年(1863年)。

※松前城下作:『松前遊記二十首之一』ロシアが屡々我が国の北辺を脅かしていた文政二年(1819年)、蝦夷地の松前に赴き、情況を悉に観察した時の作。 ・松前城:北海道の松前町にあった松前氏の居城。後に北方警備・蝦夷地警備の重要拠点となった。

※海城寒柝月生潮:海辺にあるここの城下(=松前城下)では、寒々と響く拍子木(ひょうしぎ)の音に、月が昇ってくるのとともに汐(しお)が満ちてきて。 ・海城:海辺にある城廓。ここでは、松前城を指す。 ・寒柝:〔かんたく;han2tuo4○●〕冬の夜に打ち鳴らす拍子木(ひょうしぎ)。寒々と響く拍子木(ひょうしぎ)の音。 ・柝:〔たく;tuo4●〕拍子木(ひょうしぎ)。日本・菅茶山の『備後三カ題詩櫻樹圖』に「騎馬撃賊下馬檄,三カ奇才世無敵。夜穿虎豹達行在,衛騎眠熟
柝聲。慨然白樹寫幽憤,行雲不動天亦忿。中興誰旌首事功,一門猶懷貫日忠。金輿再南乾坤變,五字櫻花千古恨。」とある。  ・月生潮:月が昇ってくるのとともに汐(しお)が満ちてくる。潮の干満は、月の動き(位置)と関係があることを経験的に知り、それを詠った。唐・張若虚の『春江花月夜』に「春江潮水連海平,海上明月潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。鴻雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜鞨K夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」とある。

※波際連檣影動搖:波打ちぎわの(船)が帆柱をつらねて揺れ動いている。 ・波際:波打ちぎわ。 ・連檣:〔れんしゃう;lian2qiang2○○〕帆柱をつらねる。同時代人の藤田東湖に『八月十八日夜夢攻諳厄利亞』「絶海
連檣十萬兵,雄心落落壓胡城。三更夢覺幽窗下,唯有秋聲似雨聲。」がある。詩の雰囲気はお互いに似通っている。 ・動搖:揺れ動く。

※從此五千三百里:ここ(松前)より五千三百里の距離にあるという。 ・從此:ここより…。 ・五千三百里:松前から北極点までの距離を謂う。GoogleMapsの「地図から距離、方角方位、面積を得る」でのページで、松前(あたり)−北極点(あたり)までの距離は、4,968,950メートルとなった。約5000キロメートルである。当時、清では1里=576メートルなので、ここでの「五千三百里」とは「5300(清制)里」と見れば、つじつまが合う。また、この数値が「厖大な値」を表現するだけとすれば、ここで使える数字は次のようになる: 先ず、この「從此…………里」句の平仄は、本来「●●○○○●●」とすべきところ。「從此」は「○●」、「里」は●。つまり「○●…………●」で「
○●●○○●」赤字部分は変更できない。また、○●○●」の青字部分も「千」か「三」としなければいけない。また、第五字めを○とするのがベストで、ここを「千」か「三」とする。もしも第五字目が●「一」「二」「四」「五」「六」「七」「八」「「九」「十」「百」にするのならば第三字目を○・「千」か「三」としなければならない。これらから「從此五千三百里」以外では、「從此一千三百里」「從此二千三百里」「從此四千三百里」「從此六千三百里」「從此七千三百里」「從此八千三百里」「從此九千三百里」(また、「從此三千一百里」「從此三千二百里」「從此三千四百里」「從此三千五百里」「從此三千六百里」「從此三千七百里」「從此三千八百里」「從此三千九百里」)などが考えられる。但し、後者・括弧で括った方の表現は「…………●●●」となるので、あまり好ましくない。好ましいのは、「從此一千三百里」「從此二千三百里」「從此四千三百里」「從此五千三百里」「從此六千三百里」「從此七千三百里」「從此八千三百里」「從此九千三百里」。このように平仄から表現できる数値は限られてくる。

※北辰直下建銅標:北極星の真下(の北極点)に、(我が国の北方領土の北限の境界を示す)銅製の標識をうちたて(ねばならない)。 ・北辰:北極星。北天の星辰。 ・銅標:国境を示す銅製の標識。南宋・張元幹の『賀新カ』送胡邦衡待制赴新州に「夢繞~州路。悵秋風、連營畫角,故宮離黍。底事崑崙傾
砥柱,九地黄流亂注。聚萬落、千村狐兔。天意從來高難問,況人情、老易悲難訴。更南浦,送君去。   涼生岸柳催殘暑。耿斜河、疏星淡月,斷雲微度。萬里江山知何處,囘首對牀夜語。雁不到、書成誰與?目盡天懷今古,肯兒曹、恩怨相爾汝。舉大白,聽、金縷。」とあり、清・黄遵憲の『度遼将軍歌』に「聞鷄夜半投袂起,檄告東人我來矣。此行領取萬戸侯,豈謂區區不余畀。將軍慷慨來度遼,揮鞭躍馬誇人豪。平時蒐集得漢印,今作將印懸在腰。將軍嚮者曾乘傳,高下句驪蹤迹遍。銅柱銘功白馬盟,鄰國傳聞猶膽顫。自從弭節駐鷄林,所部精兵皆百煉。人言骨相應封侯,恨不遇時逢一戰。雄關巍峨高插天,雪花如掌春風顛。歳朝大會召ゥ將,銅鑪銀燭圍紅氈。酒酣舉白再行酒,拔刀親割生彘肩。自言平生習鎗法,煉目煉臂十五年。目光紫電閃不動,袒臂示客如鐵堅。淮河將帥巾幗耳,蕭娘呂姥殊可憐。看余上馬快殺賊,左盤右辟誰當前。鴨鵠V江碧蹄,坐令萬里銷烽烟。坐中黄曾大手筆,爲我勒碑銘燕然。么麼鼠子乃敢爾,是何鷄狗何蟲豸。會逢天幸遽貪功,它它籍籍來赴死。能降免死跪此牌,敢抗顏行聊一試。待彼三戰三北餘,試我七縱七擒計。兩軍相接戰甫交,紛紛鳥散空營逃。棄冠脱劍無人惜,只幸腰間印未失。將軍終是察吏才,湘中一官復歸來。八千子弟半摧折,白衣迎拜悲風哀。幕僚歩卒皆雲散,將軍歸來猶善。平章古玉圖鼎鐘,搜篋價猶値千萬。聞道銅山東向傾,願以區區當芹獻,藉充歳幣少補償,毀家報國臣所願。燕雲北望憂憤多,時出漢印三摩挱。忽憶遼東浪死歌,印兮印兮奈爾何!」とある。

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◎ 構成について

韻式は、「AAAA」。韻脚は「潮搖標」で、平水韻下平二蕭。この作品の平仄は、次の通り。

●○○●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
○●●○○●●,
●○●●●○○。(韻)
平成22.10.3
      10.4
      10.5



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