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江都客裡雜詩 | ||
賴杏坪 | ||
八百八街宵月明, 秋風處處賣蟲聲。 貴人不解籠閒語, 總是西郊風露情。 |
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八百八街宵月 明らかに,
秋風 處處 蟲聲を賣る。
貴人は 解せず籠閒 の語,
總 て是れ 西郊風露 の情。
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◎ 私感註釈
※頼杏坪:寶暦六年(1756年)~天保五年(1834年)。江戸中期の儒者。漢詩人。三次町奉行を務める。名は惟柔。字は千祺、号して春草。杏坪は、後期の号。安芸の竹原の人。亨翁の四男(通称:萬四郎)として生まれた。頼山陽の伯父に該る。
※江都客裡雑詩:江戸に旅している間に、興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩。 ・江都:江戸の異称。 ・客裡:旅にあるあいだ。 ・雑詩:興の趨(おもむ)くままに作った、型にとらわれない詩。
※八百八街宵月明:江戸中の町々に、宵(よい)の月が明るい(時刻)。 ・八百八街:江戸中の町々の称。江戸の市中に町が多数あることを謂う。八百八町(はっぴゃくやちょう)。田中金峰『大阪繁昌詩・望岳酒』に「木罌幾萬浪華津,纍纍如岡堆水濵。此是伊丹第一酒,將輸八百八街人。」とある。 ・宵月:宵に出ている月の意で、秋の夕月を指す。「よひづき」。
※秋風処処売虫声:秋風に、ほうぼうで(虫屋で)売っている(鈴虫や松虫といった、鳴く)虫の声(がする)。 ・処処:ところどころ。ほうぼう。いたるところ。盛唐・孟浩然の『春曉』に「春眠不覺曉,處處聞啼鳥。夜來風雨聲,花落知多少。」とある。 ・売虫声:(虫屋で)売っている(鈴虫や松虫といった、鳴く)虫の声の意。
※貴人不解籠間語:身分の高い人は、(虫)かごの中の(虫の)鳴き声が…(例外なく、西の方の郊外の風と露(つゆ)の思い=秋の実際の姿)(…であること)を理解しない。 *「貴人不解籠間語,総是西郊風露情」で、「【貴人不解】【籠間語=西郊風露情】」で、「西郊風露情」とは「実際の秋の姿」。 ・貴人:身分の高い人。 ・不解:理解しない。盛唐・李白の『月下獨酌』に「花間一壼酒,獨酌無相親。舉杯邀明月,對影成三人。月既不解飮,影徒隨我身。暫伴月將影,行樂須及春。我歌月徘徊,我舞影零亂。醒時同交歡,醉後各分散。永結無情遊,相期邈雲漢。」とある。 ・籠間語:(虫)かごの中の(虫の)鳴き声を謂う。 ・籠:〔ろう;long2○〕:〔ろう;long3●〕
※総是西郊風露情:例外なく、西の方の郊外の風と露(つゆ)の思い(=実際の秋の姿)である(ことを貴人は理解しない)。 ・総是:〔zong3shi4●●〕全部。いつも。例外なく。とにかく。盛唐・王昌齡の『從軍行』「琵琶起舞換新聲,總是關山離別情。繚亂邊愁聽不盡,高高秋月照長城。」とあり、盛唐・李白の『子夜呉歌』に「長安一片月,萬戸擣衣聲。秋風吹不盡,總是玉關情。何日平胡虜,良人罷遠征。」
とある。 ・風露:風と露(つゆ)。 ・情:思い。感情。 「西郊風露情」で、「実際の秋の姿」。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「明声情」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
●●●○○●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○●●○○●,
●●○○○●○。(韻)
平成28.7.4 7.5 7.6 |
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