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聞青森聯隊慘事
大正天皇 

衝寒踊躍試行軍,
雪滿山中路不分。
凍死休言是徒事,
比他戰陣立功勳。




wikipediaより
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青森聯隊の慘事を聞きて

寒を()き 踊躍(ようやく)  行軍を(こころ)み,
雪は 山中に滿ちて  路は ()かたず。
凍死 ()ふを()めよ  ()徒事(とじ)なりと,
他の戰陣に()して  功勳(こうくん)を立てたり。

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◎ 私感註釈

※大正天皇:第百二十三代天皇。明治十二年(1879年)〜大正十五年(1926年)。幼称は明宮(はるのみや)。諱は嘉仁(よしひと)。第百二十二代天皇・明治天皇の子で、第百二十四代天皇・昭和天皇の父。

※聞青森聯隊惨事:青森聯隊の惨事(=八甲田雪中行軍遭難事件)を耳にして。 *八甲田山での悲劇は、決して無駄死にではなく、貴いものだった、と犠牲者を悼んだ詩。 ・聞:天聴に達する。…を耳にする。…が聞こえる。 ・青森聯隊:青森所在の歩兵第五聯隊のこと。大日本帝国陸軍の聯隊のひとつ。 ・惨事:むごたらしい出来事。ここでは、明治三十五年(1902年)一月の八甲田雪中行軍遭難事件を謂う。日本陸軍は対ロシア戦を想定し、雪中行軍の訓練をし、陸軍第八師団の歩兵第五聯隊が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう途中で遭難した事件

※衝寒踊躍試行軍:寒気を突き破って喜び勇んで、軍隊が長距離を行進することを試(こころ)み(たが)。 ・衝寒:寒気を突き破って、の意。 ・踊躍:〔ようやく;yong3yue4●●〕おどり上がる。喜び勇む。 ・試:こころみる。 ・行軍:軍隊が隊列を組んで長距離を行進する。

※雪満山中路不分:雪は山中に満ちて、道(とそうでないところと)の区別がつかない。 ・不分:区別がない。わかたず。

※凍死休言是徒事:凍死を無意味なことと言うのを休(や)めよ。 ・休言:言うな。言うを休(や)めよ。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。【〔A是B〕:AはBである。】「凍死
徒事」(凍死無意味である。) ・徒事:無駄なこと。無意味なこと。つまらないこと。無益なこと。

※比他戦陣立功勲:(凍死は)ほかの戦場でよりも、てがらを立てているではないか。 ・比:…よりも。比べて。比較して。【〔(A)比B…〕:(Aは)Bよりも…だ。】 ・他:ほか(の)。 ・戦陣:戦いのための陣営。また、戦いの場所。=戦場。ここで「戦陣」として、「戦場」としないのは、「戦陣」は
●●で、句中の●●とすべきところで使い、「戦場」は●○で、句中の○○とすべきところで使う。この句は「○○●●●○○」とするところ。この反対の例に、乃木希典の『金州城外作』に「山川草木轉荒涼,十里風腥新戦場●○)。征馬不前人不語,金州城外立斜陽。」とある。 ・功勲:てがら。なしとげられた事業。業績。 *通常は「勲功」の方をよく見るが、ここでは「勲」を韻脚(平水韻上平十二文(軍・分・))とするため、「功勲」の方を使った。



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◎ 構成について

韻式は、「AAA」。韻脚は「軍分勳」で、平水韻上平十二文。この作品の平仄は、次の通り。

○○●●●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○●●●,
●○●●●○○。(韻)
平成28.9.18
      9.19



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