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將徙小梅過吾妻橋畔有感 |
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藤田東湖 | ||
靑年此地嘗遨遊, 花下銀鞍月下舟。 白首孤囚何所見, 滿川風雨伴覊愁。 |
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『東湖詩鈔』六葉 | 『謫居詩存』六葉 |
青年此 の地嘗 て遨遊 す,
花下 の銀鞍 月下 の舟 。
白首 の孤囚 何 の見る所ぞ,
滿川 の風雨 覊愁 に伴 ふ。
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◎ 私感註釈
※藤田東湖:文化三年(1806年)~安政二年(1855年)。幕末の水戸学派の儒者。尊皇攘夷思想の主導者の一。その思想は彼の代表作である『和文天祥正氣歌・有序』「天地正大氣,粹然鍾神州。秀爲不二嶽,巍巍聳千秋。注爲大瀛水,洋洋環八洲。發爲萬朶櫻,衆芳難與儔。…」によく顕れている。日本では、文天祥の『正氣歌』「天地有正氣,雜然賦流形。下則爲河嶽,上則爲日星。於人曰浩然,沛乎塞蒼冥。皇路當淸夷,含和吐明庭。時窮節乃見,一一垂丹靑。… 」
を超していよう。
※將徙小梅過吾妻橋畔有感:(水戸藩下屋敷である小梅邸に引っ越ししようとして、吾妻橋を渡ったところ、感じることがあって(この詩を作った)。 ・將:まさに…す。 ・徙:〔し;xi3●〕引っ越す。移る。移す。 ・小梅:水戸藩下屋敷 小梅邸のあったところ。現・隅田公園内。 ・吾妻橋:水戸藩下屋敷小梅邸の西南400メートルのところにある隅田川に架かる橋。 ・過橋:橋を渡る。
※青年此地嘗遨遊:若い頃、ここで遊んだことがある。 ・嘗:…したことがある。 ・遨遊:〔がういう;ao2you2○○〕あそぶ。漫遊する。「遨遊」した内容は次の句「『花下銀鞍』や『月下舟』」。
※花下銀鞍月下舟:花の咲いているところに銀色に耀く立派な鞍(くら)(の乗馬姿になったり)、月の光のもとでの舟遊び…と。 ・花下:花の咲いているところ。 ・銀鞍:〔ぎんあん;yin2an1○○〕銀色に耀くくら。盛唐・李白の『少年行』に「五陵年少金市東,銀鞍白馬度春風。落花踏盡遊何處,笑入胡姫酒肆中。」とある。
※白首孤囚何所見:年老いたひとりだけの囚われ人(=作者)は何を見たのか(といえば)。 ・白首:年老いたこと。白髪頭。老人のこと。 ・孤囚:他と離れてひとりだけの囚われ人の意。 ・何所見:何を見たのか。行為「見ること」の帰着するところ。
※満川風雨伴羈愁:(それは、)川一面の風雨で、旅愁にともなって(やってきたものだ)。 ・満川:ここでは、川一面の意。全川。一川。また、平野一面に、の意。辺り一面、の意。 ・川(せん):はら。原(はら)。広野。「川(せん)」は詩語で「平川(へいせん)」((川のある)平野)、「川原(せんげん)」(平原。広野。広々として人影のないところ)の意。詩詞では川(かわ)の有無に関わらず、「一川(いっせん)」「川原(せんげん)」と表現することが多い。北宋・蘇舜欽の『淮中晩泊犢頭』に「春陰垂野草靑靑,時有幽花一樹明。晩泊孤舟古祠下,滿川風雨看潮生。」とある。 ・伴:ともなう。 ・覊愁:〔きしう;ji1chou2○○〕旅のうれい。旅愁。客愁。「覊」=「羈」。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「遊舟愁」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●○○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
平成29.5.29 |
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