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梅花
 

菅原道眞
宣風坊北新栽處,
仁壽殿西内宴時。
人是同人梅異樹,
知花獨笑我多悲。




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梅花 
宣風坊(せんぷうばう)北  新たに()えし處,
仁壽殿(じじゅうでん)西  内宴の時。
人は()れ 同じき人なるも  梅は異なる樹なり,
知んぬ  花 (ひと)()くきて  我れ (まさ)に悲し。

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◎ 私感註釈

※菅原道真:平安初期の公卿。学者。承和十二年(845年)〜 延喜三年(903年)。本名は三。幼名阿呼。菅公と称された。若年で詩歌を作り始め、神童の誉れ高く、やがて文章博士にまでなる。延喜元年(901年)、藤原時平の中傷によって大宰権帥に左遷。その地で亡くなる。後に、学問の神・天満天神として崇められる。遣唐使の廃止や、国風文化の振興に努める。この詩作の後、やがて世を去る。

※梅花:梅の花。作者が大宰府に左遷された時の和歌「
東風(こち)吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」同様、梅の花に心情を託した詩。

※宣風坊北新栽処:(京都時代の思い出の梅として:)宣風坊の北寄り(の自邸に)新たに植えたところ(の梅に)。 ・宣風坊:平安京の作者・菅原道真の自宅があった所。 ・栽:苗木を植える。

※仁寿殿西内宴時:(京都時代、内裏の)仁寿殿の西寄りでの内宴(のうたげ)の時(に見かけた梅)。 ・仁寿殿:〔じじゅうでん〕。内裏中央の殿舎の一。内宴などを行う殿舎。紫宸殿の北、承香殿の南で、清涼殿の東側。初めは天皇の常の御座所であったが、後にそれが清涼殿に移ってからは、内宴などを行う殿舎となった。 ・内宴:宮中で催す身内の宴。

※人是同人梅異樹:人(=作者・菅原道真)は、同一人であるが、梅は(それぞれ)違う梅の木である。 *「人是同人梅異樹」の句は句中の対「
・(是) + 」で構成されている。読み下す場合は、原詩の構成に合わせた読み方をするのがベスト。 ・人:ひと。ここでは、作者・菅原道真のことになる。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。

※知花独笑我多悲:花はひとりで(も)咲いて(誇って)いるが、わたしには悲しいことが多いのをみとめる。 *この句は「
知 ) + 〕」といった句中の対で構成されている。前句同様、読み下す場合は、原詩の構成に合わせた読み方をするのがベスト。 ・知:しる。わきまえる。さとる。みとめる。 ・独:ひとり。 ・笑:(花が)咲く。わらう。 ・多:おおい。たくさん。おおくする。まさに。

               ***********





◎ 構成について

韻式は、「AA」。韻脚は「時悲」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。

○○○●○●●,
○●●○●●○。(韻)
○●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
平成30.1.5
      1.6
      1.7



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