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牡丹 | ||
鐵舟德濟 |
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元是洛陽城裡花, 可怜綻向野僧家。 空庭不見猫兒睡, 蝶戲蜂遊山日斜。 |
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元 是 れ洛陽 城裡 の花なるに,
怜 む可 し野僧 の家に綻 ぶ。
空庭 に猫兒 の睡 れるを 見ざれども,
蝶 戲 れ蜂 遊びて山日 斜なり。
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◎ 私感註釈
※鉄舟徳済:室町前期の臨済宗の僧。下野の生まれ。号は鉄舟。入元して諸山を歴訪し、順宗帝から円通大師の号を受ける。帰国後、天龍寺の夢窓疎石の法を嗣ぎ、京都万寿寺に住する。晩年、西山龍光院に退いた。
※牡丹:ボタン。北宋・周敦頤の『愛蓮説』に「世人盛愛牡丹……予謂…牡丹,花之富貴者也」(『北宋散文』33ページ 上海書店出版社2000年上海)とある。洛陽の都は、この花で有名という。欧陽脩の『洛陽牡丹記』について、国立国会図書館デジタルコレクションに詳しい。
※元是洛陽城裡花:もともとは、洛陽の都の花であった(が)。 ・元:もともと。 ・元是:もともと…である。 ・是:…は…である。これ…なり。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・洛陽:〔らくやう;Luo4yang2●○〕(副)都。唐代、東都として繁栄した副都。現・河南省。 ・城:街。都市。 ・洛陽城:洛陽の都。唐・劉希夷(劉廷芝)の『白頭吟(代悲白頭翁)』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,淸歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」がある。
※可怜綻向野僧家:かわいそうに、田舎の僧侶(=作者)の家に咲いた。 ・可怜:〔かれん;ke3lian2●○〕かわいそうに。あわれむべし。 ・怜:〔れん;lian2○〕あわれむ。=憐。また、〔れい;ling2○〕さとい。かしこい。ここは、前者「あわれむ」の意。 ・綻:〔たん;zhan4●〕(花が)ほころびる。 ・向:…に。…において。=於。作者がここで「向」字を使い、「於」字を使わなかったのは、この承句の平仄配列は「○○●●●○○」とすべきところで、第四字めは●とすべきところのため。「向」は●で、「於」は○のために因る。ここでは、「向かって」の意はない。 ・野僧:いなかの僧。また、僧が自分のことを謙遜していう。
※空庭不見猫児睡:何もない庭には、ネコの眠っている(姿が)見えなくなっていた。 ・空庭:何もない庭。 ・不見:(前はいたのに)見えない。(前はあったのに)なくなっている。いなくなる。 ・猫児:ネコ。 *「ネコの子」の意は無い。「-児」は小さなもの、可愛いものに添える接尾語で、「こども」の意は無い。日本語に訳す時は、これに対応する特段の表現は無さそうだ。
※蝶戯蜂遊山日斜:(その代わりに)蝶は戯れ、蜂は遊び、山の日は(西に)傾いている。【〔蝶+戯〕+〔蜂+遊〕+〔山日+斜〕】と、結句の構成が【〔主語+述語〕+〔主語+述語〕+〔主語+述語〕】といった明瞭な型をとっている。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「花家斜」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○●●○○●○,(韻)
●○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
●●○○○●○。(韻)
令和2.9.20 9.21 9.22 |
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