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私感註釈
※菩薩蛮:詞牌の一。(子夜歌ともいう)四十四字(双調) 換韻。韻式は「aaBB ccDD」。下欄の『◎構成について』を参照 。
※大柏地:地名。江西省の瑞金市の真北30キロメートルのところに大柏地郷がある。この詞が作られた四年前(一九二九年)の一月、毛沢東と朱徳は、紅軍を率いて井岡山から贛南(=江西省南部)に向かって進軍した。二月十日の春節から翌十一日、大柏地で追撃してきた国民党政府軍を殲滅し、捕虜八百余人を得、大量の武器を鹵獲した。この戦闘は毛沢東と朱徳が紅軍部隊を率いて井岡山を離れた後の最初の勝ち戦だった。この詞は、一九三三年に再び大柏地を通った時の作。
※赤橙黄緑青藍紫:赤(あか)、橙(だいだい)、黄(き)、緑(みどり)、青(あを)・藍(あゐ)、紫(むらさき)(=せきたうわうりょくせいらんし)の(虹の七色)。
*虹の七色。
※誰持彩練当空舞:一体誰が、色とりどりの布テープを持って、空中で舞う役を担(にな)っているのだろうか。 ・彩練:〔さいれん;cai3lian4●●〕(装飾・舞踊などに用いられる)絹で作った帯状の五色の布。ここでは、虹(にじ)を喩えて謂う。 ・当:担当する。受け持つ。担う。従事する。あたる。 ・空舞:空中で舞う意。
※雨後復斜陽:雨がやんだ後、またふたたび夕陽が射してきて。 *晩唐~・温庭筠の『菩薩蠻』に「南園滿地堆輕絮,愁聞一霎清明雨。雨後却斜陽,杏花零落香。 無言勻睡臉,枕上屏山掩。時節欲黃昏,無憀獨倚門。」とある。 ・雨後:雨がやむ。 ・復:また。ふたたび。 ・斜陽:夕陽が射す。
※関山陣陣蒼:大柏地をとりまく山々は、切れ切れになりながら深緑色が続いている。 ・関山:山名で、大柏地西南3、4キロメートルのところにある山。ここでは大柏地附近の山々を謂う。また、普通名詞として、ふるさとの四方をとりまく山。転じて、故郷。また関所となるべき要害の山。盛唐・王昌齡の『從軍行』に「琵琶起舞換新聲,總是關山離別情。繚亂邊愁聽不盡,高高秋月照長城。」 とあり、盛唐・高適の『塞上聞吹笛』に「雪淨胡天牧馬還,月明羌笛戍樓閒。借問梅花何處落,風吹一夜滿關山。」 とある。 ・陣陣:〔ぢんぢん;zhen4zhen4●●〕切れ切れに続くさま。現代語では、ひとしきり、の意で「一陣一陣」「一陣陣」と同じとするが…如何?
北宋・王安石の『夜直』に「金爐香盡漏聲殘,翦翦輕風陣陣寒。春色惱人眠不得,月移花影上欄干。」 とある。この用例も、切れ切れに続くさまの意。 ・蒼:深緑色(の)。青々としている。
※当年鏖戦急:あの頃は、激しい戦闘で、せっぱつまっており。 ・当年:〔たうねん;dang1nian2○○〕当時。往年。あの頃。蛇足になるが、〔たうねん;dang4nian2●○〕と読めば、その年。同じ年(の内)、の意となり、ここでは適切ではない。 ・鏖戦:〔あうせんao2zhan4○●〕全力を尽くして戦い、敵を大勢殺す。激しい戦い。苦戦。=鏖鬪。 ・急:激しい。差し迫る。せっぱつまる。
※弾洞前村壁:弾丸が、前の方の村の壁を貫通している。 ・弾:〔だん(たん);dan4●〕たま。弾丸。蛇足になるが、〔だん(たん);tan2○〕と読めば:はじく。ひく、の意となる。 ・洞:貫通する。つらぬく。動詞。
※装点此関山:(弾痕が)ここの山々を飾り立てている(が)。 ・装点:飾り附ける。装飾をあしらう。弾痕が「飾り」、ということ。
※今朝更好看:(弾痕の残る風景は、雨上がりでもあって)今日は、一段と美しい。 ・今朝:今日。けさ。「今朝」(○○)と「今日」(○●)について:「今朝」は詩詞で○○とすべきところで使い、「今日」は●●とすべきところで使う。この句「今朝更好看」は、「 ○○●●」とすべきところで、「今朝」とするところ。 ・更:一層。さらに。 ・好看:美しい。きれいである。
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◎ 構成について:
◎ 菩薩蛮 (子夜歌ともいう)四十四字(双調) 換韻。韻式は「aaBB ccDD」。つまり、「a仄韻a仄韻・B平韻B平韻・c仄韻c仄韻・D平韻D平韻」と換韻する。一番目のa仄韻と三番目のc仄韻は別の韻目にする。また二番目Bと四番目Dの平韻も異なった韻目にする。aa同士は同じ韻目。同様にBBも同一韻目。以下同様。              
○ ●○○●。(a仄韻)
○ ●○○●。(a仄韻)
●●○○。(B平韻)
○ ●○,(B平韻)
○○●●。(c仄韻)
● ○●,(c仄韻)
●●○○,(D平韻)
○ ●○。(D平韻)
2015.9.13
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