![]() |
![]() |
|
![]() |
柳葉鳴蜩綠暗, 荷花落日紅酣。 三十六陂流水, 白頭想見江南。 |
西太一宮 の壁に題す
柳葉 鳴蜩 綠 暗く,
荷花 落日 紅 酣 なり。
三十六 陂 の流水 ,
白頭 想見 す 江南を。
******************
◎ 私感訳註:
※王安石:北宋の政治家、改革者。文学者。1021年(天禧五年)~1086年(元祐元年)。字は介甫。号は半山。撫州臨川(現・江西省臨川)の人。神宗のとき宰相となり、変法(制度改革)を倡え強行したが、司馬光らの反対に遭い、やがて失脚して引退する。散文に優れる。唐宋八大家の一人。
※題西太一宮壁:西の太一宮の壁に詩を書きつける。 *盛夏を過ぎた情景を詠った詩。政治的な含意があると見ての解釈もした。なお、六言詩には魏・曹丕の『寡婦』「霜露紛兮交下,木葉落兮淒淒。候鴈叫兮雲中,歸燕翩兮徘徊。妾心感兮惆悵,白日忽兮西頽。守長夜兮思君,魂一夕兮九乖。悵延佇兮仰視,星月隨兮天廻。徒引領兮入房,竊自憐兮孤栖。願從君兮終沒,愁何可兮久懷。」や南唐後主・李煜の『開元樂』「心事數莖白髮,生涯一片靑山。空林有雪相待,古路無人獨還。」
や元・薩都剌の『題畫』「綠樹陰藏野寺,白雲影落溪船。遮卻靑山一半,只疑僧舍茶煙。」
や現代・毛沢東の『六言詩 給彭德懷同志』一九三五年十月「山高路遠坑深,大軍縱橫馳奔。誰敢橫刀立馬?惟我彭大將軍!」
等がある。 ・題…壁:…の壁に詩を書きつける。 ・西太一宮:西の太一宮のこと。太一宮は天の最高神である太一神を祭る宮殿で、東・西・中の三宮が当時、開封にあった。
※柳葉鳴蜩緑暗:ヤナギの葉の所でセミが鳴き、緑の葉が色濃く繁っている。/(王安石の新法に対して)騒がしい批判の声があがっており、鬱陶しい。或いは、人民が暴君を恨んで嘆き騒ぐ暗い時代だ。 ・鳴蜩:セミの一種。ヒグラシ。秋蝉(しゅうせん)。 ・蜩:〔てう;tiao2○〕セミ。ヒグラシ。なお、「如蜩如螗」は、人民が暴君を恨んで嘆き騒ぐさま。 ・緑暗:緑の葉が色濃く繁っている。
※荷花落日紅酣:ハスの花に、沈もうとする太陽、(どちらも)赤さがまっさかりである。/ハスの花に、沈もうとする太陽、(どちらも)赤さがまっさかりで、今がその絶頂期であるものの、やがて衰頽期(を迎えよう)。 ・荷花:ハスの花。 ・落日:沈もうとする太陽。入り日。 ・紅酣:赤さが(絶頂期を過ぎて)たけなわである意。
※三十六陂流水:三十六の陂(つつみ)の(汴)河(よ)。 ・三十六陂:〔さんじふろくひ;san1shi2liu4bei1〕三十六の陂(つつみ)。(詩詞では)多くの湖沼。また、地名で、現・江蘇省揚州市、江都県、河南省にある。なお、「陂」〔は、ひ;po1、pi2、bei1〕は多音字で、〔bei1〕は、堤(つつみ)、水辺、ため池、坂、山道。〔pi2〕は、 地名用字で「黄陂」など。〔po1〕は、でこぼこしているさま。「三十六」の附く名称・「三十六■」(「三十六計」「三十六般」「三十六峰」…)は極めて多い。実数(値)ではなかろう。蛇足になるが、孫悟空は「七十二般」の天。木蘭は「十二年、十二轉」
。孫光憲の『謁金門』に「留不得。留得也應無益。白紵春衫如雪色。揚州初去日。 輕別離,甘抛擲。江上滿帆風疾。卻羨彩鴛三十六,孤鸞還一隻。」
とあり、後世、日本・伊形靈雨は『過赤馬關』で「長風破浪一帆還,碧海遙回赤馬關。三十六灘行欲盡,天邊始見鎭西山。」
と使う。 ・流水:流れ行く川の水。「春水」ともする。「春水」では、前半の描写は夏景色なので、「春水」部分は実景ではなく、故郷の江南の河を想起しているとみるべきだろう。
※白頭想見江南:(これを見ると故郷の)江南を推し量って目に浮かべ(てしまう)。/故郷の江南を聯想し、そこで隠棲したいものだ。 ・白頭:白髪頭(の老人)。作者自身のことを指す。 ・想見:推し量って目に浮かべる。推察する。 ・江南:南部の、主として下流の長江以南を謂う。温暖で風光明媚な豊饒の地。ここでは、作者の故郷の撫州・臨川を指すか。
◎ 構成について
2013.8.20 8.21 |