楊万里過百家渡　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Yang Wanli

過百家渡
其二
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南宋・楊萬里

園花落盡路花開，
白白紅紅各自媒。
莫問早行奇絶處，
四方八面野香來。

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　　　　　　百家渡(ひゃっかと)を過(す)ぐ　

園花(ゑんくゎ)　落ち盡(つく)して　　路花( ろくゎ) 開き，
白白(はくはく) 紅紅(こうこう)　　各〻(おのおの) 自(みづか)ら媒(ばい)す。
問(と)ふこと莫(なか)れ　　早行(さうかう) 奇絶( きぜつ)の處を，
四方( しはう) 八面(はちめん)より　　野香( やかう) 來(き)たる。

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◎　私感訳註：

※楊万里：南宋の学者、詩人。字は廷秀。号して誠齋。吉水（現・江西省吉水県）の人。１１２７年（靖康二年／建炎元年）～１２０６年（開禧二年）。生涯、抗金に勤めた。南宋の「中興四大詩人」の一。

※過百家渡：百家渡を通って。 *作者が零陵の丞に任じられていた時の作。この詩は、其二。　・過：通る。よぎる。　・百家渡：零陵（＝現・湖南省永州市零陵区）郊外諸葛廟前にあった渡し場。（地図の柳下祠のすぐ南東。瀟水を渡る永州大道（３２２号公路）のところか）。

※園花落尽路花開：（栽培されていた）庭園の花は、すっかり散ってしまったが、（野生の）道ばたの花は咲いており。　・園花：花壇の花。庭園の花。　・落尽：すっかり散ってしまった。散りつくす。　・路花：道ばたの花。

※白白紅紅各自媒：（路傍の野生の花は）色とりどりで鮮やかで、（園芸品種のように手をかけなくても）それぞれが自分で媒介しあって（生長して）いる。　・白白紅紅：（花びらなどが）色とりどりで鮮やかなさま。　・各自：それぞれで。　・媒：〔ばい；mei2○〕（男女の）間を取りもつ。媒酌をする。媒介する。また、仲立。媒酌。

※莫問早行奇絶処：早朝から旅立つ（必要のある奥地の）絶勝を問い尋ねる必要はない。　・莫問：問いかけるな。「莫」は禁止・否定の辞。　・早行：夜明けに旅立つ。　・奇絶：すばらしい。

※四方八面野香来：（絶勝は、奥地にではなくて、こここそが）四方八方から野の飾り気のない（花の）香りが（漂い）来る（すばらしいところなのだ）。⇒（秘境の名勝へ行かなくても、今この場所が最高の場所だ）。　・四方八面：四方八方。　・野香：野の飾り気のない（花の）香り。