柳子祠前春已殘, 新晴特地却春寒。 疎籬不與花爲護, 只爲蛛絲作網竿。 |
百家渡に過ぎる
柳子祠 前 春已 に殘 れ,
新晴 特地 に 春寒を却 く。
疎籬 花の與 に護 りと爲 らずして,
只 だ蛛絲 の爲 に網竿 と作 る。
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◎ 私感訳註:
※楊万里:南宋の学者、詩人。字は廷秀。号して誠齋。吉水(現・江西省吉水県)の人。1127年(靖康二年/建炎元年)〜1206年(開禧二年)。生涯、抗金に勤めた。南宋の「中興四大詩人」の一。
※過百家渡:百家渡を通って。 *作者が零陵の丞に任じられていた時の作。この詩は、其三。 ・過:通る。よぎる。 ・百家渡:零陵(=現・湖南省永州市零陵区)郊外諸葛廟前にあった渡し場。(下掲地図の柳下祠のすぐ南。瀟水を渡る永州大道(322号公路)のところか)。
※柳子祠前春已残:柳宗元を祭った祠(ほこら)附近の春(の風情)は、すでに廃(すた)れてしまい。 ・柳子祠:柳宗元の祠(ほこら)。現代では地名(=現・湖南省永州市零陵区西南)。 ・柳宗元:中唐の詩人。773年(大暦八年)〜819年(元和十四年)。字は子厚。任地に因んで、柳河東、柳柳州とも呼ばれる。河東(現・山西省)の人。韓愈と並んで古文運動を提倡、その勃興に寄与した。政争に巻き込まれ、永州司馬、柳州司馬に左遷された。『江雪』「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」は、特に有名。 ・已:とっくに。すでに。 ・残:すたれる。形がくずれる。
※新晴特地却春寒:雨上がりの晴れ間は、特に、早春の冷え込みを退けてしまう。 ・新晴:雨がやんで晴れわたる。晴れあがったばかり。新霽。 ・特地:〔とくち;te4di4●●〕特に。ことさらに。特別に。わざわざ。もっぱら。副詞。 ・却:退ける。断る。退却する。後戻りする。また、動詞の後に置き、強調する:…し去る、…し捨てるの意。ここは、前者の意。 ・春寒:早春の冷え込み。春の寒い天気。
※疎籬不与花為護:まばらな垣は、花の護(まも)りとなることはなく。 ・疎籬:まばらな垣。 ・不与:…ために…することはない。否定詞は介詞の前に附き、「疎籬不与花為護」の句では「……不与……護」となる。なお、動詞の前に附いて「……与……不為護」(「疎籬与花不為護」(=疎らな籬は、花の(自立心を尊重する)ために護ってやらない))ともなる。ただし、その場合は意味が微妙に異なる。また、節奏(□□・□□+□□□といった区切れ)の上でも制約がある。ここでは、意味の上(でも節奏(=□□・□□+□□□/□□・□・□□・□□)上でも、「疎籬不与花為護」との表現しかない。南宋・楊萬里自身の『曉出淨慈寺送林子方』に「畢竟西湖六月中,風光不與四時同。接天蓮葉無窮碧,映日荷花別樣紅。」とある。 ・与:…ため(に)。後出・「只爲」の「爲」〔ゐ;wei4●:介詞〕と似た働きをする。 ・為護:まもりとなす、の意。「護」は名詞。 ・為:〔ゐ;wei2:○:動詞〕なす。する。(後出・「只爲」:の「爲」〔ゐ;wei4●:介詞〕とはことなる。)【与…為 …】(…のため、…する。)。
※只為蛛糸作網竿:(まばらな垣は、)ただ蜘蛛(くも)の巣を作るのための網(あみ)の竿(さお)となっているだけだ。 ・只為:ただ…のためだけ。ただ単に…のためだけ。 ・爲:〔ゐ;wei4●:介詞〕…ため。【為 …作…】(…のため、…する。)。 ・蛛糸:〔ちゅし;zhu1si1○○〕蜘蛛(くも)の吐く糸。蜘蛛(くも)の巣。 ・作:…となる。…となす。≒爲〔ゐ;wei2○〕。 ・網竿:網(あみ)の竿(さお)。
◎ 構成について
2014.3. 7 3. 8 3. 9 3.10 3.11 3.12 |