舟行呉江 | |
南宋・楊萬里 |
江湖便是老生涯,
佳處何妨且泊家。
自汲松江橋下水,
垂虹亭上試新茶。
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舟にて呉江 を行く
江湖 便 ち是 れ老生涯 ,
佳處 何ぞ妨 げん且 らく家に泊るを。
自 ら松江 橋下 の水 を汲み,
垂虹亭 上に 新茶を試 みん。
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◎ 私感註釈
※楊万里:南宋の学者、詩人。字は廷秀。号して誠齋。吉水(現・江西省吉水県)の人。靖康二年/建炎元年(1127年)〜開禧二年(1206年)。生涯、抗金に勤めた。南宋の「中興四大詩人」の一。
※舟行呉江:舟で呉江へ行く。 ・呉江:地名。呉江とは、蘇州の南20キロメートルのところにある太湖に近い都市の名。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)「」(59−60ページ)にある。また、昔の松江のことで、現在の呉淞江。『中国歴史地図集』第五冊(隋・唐・五代十国時期)「唐 江南東道」(55−56ページ)、第六冊 宋・遼・金時期「北宋 淮南東路 淮南西路」(22−23ページ)(中国地図出版社)に拠ると、太湖から呉江、呉県、蘇州を通って現・上海市へ東流する川。現在の呉松江に一致する。*『舟泊呉江』ともする。
※江湖便是老生涯:各地を(巡るのは、)すなわち、いつもながらの生活で。 ・江湖:国内の各地。世の中。世間。 ・便是:すなわち。すなわちこれ。 ・老生涯:いつもながらの生活。 ・老:むかしながらの。いつもながらの。 ・生涯:生活。職業。商売。また、一生の間。ここは、前者の意。
※佳処何妨且泊家:(景色の)よいところでは、(舟から上がって)、しばらく(陸(おか)の上)の家に泊まることもかまわない。(=どうして妨(さまた)げることがあろうか。) ・佳処:(景色の)よいところ。 ・何妨:かまわない。ひとつ…してみたらどうか。どうして妨(さまた)げることがあろうか。*反語の表現をつくる。 ・且:しばらく。しばし。短時間をいう。 ・家:いえ。ここでは、陸上のことをいう。作者は詩題の通り、「舟行…」と、舟で旅をしていた。
※自汲松江橋下水:自分で、松江(現・呉淞江)の橋の下の水を汲(く)んで。 ・松江:現在の呉淞江。「淞江」ともする。
※垂虹亭上試新茶:垂虹亭(すいこうてい)で、新茶を試(こころみ)てみる。 ・垂虹亭:〔すゐこうてい;chui1hong2ting2○○○○〕亭の名。宋代に造られた橋の上にある亭(あずまや)。江蘇省の呉江県(区?)にある。 ・試:こころみる。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「涯家茶」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●○○,(韻)
○●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○○●●○○。(韻)
2017.8.3完 10.9補 |
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