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過故人莊 | |
孟浩然 |
故人具鷄黍,
邀我至田家。
綠樹村邊合,
青山郭外斜。
開筵面場圃,
把酒話桑麻。
待到重陽日,
還來就菊花。
******
故人の莊に過ぎる
故人 鷄黍を 具へ,
我を邀へて 田家に 至らしむ。
綠樹 村邊に 合し,
青山 郭外に 斜めなり。
軒を開きて 場圃に 面し,
酒を把りて 桑麻を 話す。
重陽の日を 待ち到り,
還た來りて 菊花に 就かん。
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◎ 私感註釈
※孟浩然:盛唐の詩人。689年(嗣聖六年)~740年(開元二十八年)襄陽の人。官途に不遇で、郷里の鹿門山に隠れ棲んだ。山水詩に長じている。
※過故人莊:古い友人の村へ行く。似たイメージの作品に、東晉・陶潛の『歸園田居』五首其二「野外罕人事,窮巷寡輪鞅。白日掩荊扉,虚室絶塵想。時復墟曲中,披草共來往。相見無雜言,但道桑麻長。桑麻日已長,我土日已廣。常恐霜霰至,零落同草莽。」や、後世の宋・陸游の『遊山西村』「莫笑農家臘酒渾,豐年留客足鷄豚。山重水複疑無路,柳暗花明又一村。簫鼓追隨春社近,衣冠簡朴古風存。從今若許閒乘月,拄杖無時夜叩門。」
がある。 ・故人:昔からの友人。古いなじみ。 古い友人。 ・莊:村里。いなか。
※故人具鷄黍:昔なじみが、鶏(ニワトリ)と黍(きび)の料理のもてなしを準備して。 ・具:そろえる。支度をする。準備をする。 ・鷄黍:〔けいしょ;ji1shu3○●〕ニワトリを殺し、きび飯をたいてもてなすこと。転じて、人を心からもてなすこと。前出・陸游の『遊山西村』でいえば「莫笑農家臘酒渾,豐年留客足鷄豚。」になる。
※邀我至田家:わたしを農家に招いてくれたので行った。 ・邀:〔えう;yao1○〕まねく。呼ぶ。迎える。 ・至:行き着く。くる。 ・田家:〔でんか;tian2jia1○○〕いなか家。農家。
※綠樹村邊合:緑の樹々が、村の周囲に繁り合わさって。 ・村邊:村の周り。村はずれ。 ・合:合わさる。いっしょにする。ひとまとめにする。
※青山郭外斜:青い山々が、城郭外(市外、郊外)に斜めに(連なって)見えている。 ・郭外:城郭都市の外側。市外。郊外。
※開軒面場圃:窓を開けて、穀類を乾燥させる庭に面して。 ・軒:(長い廊下の)窓。「開筵」ともする。その場合は「酒宴(の筵)を開く」の意となる。 ・面:面する。向かう。 ・場圃:〔じゃうほ;chang2pu3○●〕農家の前の穀物を干す広場。家の前の穀物干し場。
※把酒話桑麻:酒をとっては、桑や麻のことなどの農事を話題にしている。 ・把酒:酒器を持つ。 ・話:話す。後出・陶潛の『歸園田居』其二でいえば「道」。次の青字部分を参照。 ・桑麻:〔さうま;sang1ma2○○〕桑(くわ)と麻(あさ)。(桑麻を植える所の意で、)田園。前出・陶潛の『歸園田居』五首其二「相見無雜言,但道桑麻長。桑麻日已長,我土日已廣。」。
※待到重陽日:九月九日の重陽の節を待って。 ・待到-:…になるのを待って。後世、毛沢東は『卜算子・詠梅』で「風雨送春歸,飛雪迎春到。已是懸崖百丈冰,犹有花枝俏。 俏也不爭春,只把春來報。待到山花爛漫時,她在叢中笑。」と使う。 ・重陽:陰暦九月九日。九は陽の数の極みで、九が重なるから重陽という。この日、高い所に登り、家族を思い、菊酒を飲んで厄災を払う習わし。菊の節供。この日、茱萸(しゅゆ;zhu1yu2=かわはじかみ。ちょうせんごしゅゆ(朝鮮呉茱萸)。日本では、ぐみとしている。)の実を頭に挿して邪気を払うという後漢の桓景の故事
に基づいた重陽の風習の一。王維の『九月九日憶山東兄弟』「獨在異鄕爲異客,毎逢佳節倍思親。遙知兄弟登高處,
插茱萸少一人。」
や曹植の「茱萸自有芳,不若桂與蘭」や杜甫「明年此會知誰健,醉把茱萸仔細看。」魏・阮籍の『詠懷詩』其十「昔年十四五,志尚好書詩。被褐懷珠玉,顏閔相與期。開軒臨四野,登高望所思。丘墓蔽山岡,萬代同一時。千秋萬歳後,榮名安所之。乃悟羨門子,
今自嗤。」
や、南唐・李煜の『謝新恩』「冉冉秋光留不住,滿階紅葉暮。又是過重陽,登臺臨處,茱萸香墮。 紫菊氣,飄庭戸,晩煙籠細雨。
新雁咽寒聲,愁恨年年長相似。」
や、南宋・陳亮『念奴嬌』「登多景樓」「危樓還望,嘆此意、今古幾人曾會?鬼設神施,渾認作、天限南疆北界。一水橫陳,連崗三面,做出爭雄勢。六朝何事,只成門戸私計。 因笑王謝諸人,登高懷遠,也學英雄涕。憑却江山,管不到、河洛腥
無際。正好長驅,不須反顧,尋取中流誓。小兒破賊,勢成寧問強對。」
また、現代では在米留学生・朱海洪『元宵』「東風拂面催桃李,鷂鷹舒翅展鵬程。玉盤照海下熱涙,遊子登臺思故國。休負平生報國志,人民有我勝萬金。憤起直追振華夏,且待神洲遍地春。」
とある。
※還來就菊花:また訪れて、菊花を愛で、菊花酒を飲みたいものだ。 ・還:また。 ・就:つく。近づく。 ・菊花:重陽の日に吉祥を呼ぶとされて、珍重される花。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」。韻脚は「家斜麻花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
●○●○●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○●●●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2008.9.13 9.14 |
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