大林寺桃花 | |
白居易 |
人間四月芳菲盡,
山寺桃花始盛開。
長恨春歸無覓處,
不知轉入此中來。
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大林寺の桃花
人間 四月 芳菲 盡き,
山寺に 桃花 始めて 盛んに開く。
長恨す 春 歸って 覓むる處 無きを,
知らず 轉じて 此の中に入り來りしを。
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◎ 私感註釈
※白居易:中唐の詩人。772年(大暦七年)〜846年(會昌六年)。字は楽天。号は香山居士。官は武宗の時、刑部尚書に至る。平易通俗の詩風といわれるが、詩歌史上、積極的な活動を展開する。
※大林寺桃花:(廬山の香炉峰上にある)大林寺(に咲く季節外れの)モモの花。 ・大林寺:廬山の香炉峰上にある寺院。 ・桃花:モモの花。春に咲くモモの花が、ここ廬山山上にある大林寺では、涼しいために初夏だというのに、今を盛りと咲き誇っている光景を詠う。
※人間四月芳菲盡:世の中は旧暦四月(初夏)で、芳(かぐわ)しい花は、散って尽(つ)きてしまったが。 ・人間:〔じんかん;ren2jian1○○〕人の世。世間。 ・四月:陰暦四月は初夏。今の五月中下旬。 ・芳菲:〔はうひ;fang11fe1○○〕よいにおいの花。花がかぐわしくにおう。 ・盡:つきる。
※山寺桃花始盛開:山の中のお寺では、桃の花が、やっと満開になっている。 ・始:やっと。 ・盛開:満開である。
※長恨春歸無覓處:春が帰り去ってしまい、追い求めることができずに、ずっと残念に思っていたが。 ・春歸:春の季節が終わることをこのように表現する。陰暦三月末までが春で、四月からは夏。白居易の『送春』「三月三十日,春歸日復暮。惆悵問春風,明朝應不住。送春曲江上,拳拳東西顧。但見撲水花,紛紛不知數。人生似行客,兩足無停歩。日日進前程,前程幾多路。兵刃與水火,盡可違之去。唯有老到來,人間無避處。感時良爲已,獨倚池南樹。今日送春心,心如別親故。」や両宋・李清照の『臨江仙』「庭院深深深幾許,雲窗霧閣常扃。柳梢梅萼漸分明。春歸秣陵樹,人老建康城。 感月吟風多少事,如今老去無成。誰憐憔悴更雕零。試燈無意思,踏雪沒心情。」や、現代の毛沢東は『卜算子』「詠梅」で「風雨送春歸,飛雪迎春到。已是懸崖百丈冰,犹有花枝俏。 俏也不爭春,只把春來報。待到山花爛漫時,她在叢中笑」と使う。 ・無覓處:捜(さが)し出せない。
※不知轉入此中來:この山寺の中に移り入っていたとは、気が付かなかった。 ・不知:分からない。 ・轉入…來:別の所から…に、転じてはいってくる。 ・此中:この中(に)。ここでは、大林寺の中のこと。
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◎ 構成について
韻式は、「AAAA」で、韻脚は「榮生城情」で、平水韻下平八庚。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●●,
●●●○○。(韻)
●●○●●,
○○○●○。(韻)
●○○●●,
○●●○○。(韻)
●●○○●,
○○●●○。(韻)
2008.10.13完 2015. 2.28補 2016. 9.14 |
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