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春思 | |
賈至 |
艸色靑靑柳色黃,
桃花歷亂李花香。
東風不爲吹愁去,
春日偏能惹恨長。
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春思
草色は 靑靑として 柳色は 黄なり,
桃花 歴亂として 李花 香し。
東風 爲に愁を 吹き去らず,
春日 偏に能く 恨みを惹いて 長し。
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◎ 私感註釈
※賈至:盛唐の詩人。718年(開元六年)~772年(大暦七年)。字は幼幾。洛陽の人。安史の乱には、玄宗に従つて蜀に避れる。
※春思:春の長閑(のどか)な気持ち。全てが対句によって構成される全対格。第一聯は句中の対でもある。これは二首のその一。その二は「紅粉當壚弱柳垂,金花臘酒解酴醾。笙歌日暮能留客,醉殺長安輕薄兒。」。対句の構成は次の通り:
草色靑靑柳色黄, 桃花歴亂李花香。 東風不爲吹愁去, 春日偏能惹恨長。
※草色青青柳色黄:草の色は、青青として柳の(新芽の)色は黄金色になって。 *この句「草色青青柳色黄」は、句中の対「草色・青青+柳色・黄」でもある。唐・王維の『送元二使安西』に「渭城朝雨輕塵,客舎靑靑柳色新。勸君更盡一杯酒,西出陽關無故人。」
がある。 ・黄:(柳の新芽が芽吹いて)黄色い。黄色くなる。ここでは、黄金色になることになる。白居易の『楊柳枝』其二には「陶令門前四五樹,亞夫營裏百千條。何似東都正二月,黄金枝映洛陽橋。」
とあり、李白の『古風・其八』に、「咸陽二三月,宮柳黄金枝。綠
誰家子,賣珠輕薄兒。」や、牛嶠の『楊柳枝』「呉王宮裏色偏深,一簇纖條萬縷金。不憤錢塘蘇小小,引郞松下結同心。」
とある。
※桃花歴亂李花香:モモの花が咲き乱れて、スモモの花が香っている。 *この句「桃花歴亂李花香」は、句中の対「桃花・歴亂+李花・香」でもある。 ・歴亂:花の咲き乱れるさま。入り乱れるさま。張仲素の『塞下曲』に「朔雪飄飄開雁門,平沙歴亂捲蓬根。功名恥計擒生數,直斬樓蘭報國恩。」とある。 ・李花:スモモの花。
※東風不爲吹愁去:春風は、(わたしの)春の物思いを吹き払ってはくれないので。 *「東風爲吹愁去」の打ち消し表現の辞「不」は、「東風(A)爲(B)吹愁(C)去」の三箇所が考えられるが、意味が変わる。 ・東風:春風。 ・不爲:…しないために。…を助けないで。 ・爲:ここは、平仄から考えると仄(●)字で、「爲」〔ゐ:wei4●:(…の)ため〕。なお、「爲」〔ゐ:wei2○:なす〕は平字で、ここでは不適合。 ・吹愁去:愁いを吹き去る。 ・愁:春愁。春の物思い。春のわびしさ。 ・吹…去:…を吹き飛ばす。…を吹き払う。
※春日偏能惹恨長:春の一日は、ひたすらよく悔恨の念をひきおこしている。 ・偏:〔へん;pian1○〕ひとえに。ひたすら。一途に。意外にも。 ・能:よく。よく…できる。 ・惹恨:恨みをひきおこす。 ・恨:残念に思う。くやむ。後悔する。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「黄香長」で、平水韻下平七陽。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
○○●●○○●,
○●○○●●○。(韻)
2009.3. 4 3. 5 2011.8.17 2012.3.16 |
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