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国定無形民俗文化財

「山北のお峯入り」 10月 13日(日)
 (国指定重要無形民俗文化財 昭和56年1月21日指定)

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 「山北のお峯入り」は、山北町の共和地区(旧共和村、現在の皆瀬川・都夫良野地区)に古くから伝承されてきた民俗芸能です。

 起源は南北朝時代、宗良(むねよし)親王が河村城に難を逃れた時から始まったと伝わっています。
当時、丹沢一帯に信奉されていた修験道の柴燈(しとう)行事を中心とする芸能が時代を経るにつれて、各時代の風俗の影響を受けて現在の形ができ上がったとも言われています。
古調を帯びる笛・太鼓・歌詞は記紀・万葉の時代までさかのぼると推定され、また棒踊りは原始宗教の呪法が芸能化する過程を示すとの説もあり、お峯入りの保存価値は計り知れないものがあります。

 天狗・獅子・おかめ・山伏・入鼓・笛など、演技者だけでも約80名にのぼり、すべて男性で構成されます。
歌舞の役割は基本的に旧共和村の深沢・人遠・高杉・鍛冶屋敷・市間・八丁の各集落、各家に割り当てられていますが昭和に入つてからは旧都夫良野村からも参加しています。

 「山北のお峯入り」は基本的には高杉にある神明社の祭日10月16日に行われますが、毎年ではなく不定期です。

 参加者は共和小学校(もとは市間)に集り、神庭で歌舞を披露したあと行列を組み、神明社まで登つていきます。
この道行きの途中、龍集(りゅうしゅう)山(大野山)を仰ぐ山間路へ来ると一斉に万燈を振って踊ります。
神明社に着くと再び歌舞を奉納します。
演技はハリボテの大きな男根を背負つたおかめの「みそぎ」で始まり、「満月の歌」、「棒踊り(4種類)」、「鹿枝(かしえ)踊り」、「修行踊り」、「歌の山」、「四節(しせつ)踊り」、「五色踊り」など11種類あります。

 その中でも「四節踊り」は、国見役が四方を眺める国見の所作と寿詞(よごと)のやりとり、続いて演じられる蹴鞠(けまり)の模擬動作があり、小さな地域でのお祭りでは珍しく、注目される踊りです。

 古調を帯びた歌・太鼓・笛に合わせて、それぞれが踊ります。歌舞の所作には一片の記録もなく、すべて口伝です。

 お峯入りの公演には演技者だけでも80名の男子を要し、演技の修得には長い練習期間が必要で、多額の費用もかかるため、文久3年(1863)から現在までの約140年間に16回しか公演されていません。

 現在のお峯入りは昭和9年に40年ぶりに復活させ、古い衣装道具を見本に新しく整え伝承してきました。

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●「道行き」(入場)
 お峯入り出演者一同が行列を組み、笛・太鼓の囃子に合わせて賑やかに練り歩きます。


(1)「みそぎ」
 ハリボテの大きな男根を背中につけたおかめが、幣を振り動かしながら歩き、四方を浄めて廻ります。
(2)「満月の歌」
 歌い上げ4人太鼓4人が唄と太鼓で演じます。歌い上げ4人が「満月に おれやーる...」と、古調をおびた歌を歌います。「満月におる」とは、円形を作れという意味です。
(3)「棒踊り(1)」
 白衣を着て白鉢巻・白足袋・赤タスキ・赤手甲・黒脚絆をつけた6人の列舞でトウバヤシ、クラタバヤシ、キリミガエシに合わせて踊ります。棒の動作は天を指し、地を突く。
(4)「鹿枝(かしえ)踊り」
 台弓・奴・万燈・先箱・弓・ほろかごなど38人が、歌と太鼓の囃子に合わせ、足を後方にはね上げ、大名行列のような華麗なお練りをします。
(5)「棒踊り(2)」
 前記の6人が円形になって踊ります。踊りの動作は、地を突く動きが中心となっています。
(6)「修行踊り」
 山伏4人の踊りで、ぼら貝を先頭に登場し、柴燈を焚き、九字を切ります。歌と太鼓の囃子がつきますが、舞踊というより柴燈護摩(さいとうごま)の呪法に近いとされています。
(7)「歌の山」
 笛と太鼓の囃子だけで歌はありません。太鼓はお面をつけて背中に背負い、別の太鼓打ちが後ろから打ちます。笛吹は花笠をかぶります。古代歌垣の囃子だったといわれています。
(8)「四節(しせつ)踊り」
 国見の所作と寿詞(よごと)に続き、殿様・若殿・国見役・お側の6人が、歌と太鼓の囃子で蹴鞠の模擬動作をおこないます。蹴鞠には歌と太鼓の囃子がつきます。四季をあらわす桜、柳、紅葉、松を四方に配しておこないます。
(9)「棒踊り(3)」
 6人が3人ずつ2つの円をつくって「チラシバヤシ」に合わせて踊ります。棒は両手で持ち、前の二回より早いテンポで棒を回転させます。
(10)「五色踊り」
 みそぎと同じおかめの踊りで、歌と太鼓の囃子に合わせ五色で表現された中央と東西南北の五方向を幣と鈴で祓いながら滑稽に踊ります。歌は、「おん赤きもの あかね赤糸 赤しやぐま 朱の盃に えびのもりもの」など、赤、黄、青、白、黒と続きます。
(11)「棒踊り(4)」
 6人が円形になってチラシバヤシを踊ります。幾何学的に構成された美しい踊りで、日本の舞踊には珍しい舞態(ぶたい)といわれています。笛、太鼓に合わせてリズミカルに踊りおさめます。
●「道行き」(退場)


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