「なぁ、今日何時上がり?」

赤組さんがきいたなり。同じグループと言っても、一緒になる機会は少なかったなりから、その日も二人は別々の仕事だったなり。

「ん?なんで?」

青組さんは尋ね返したなり。

「あ、いや、今日一緒に飲みに行けねぇかな、って思って」

「わりぃ、今日、仕事すんでから用があるから、ちょっと無理」

「え?ちょっとくらい遅くなってもいいから・・・・それでも、ダメ?」

「ダメ」

「・・・・」

ついつい、声と態度に不満な気持ちがにじんでしまう赤組さんだったなり。何故なら今日は赤組さんのバースディイブだったなり。けれども、青組さんは気にもとめない風で言ったなり。

「おまえも、あんまり遊んでねぇで、早く帰って来いよ」

「はーい」

不機嫌さを隠そうともしない赤組さんに苦笑いして、青組さんは言ったなり。

「あのさ、おまえ、確か明日オフだったよな?明日は昼間だったらおまえにつき合えるし・・・・。だから、今夜は、な?」

「明日?」

赤組さんにも明日の昼間を空けていた青組さんの気持ちはわかったなりし、嬉しかったなり。

「ん、わかった」

 

赤組さんがその日の仕事を終え、マンションに戻ってくると、ちょうどエントランス付近で、緑組さんに出会ったなり。赤組さんを見てちょっとだけ「しまった!」という顔をした緑組さんを、いぶかしく思いながらも、赤組さんは声をかけたなり。

「何?慎吾、何か用だった?」

「あ、うん・・・・」

ちょっとだけ言いよどんでから、意を決したように緑組さんは言ったなり。

「あのさぁ、木村くんからも言ってやってよね。あの人ってば人の予定なんて関係なしなんだよ!俺ね、今夜は友達と会うことにしてたのに、いきなり電話で呼びつけてさぁ、あ、やばい時間が!!」

腕時計を見て緑組さんは駆け出していたなり。そして、不意に振り向くと言ったなり。

「あのね、俺は監督してただけで、みーんな中居くん一人でやったんだよ!!あ、それから俺からのプレゼント、中居くんに預けてるから!」

走っていく緑組さんの後ろ姿を見ながら、よくわからないながらも、飲みに行く誘いを断ったのは緑組さんに会うためだったからかと、ちょっと面白くない気分の赤組さんだったなり。

 

「ただいま」

赤組さんが部屋に戻ると、奥の部屋で何かがさがさとやっている気配がして、青組さんが慌てて出てきたなり。

「何?早かったじゃん?」

「早く帰れって言ったの、おまえだろ?」

それだけを言って赤組さんはリビングに向かったなり。

「え?」

リビングのドアを開けて、赤組さんは驚いたなり。そこにはしっかりと食事の準備が整えられていたなり。

「時間がなかったから、ほとんど出来合いでわりぃんだけど、一応ゴローに聞いて、美味いってワイン用意してみたから」

その後ろから、困ったように笑って青組さんが入ってきたなり。その青組さんの顔を見つめながら、何も言えない赤組さんだったなり。

「前さ、俺の誕生日に、おまえすっげーいろいろ用意してくれただろ?そのお返しって言うか・・・・」

「・・・・驚いた」

ようやく、声に出せた赤組さんだったなり。それを見て嬉しそうに笑い、いたずらをたくらんだ顔で青組さんは冷蔵庫に向かったなり。

「この程度で驚いてんじゃねぇよ」

必死で嬉しくてたまらない表情を見せないようにしながら、青組さんが取り出したのはチョコレートでコーティングされ、スミレの砂糖漬けだけで飾られたシンプルなラウンドケーキだったなり。

「一応さ、慎吾のヤツにきいて、俺一人で作ったんだぜ?ホントだったら、もっとすごいの作りたかったんだけど、な」

ナイフを入れると、ふっくらとしたココア生地のスポンジと間に挟んだ真っ白なクリームが現れたなり。

「すげえ」

赤組さんの言葉に青組さんは満足そうに笑ったなり。

 

その後、青組さんからとっておきのプレゼントを受け取ってから、赤組さんは尋ねたなり。

「でさ、明日はどこ行きたい?」

「いいよ、明日くらいはおまえにつき合ってやるから」

赤組さんはそばにいたボニータの首を抱え込むようにして首をかしげて青組さんを見たなり。

「なに、優しいじゃん。すっげー、しあわせ・・・・」

「なんか・・・・おまえの言い方って、よく考えたらしつれーな感じがする・・・・」

「そぉ?」

そう言いながらもにこにことしている赤組さんに、それ以上は青組さんも言う気もなくて、静かに夜は更けていったなり。