××下宿屋木村 2000年のお正月××

 

大きな波が来たなり。波の上に赤組さんの姿を見つけ、青組さんは軽く右手を挙げたなり。

「まぁ、見えてるかどうかは謎だけどな」

青組さんはと言えば、海岸で暖をとるように燃やされているたき火につきっきりで赤組さんを見ていたなり。

 

昨年の11月頃から言っていたように、5人揃っての初詣を決行したSMAPは、けれども初日の出までの時間の長さに最終的に3人が脱落していたなり。(一部では赤組さんが睨みをきかせていた、と言う説もあるなりが・笑)で、結局長男二人によってのみ、初日の出見物は実行されようとしていたなり。赤組さん提案の海の上での初日の出は、クルーザーの上、と言うロマンチックなものではなく、しっかりとボードまで用意していた赤組さんに、半ば強引に青組さんはここまで連れてこられることになったなり。そして、こうして浜辺でじっとたき火にあたるという状況にいたなり。

 

「しっかし、なんでまた藤沢なんだよ?」

青組さんは落ち着きなく周りに目を配ったなり。この辺と言えば、青組さんの地元の友達がいてもおかしくないような場所で、やっぱり恥ずかしい気がする青組さんだったなり。何もせずに赤組さんが波に乗ってるのをぼんやりと見ていました、と言うシチュエーションは。実際のところは寒いのをのぞけばそれなりにいい感じかな?と言う気分でもあったなりけれど。

 

いつのまにか、海水の滴をしたたらせて、赤組さんが横に立っていたなり。

「そろそろみたいだけど、初日の出」

見れば波の向こうがかなり明るくなっていて・・・・

「おまえは、また波に乗りに行くんだろ?」

青組さんの問いに大きくうなずいて赤組さんは言ったなり。

「中居も一緒にやればいいのに」

昨年に入ったくらいから、青組さんも赤組さんに誘われて波乗りをするようになっていたなりけれど

「いや、俺はこんな寒いのにわざわざやりたい程じゃねぇから」

答えて苦笑してみせたなり。

 

昇っていく初日に、何だか厳かな気持ちになって新年の願い事なんかをしてから、海からあがってきた赤組さんとともに、青組さんは赤組さんの車に戻ったなり。

「この後、どうする?」

藤沢まできているんだし、青組さんの実家までそんなに遠くないので、赤組さんは改めて尋ねていたなり。

「ん、さすがにもう眠いし・・・・帰る」

「だよな。藤沢に帰んの?」

「なんで?」

青組さんは驚いたように赤組さんを見たなり。

「帰るったら、うちに帰るに決まってんじゃん」

「え?」

「あ、ごめん。正しくは木村んちだよな」

慌てて、訂正する青組さんに

「いやそれはいいけど」

と言いながら、青組さんにとっての帰る場所がなんの疑問もなく、赤組さんのうち、と言うことに何だかとても幸せになってしまった赤組さんだったなり。