「あれ?」
誰もいないはずの下宿屋に明かりがついているのを見て、仕事帰りの青組さんは不審そうな顔をしたなり。
「俺・・・・電気つけっぱなしで出てきたんだっけ・・・・?」
やっべーなと、首をすくめて青組さんはマンションのエレベーターに乗り込んだなり。そして下宿屋のドアを開けて、青組さんは驚いたなり。
「何で、お前帰ってきてんの?」
そこにいたのは、年末のドラマのために今は京都にいるはずの赤組さんだったなり。
「えっ、何でって?だって俺、明日休みだもん」
にっこり笑って答えた赤組さんだったなり。
「休みって・・・・無理言ったんじゃねーだろうな?」
明日13日は赤組さんの誕生日だったなりから、青組さんは思わず疑いのまなざしを向けていたなり。
「まさか!そんなことはねぇって。何ならフクシマくんに訊いてみて」
そう答えた赤組さんだったなりが、青組さんはその答えを聞いていたのかいないのか、そのまま持って帰った荷物をまとめていたなり。そしてそれを手に取ると、
「俺、今日は自分ちに帰る。ついてくんなよ。じゃあな」
下宿屋を出ていったなり。あとには十数分後にバースディを迎える赤組さんが残されたなり。
「何なんだよ、一体・・・・?」
傍にやってきたボニータに呆然と呟く赤組さんだったなり。
翌日の火曜日は、いいともをはじめとして、青組さんのスケジュールはしっかりと詰まっていたなり。下宿屋に一人残された赤組さんはボニータとともに溜め息をついていたなり。
今日の青組さんの仕事はスタジオの関係で、12時前には終わるはずだったなり。どうにも面白くなくって赤組さんは青組さんを迎えに行くことにしたなり。
その時赤組さんの携帯が鳴ったなり。
「あ、今どこ?とにかく、部屋にいろよ?俺が戻ってくるまで、下宿屋から離れるな」
青組さんだったなり。青組さんは言うだけ言うと、そのまま携帯を切ったなり。
「何なんだよ・・・・一体?」
しばらくじっと携帯を見つめてから、赤組さんは結局部屋にとどまったなり。
青組さんが下宿屋に帰ってきたのは13日を少し過ぎた頃だったなり。
「アウト?セーフ?」
息を切らせて尋ねる青組さんに、赤組さんは
「アウト」
ぶっきらぼうに答えたなり。
「アウトぉ・・・・?」
青組さんは舌打ちしたなり。
「何だよ、結局お前が悪い!」
そう決めつけられて、赤組さんは大きく瞬きしたなり。
「何でだよ?」
「勝手に早く京都から帰ってきたりすんだもんっ!」
言いながら青組さんは押しつけるようにして、赤組さんに箱を差し出したなり。箱の中身はチョコレートバナナパイだったなり。
「簡単に出来るって聞いたから、昨日の晩に作るはずだったのに、お前が急に帰ってくるから予定は狂うし・・・・慌てて作ったから味の保証は出来ねーけど!!」
照れたように早口で言う青組さんとパイを赤組さんは何度も見比べていたなり。
青組さんのパイは、飾りのバナナにかけたレモンが少し酸っぱかったり、チョコレートがちょっと甘かったりしたなりけれど、こんなに美味しいパイは初めてだと赤組さんは思ったのだったなり。