××下宿屋木村 Uno!××

 

 その日は二人とも昼過ぎからの現場入りだったから、珍しく一緒に遅い朝食をとっていたなり。

赤組さんは青組さんの顔を見て、しみじみと言ったなり。

「その髭、どうにかなんないの?」

「どうしておまえが、んなこと言うわけ?」

「だって、キスするとき、ザラザラしてんのヤじゃん」

一瞬、飲んでいたコーヒーにむせそうになった青組さんだったなり。

「は、はい?」

「そんな風に女に言われねぇ?」

そんな青組さんを後目に、赤組さんはけろっとして言ったなり。

「言われねぇよ!」

ようやく体勢を立て直して、青組さんは言葉を続けたなり。

「大体、俺、今女いねぇもん」

だから、髭を伸ばしてたって関係ないもんねー、と言わんばかりの青組さんだったなり。

「剃ろう!」

けれども、いきなり赤組さんは言ったなり。

「何で?!」

「だって、中居、似合わねぇよ。そんな半端な髭、俺、見てんのヤだもんね」

「そんな、自分の趣味を押しつけんなっ!おまえが、髭のばしてるとき、俺はヤだったけど、我慢してたんだぞっ?!」

「ヤだったら、何で、言ってくれなかったの?」

「言えば、剃ったか?」

「んーっ、その時の気分次第かも・・・・」

「だろーが!」

「とにかく、もう剃ろう?!何なら俺が剃ってやるから」

 

と言うわけで、青組さんは赤組さんに髭を剃ってもらうことになったなり。

青組さんを椅子に腰掛けさせると、赤組さんはカミソリや、青組さんがCM中のシェービングジェルなどを用意したなり。

「ちょっと上向いて?」

赤組さんの指示に素直に従う青組さんだったなり。その青組さんの頬から顎にかけて赤組さんはジェルを薄くのばしたなり。

「面白くない」

赤組さんは不服そうに言ったなり。

「何だよ?」

「あぁーって、CMみたく言ってくれるかと思ったのに〜(笑)」

「何で、そこまでサービスしなきゃなんねぇの?(笑)」

「だってぇ」

言いながら、赤組さんはカミソリを手にして青組さんの顔に顔を近づけたなり。

「待って、あんまり近づいてくると、なんか照れる〜!」

「でも、近づかないと手元危ないし・・・・目、閉じといて」

「やだっ、たっくんってば、目、閉じてだなんてぇ〜」

ふざける青組さんの瞼の上にそっと手を置いて、赤組さんは青組さんの瞼をなでるようにして閉じさせたなり。

「木村ぁ〜、おまえ、こんな風にして女に目閉じさせるの?H〜!」

「いろいろ言ってると、カミソリ危ないよ?」

青組さんは、はっとして口を閉じると神妙な顔をしたなり。ようやく素直になった青組さんの髭を、手際よく剃り始めた赤組さんだったなり。