仕事を終え、下宿に帰ってきた青組さんの目の前に赤組さんの手が差し出されたなり。
「何これ?」
訊いた青組さんに赤組さんは
「今日何の日か知ってる?」
とたずねかえしたなり。
「何の日って・・・・」
「ホワイトデーでしょう?」
忘れないでよぉなどと言っている赤組さんに青組さんは首をかしげたなり。
「だから何?」
そう言った青組さんの前にもう一度赤組さんは手を出したなり。
「お返しは?」
「はぁ?」
「ホワイトデーってバレンタインデーのお返しの日でしょ?」
そう言ったあと、赤組さんはにっこりと笑って見せたなり。
「俺、中居にプレゼントしたじゃない?バレンタインデーに」
偶然バレンタインデーにココアをいれてくれた赤組さんに
「ココアってホットチョコレートっていうんだぜ?」
とからかったことを青組さんも思いだしたなり。
「あれ?あれってこっちも好きなときだけじゃないの?」
そう言って、その場から抜け出そうとした青組さんの背中から、肩に顎を乗せて赤組さんは言ったなり。
「えーっ、俺のこと嫌いなのぉ」
遊ばれてるなぁと思いつつ、何かを渡さないことにはここから解放されそうにないと思った青組さんは、慌ててポケットの中を探ったなり。確か、今日収録の途中、何度か咳をした青組さんにいくつか渡されたものの残りが入っていたはず・・・・。
「ほら、手」
青組さんは振り向いて赤組さんの手の上にのど飴を2つ置いたなり。
「えーっ、これだけなの?ホワイトデーって3倍返しが男の常識でしょ?」
「んな馬鹿なこと言う女とは俺つきあわねぇもん」
「俺女じゃないしぃ・・・・」
だったら、渡す必要ないんじゃん?至極まっとうな疑問も頭に浮かんだなりが、
「じゃ、今からデート、も付けとく?」
青組さんは提案したなり。
「デートぉ?・・・・今からじゃなぁ・・・・明日二人で遅刻キャラってわけにはいかないし・・・・」
不意に真顔で考える赤組さんに、青組さんもちょっと考えて尋ねたなり。
「だったら、いつになるかわかんねぇけど、俺とおまえのオフが重なったとき、でいい?」
「いいけど・・・・その時になって、忘れました、ってなしだよ?」
げんまんっ!と子どもっぽく約束をした二人だったなり。
赤組さんと入れ替わるように青組さんのドラマの撮りが始まって、約束が果たされるのは一体いつになるものか判らなかったなり。けれど、指切りをしているうちに何だかちょっと二人とも、楽しみな気分になっていたなり。