「いい?」
楽屋のドアが控えめにノックされ、赤組さんが顔を出したなり。
「何だよ、おめーにだって立派な控え室が準備されてただろう?」
廊下の途中にあった赤組さんの名前の書かれた控え室のドアを思い出しながら青組さんは言ったなりが、赤組さんはそのまま部屋に入ってきたなり。
「だって、すぐそばにおまえがいるのに別々って何となく変な感じがするんだよなぁ」
そう言って笑った赤組さんに
「何だよ、ガキみてぇ!」
青組さんも笑ったなりが、確かにそんな昔から、同じ番組の時はずっと一緒の控え室だったなぁ、とふとそんなことを思いだしていたなり。今日にしたところで、
「おはようございまーす!!」
SMAPとして出演する以外の番組でこんな風にして二人で現場にはいるのは、ほとんど初めてだったと言ってもよかったなり。
やがて本番の時間が近づいて青組さんの纏う空気の色がだんだんに研ぎすまされてきたなり。
「あ、いい感じ」
赤組さんは思ったなり。SMAPのメンバー同士というのは、結構お互いのファンでもあって、
「それってどうよ?」
と思う部分もなきにしもあらず、だったなりが、やっぱり赤組さんとしても、青組さんが頑張っている姿を見るのは嬉しいものだったなり。
最初は、まだ赤組さんの出番もなくって赤組さんはスタッフの中に混ざって青組さんを見ていたなり。SMAPを離れて単独の「中居正広」になり、これ以上はないプロとして働く青組さんを、赤組さんは、誰かに自慢したいような誇らしさと、そしてほんの少しだけの寂しさを持って見つめていたなり。
そして。
いよいよ赤組さんの出番が来たなり。赤組さんは静かに息を吸い込んだなり。時間にすれば、このドラマ全体の本当に何パーセントにも満たないような短いシーンだったなり。けれども、このシーンは伝説にしなくてはならなかったなり。それが、赤組さんを選んでくれた青組さんに対する、赤組さんからの思いになるはずだったなりから。
それぞれの位置について、カメラが動き始めるなり。
そして、ドラマは伝説へと向かったなり。