××下宿屋木村 ドラマを見よう!××
大相撲のため、番組の終了は25時、それから簡単に反省会をすませ、青組さんが下宿屋に辿り着いたのは深夜の2時を少しまわった頃だったなり。大家が今ドラマの撮りに入っているなりから、本当はこんなに遅くなって下宿に帰るのは青組さんとしても気の引けるところだったなりが、どうしても下宿に帰って来いとは、大家の厳命だったなり。
カーテンから漏れるかすかな明かりに、まだ大家が起きていることを知り、青組さんはため息をついたなり。
「ただいま」
「おかえり〜」
「あのなぁ、さっさと寝てろよ?体調整えなきゃなんねぇんだろ?」
リビングから帰ってきた明るい声に、思わずそんな風に青組さんは言っていたなり。
「ん?けど、俺もさっき帰ってきたところなんだけど・・・・」
確かに、赤組さんはまだ濡れた髪を乾かしているところだったなり。
「もしかして、撮影、結構ハード?」
「いや、今日はちょっとね」
青組さんの問いに赤組さんはちょっと笑って答えたなり。
青組さんもシャワーを浴びて、予約してもらっていたビデオを巻き戻したなり。9時からの、どうしてもこま切れにして見るのが嫌なドラマだったなり。ソファのいつもの位置に座って片膝を立てていると、赤組さんが湯気の立ったカップを2つ持ってきて、その横に腰掛けたなり。
「はい」
「ん、ありがと」
受け取って中身を覗いて青組さんは言ったなり。
「何?これ」
「ん、・・・・コーヒーじゃ、後で眠れなくなると困るかなと思って、ヴァン・ショーにしてみた」
「・・・・何?」
「ヴァン・ショー、つまりホットワイン」
「あのなぁ、吾郎相手にしてるんじゃないんだから、わかりやすく言えっての!」
青組さんはカップに口を付け、ふと横に腰を落ち着けている赤組さんに気付いたなり。
「おまえ、明日も撮影あるんだろ?何くつろいでんの?」
「ん?あ、大丈夫、明日ロケの都合で午後からになってるから」
「だからって、別につきあわなくっても・・・・」
言いながら、青組さんはリモコンのスタートボタンを押して、手元の雑誌を取り上げたなり。
「何?その本」
尋ねる赤組さんに、ちょっと自慢げに笑ってみせた青組さんだったなり。
「なんと、1〜3話までのシナリオが掲載されてんだよ、この本!!」
「え?」
「前に言ったことあっただろ?台本くれって!でもおまえぜってぇ渡してくれねぇしさ・・・・。夢だったんだよな、こうやって台本めくりながら木村のドラマ見るの!」
にっこにこと嬉しそうな青組さんの手から、非情にも赤組さんは台本を取り上げたなり。
「何すんだよ!」
文句を言う青組さんに赤組さんは、きっぱりはっきり言ったなり。
「そんな見方、変だろ?」
「でもさぁ・・・・」
不満げな青組さんに赤組さんは言ったなり。
「わかった、横で解説してやるから」
そして、沖島柊二による解説付き、ビューティフルライフ第2話が始まったのだったなり。