クランクアップ!!
青組さんのドラマの収録もいよいよ終わりを迎えたなり。
だからといって、そんなに暇になるわけではない青組さんのスケジュールだったなりが、それでもやっぱり、クランクアップのあとはいくらか余裕が出来たなり。
だから、その日も青組さんが下宿屋に戻った時間も、久しぶりに早めだったなり。
「ただいま〜」
部屋にあがった青組さんの目の前に男物の浴衣が2着、突きつけられたなり。
「どっちがいい?」
「えっと・・・・こっち?」
思わず、指さしていた青組さんだったなり。
「だよなぁ、中居はやっぱ、こっちのが似合うと思う」
浴衣を突きつけた赤組さんは満足そうに笑ったなりが、青組さんはようやく体勢を立て直して訊いたなり。
「何なんだよ?一体?」
「ん、せっかくいい天気だしさぁ、浴衣着て、屋上で花火なんてどうかな、って思って・・・・」
「・・・・俺、浴衣なんて着れねぇよ?」
「まっかせなさいっ!」
赤組さんは自信たっぷりに言ったなり。
「ちゃんと本見て練習したし、おふくろにも訊いてきたし、ばっちりだから!」
赤組さんはなかなか器用に青組さんの浴衣の着付けをして、それから自分も浴衣に着替えたなり。
「なんか、ずりぃ、って気がする」
赤組さんの手際の良さに青組さんはそんな風に言い、赤組さんはにっこりと笑ったなり。
「帯なんて二人とも結び方変えてんだよ?」
青組さんの結び方は貝の口、赤組さんのは片ばさみと、赤組さんは簡単に説明したなり。
いつの間に?と言うべきか、屋上にはすでに花火がセッティングされていて、二人がビール片手にそこへ出ると、早速赤組さんは手近なドラゴンに火を点けたなり。
最初はちょっと弱く、そしてすぐに勢いよく、音をたてて小さな星たちが吹き出したなり。
星と一緒に吹き出した煙を避けるようにしながら、青組さんは、
「何だか、ロンバケみてぇ!」
と、笑ったなり。機嫌よさそうな青組さんの様子に赤組さんもにっこりとしたなり。
「てことは、俺、瀬名?」
「ん?にしちゃ、ちょっと焼けすぎ」
「・・・・おまえには言われたくねぇよなぁ」
赤組さんがつつくと、青組さんも笑って言ったなり。
「早く俺もやきてぇなぁ」
「・・・・それは、ちょっと考えろ」
「何でだよぉ・・・・!!!」
「何ででもだよっ!!」
いくつもドラゴンに火を付けた後で、二人は手にもって花火を始めたなり。
花火の煙の微かな火薬の匂いが、夏を告げていたなり。