「お疲れ様でしたー!」
スマスマの収録も無事に終わり、そんな言葉を交わしながら、赤組さんはふとスタジオの隅の時計のデジタルの表示に目をやったなり。
「11:13」
まるで測ったかのようなその偶然に、軽く口笛を吹いてみた赤組さんだったなり。
この後は特に予定もなかったなりし、このままだったなら、日付が変わる前に下宿屋に帰れそうだったなり。そう思うだけで、楽屋に向かう赤組さんの足取りも自然、軽くなったなり。
トントントン。
収録が終わったのはメンバーでも赤組さんが一番最後のはずだったなりから、もう誰も残っていないだろう楽屋のドアに、赤組さんは形ばかりの軽いノックをして、そのままさっと開けたなり。
「えっ?」
部屋の中では青組さんがソファにもたれるようにして眠っていたなり。
そう言えば、今日はふたりとも(というか青組さんが珍しく)スマスマの収録以外の仕事が入っていなかったなり。それで、赤組さんの車で一緒に、下宿屋からスタジオまでやって来たことを思い出した赤組さんだったなり。
「随分待たせたかなぁ?」
そう思いながら、どうせあとで結局は起こさなくてはならないなりに、青組さんを起こさないように気を付けて、赤組さんは青組さんに近づいたなり。
いつも仕事中は張りつめた雰囲気を漂わせている青組さんも、今は全くの無防備な様子で目を閉じていたなり。
「なーんか、平和だよなぁ」
そんな気分で、思わず青組さんの寝顔を見つめていた赤組さんだったなり。けれども、そんな人の気配を感じ取ったものなりか、青組さんの閉じた目蓋を縁取った睫毛が小さく揺れたなり。そして、ゆっくりと目蓋が開いていったなり。
最初はぼんやりとしていた瞳が、やがて焦点を結び、青組さんの寝顔を見つめていた赤組さんに向けられたなり。
「何だよ?」
寝起きの掠れた声が赤組さんに言ったなり。
「いや・・・・疲れてる?」
赤組さんは何となく尋ねていたなり。
「いいや、・・・・いや、やっぱ疲れてんのかなぁ?」
青組さんは首を傾げたなり。
「まぁ、いつものことにプラスして、ライブのこととか考えなくちゃならねぇしさ」
そう言って肩を軽く上下させた青組さんだったなり。
「でもさ」
青組さんは赤組さんに笑ってみせたなり。
「俺、今、すっげー幸せなの」
「うん」
赤組さんも頷いたなり。青組さんの笑顔は掛け値なしに幸せいっぱいの笑顔だったなり。
「大分待たせたんだろ?早く帰ろうぜ?ボニも待ってるだろうし」
そう言ってふたりで楽屋を出ながら、幸せなりなぁ、赤組さんもそう思っていたなり。
しあわせはこんなところにある