××下宿屋木村 彼岸花咲いた××

 

 

別にいろいろと深い意味はなかったけれど、だけどスマスマのEDトークでも口にしたりしたように、最近ふと、お墓参りのことなんかも気になったりする下宿屋の住人達だったなり。

お墓参りといえば、EDトークでも言っていたお盆もなりけれど、お彼岸もまた欠かすことのできないシーズンだったなり。

いつも仕事が詰まっている青組さんも、コンサートの翌日は予備日に当たっていたなり。宮城からの帰りは昼過ぎになっていたなりから、さすがにお墓参りは無理だったなりけれど、せめてその気持ちを大事にしたいという気持ちから、二人はゴルフで遅くなった赤組さんが帰ってきた夕方過ぎから、下宿屋にておはぎ作成に取りかかったなり。

「なぁ、半殺しって知ってる?」

炊きたてのモチ米をつぶしながら青組さんが言ったなり。いきなり口にされた物騒な単語に、驚いたように赤組さんは青組さんの顔を見たなり。

「そりゃ、知らないとは言わないけど・・・・」

「何故今、“半殺し”?」そう顔に書かれた状態の赤組さんに青組さんは笑いかけたなり。

「じゃあ、本殺しってのは知ってる?」

「はぁ?」

またしても物騒な単語が続き、きな粉の味を確かめながらも首をひねる赤組さんだったなり。そんな赤組さんに、青組さんはますます楽しそうな表情になったなり。

「昔話であるんだよ。旅人が人の良さそうな老夫婦の家に一晩泊めてもらったら、夜中にひそひそ声で“明日は半殺しにすべぇ”“いや本殺しがよかろう”なんて相談している声が聞こえてくんの。旅人はとんでもねぇ処に泊めてもらったって、逃げ出しちゃうんだけど、実はその相談って言うのは、明日の朝旅人にご馳走するのはおはぎにするか、餅にするかってことだったわけ」

そう言いながら、

「こんなモンでいい?」

と、青組さんは半ばくらいにつぶされたモチ米の様子を見せたなり。

「あ、いいんじゃねぇ?」

答えながら、赤組さんも

「そっか、半殺し、本殺しってモチ米の状態ね」

と気づいていたなり。

「だったらさ、ぼた餅とおはぎの違いって知ってる?」

赤組さんに質問に、

「・・・・ぼた餅はあんこのヤツで、おはぎはきな粉?」

と首をひねりつつも、

「わかんねぇ」

と、青組さんはあっさりと白旗を揚げたなり。

「うん・・・・これにもいろいろな説があるんだけどね。萩の花の咲く頃に作るから、おはぎって言うの、いいと思わねぇ?」

赤組さんの言葉に青組さんは、にっこりと笑い、そしてボニが部屋の隅で小さくあくびをしたなり。

あとは、赤組さんが味付けした小豆ときな粉の味を青組さんが確かめて、そしてそれらをモチ米にまぶして。そんな、穏やかな下宿屋の午後、だったなり。