××下宿屋木村 秘密の企み××

時は20世紀も終わりに近いある日。その日、赤組さんと青組さんは久々に一緒に夕餉を囲んでいたなり。

「それにしても珍しいよな」

そう口を開いたのは赤組さんだったなり。

「俺らが、一緒のクールのドラマだなんてさ」

「そういやそうだよな」

青組さんも言ったなり。確かに同クールのドラマ出演は、久々と言ってもよかったなり。

「なぁ、せっかくだしさぁ、なんかしねぇ?」

「何を?」

赤組さんの提案に青組さんは首を傾げたなり。

「両方のドラマ見ているヤツが、あれっ?って思うような仕掛けをしとくの。例えば、俺のやる久利生とおまえのやる直江の癖が同じだとか・・・・」

「それって、例えばどんな癖?」

「えっと、ねぇ・・・・なんか字を書く前には絶対ペンの端っこを囓るとか・・・・」

「・・・・わかりにくいし、そんな癖持ちたくねぇな」

そう言って青組さんは、食後の煙草に手を伸ばしたなり。

「あ!」

それをぼんやりと見ていた赤組さんが言ったなり。

「それだ!!おまえのやる役って煙草吸う?」

「吸うけど?」

「うちも吸うんだよ!!だから煙草揃えようぜ?」

「おまえのに?それとも俺のに??」

青組さんは、自分の持っている煙草と赤組さんの手元の煙草とを見比べたなり。赤組さんも同じようにお互いの煙草を見比べてから、

「せっかくだし、どっちのでもないヤツにしねぇ?」

と提案したなり。

「そうだな・・・・だったら、シンプルに・・・・Seven Starsなんていいんじゃねぇ?」

「あ、それ賛成!じゃっ、久利生も、直江先生も煙草はSeven Starsな!」

赤組さんがにっこりと笑ったなり。

「でもさぁ、だったら、もしも久利生と直江先生が会うことがあったら、煙草のやりとりって結構簡単なんじゃねぇ?」

赤組さんが言ったなりが青組さんは首を傾げたなり。

「どうかな?直江って結構人当たりよくねぇ感じだし・・・・」

「大丈夫、久利生ってすっげぇ人当たりいいから!」

そう言いながら、二人は顔を見合わせて笑ったなり。

「会うわけないのにな」

「会ったら面白いけどさ」

「・・・・でもさぁ、誰か気が付くヤツいるかなぁ?」

「いるんじゃねぇ?何人かは」

それは20世紀最後で21世紀最初の二人の小さな企みだったなり。