「だから、それは違うだろうっ?!」
「はぁ?自分ばっかりが正しいみたいに言ってんじゃねえよ!」
「へぇ?そういうおまえこそ、自分が正しいとでも思ってるんだろ?」
「あぁ、てめぇに比べたら、よっぽど正しいね!大体おまえ、この間だって」
「待てよ、この間のことがどうして関係があるって言うんだよ?」
「関係あるに決まってんだろ?俺はてめぇの姿勢を言ってんの!」
「俺の姿勢ぃ?」
「そうだよ、てめぇの姿勢!自分ばっかりが正しいみたいな顔しやがって」
緑組さんが楽屋に入ったとき、赤組さん青組さんはまさに言い争いの真っ最中だったなり。
一瞬、びくっとしたあとで、部屋の隅でドライヤーを使っている桃組さんを見つけ、緑組さんは慌てて駆け寄ったなり。そして、小さな声で桃組さんに尋ねたなり。
「吾郎ちゃん、一体どうしたの?あの人達」
桃組さんは鏡からは目を離さずに、
「俺が来たときからすでにあんな風だったからね、何なのかなぁ?」
と答えたなり。
「何なのかなぁ?って、吾郎ちゃんっ!!」
緑組さんは言ったなりが、桃組さんはあとは何も答えなかったなり。
そうこうしている間にも言い争いはますます激しくなっていたなり。
「だから、てめぇの物差しが間違ってるって言ってんだよっ!」
「何で、言い切れるんだよ?そういってるてめぇの物差しだって狂ってんじゃねぇか?」
「はぁ?常識でものを言えよ、常識で!!」
「わらわせんな!てめぇが常識を言う?えっ?常識なんて欠片も持ってねぇくせに!」
「まぁな、てめぇに常識を訊いたのが間違いだったな、常識しらずが常識なんてわかるわきゃねぇよなぁ!!」
「知ってるか?おまえが常識って言ってるのを、世間じゃ、非常識って言うんだぜ?」
桃組さんが「やめときな」と目で制していたけれども、緑組さんはたまらなくなって二人の間に割って入ったなり。
「もうやめてよっ!!一体どうしたって言うんだよ?」
赤組さん、青組さん、二人の目が同時に緑組さんに向けられたなり。
「「おまえ、トマトに砂糖かけて食う?」」
そして、二人の口から同時に問いが発せられたなり。
「なぁなぁ、砂糖かけるべ?」
「砂糖なんてんなもんかけるわけねぇよなぁ?」
「だから、その決めつけた言い方やめろって言ってんだろっ?」
「はいはい、わるぅございました!」
二言三言、言葉の応酬があって、
「「で?」」
二人の視線は緑組さんに固定されたなり。
「砂糖をかける」にしても「かけない」にしても、ましてや「トマトはどっちかっていうと食べたくない」なんぞと言おうものなら大変なことになるだろう、とひしひしと感じてしまった緑組さんは、言葉をなくしてそこに立っていたなり。
「だから止めたのに」
桃組さんは小さくため息をついたのだったなり。