「そういえばさ」
青組さんがふと口を開き、手にしたコンビニの袋がかさかさと音をたてたなり。
何となく思い立って、赤組さんと青組さん二人連れだって深夜のコンビニに買い物に行った帰り道のことだったなり。等間隔に設置された、そんなに明るくもない街灯が夜道を照らすのよりも、先ほどから昇ってきた月の光の方が余程明るいような、そんな夜のことだったなり。黒く伸びる影を踏みしめながら二人は並んで歩いていたなり。
「運動会で、騎馬戦って、あったじゃん?あれ、帽子を取ってた?それとも、騎手を引きずり下ろしてた?」
いきなりの質問だったなりが、赤組さんは答えたなり。
「確か、帽子とってたと思う。・・・・それよりもさぁ、騎馬戦って言ったら、生放送で」
青組さんの言葉で赤組さんが思い出したものを、青組さんもすぐに思い出していたなり。
「そう言えば!!俺らも若かったねぇ」
そう言って、青組さんは苦笑したなり。
「ったく、とんでもねかったよなぁ、素人相手に!!」
赤組さんも笑ったなり。
「そうそう、素人相手に本気で蹴り入れるか、っての!あれ、今、俺、仕切る方だろ?同じことされたら、冗談じゃねぇぞっ、って頭きてるよなぁ」
「あの後、すっげー、怒られたよな?」
「ほんと、あの時はかなり怒られたべ」
「でも仕方なくねぇ?あぁいう勝負かかると、SMAP、燃えちゃうし」
「その辺、今でも変わってねぇかも」
二人は懐かしそうに笑ったなり。
「でもさ、何でまた急に騎馬戦?」
赤組さんが不思議そうに尋ねたなり。
「あれ?何でだろ?なんかさ、急にガキの頃の運動会の練習のこと思い出してさ」
青組さんも不思議そうに首を傾げたなり。
それから、二人とも黙ってしばらく歩いていたなりが、不意に赤組さんが足を止めたなり。
「どこからするんだろ?さっきから金木犀の匂いしない?」
「それだ!」
青組さんが言ったなり。
「え?」
「金木犀!さっき運動会のこと思い出したときも、金木犀の匂いがしたんだ」
歩き出しながら、青組さんは言葉を続けたなり。
「ちょうどさ、運動会の練習の頃って、校庭に隅にあった金木犀の花が咲き始めてて。まだ秋って言っても、運動会の頃って暑いじゃん?でも風だけはどっか涼しい感じがしてさ。その風が、なんかこんな匂いだったんだよなぁ」
懐かしそうに話す青組さんの横顔を月の光が照らしていたなり。
いつか、もう何年かあと、金木犀の咲く頃に、その匂いと共に今夜のこともこうして思い出すのかなぁ?コンビニの袋のかさかさという音を聴きながら、ふと、赤組さんはそんなことを思っていたなり。