その夜は、大事な大事な人が、大事に大事にしている番組に出演する最後の夜だったなり。 メンバー揃っての生放送、と言うひとつの大きな仕事を終えたなりに、彼は、ただ一人でもう次の仕事、つまりはその生番組の最後の出演に向かっていたのだったなり。 残されたメンバーもまた、彼には内緒でその生番組に出演するために、彼を追いかけたなり。番組にいきなり出演すると彼は驚き、そしてしんみりとした表情を見せたなり。 メンバーは、控え室に戻って、彼の出演している番組を見ていたなり。 まるで当たり前の顔をして、彼はいつものように番組を始めていたなり。 「五年だよ?すごいよねぇ」 そうつぶやいたのは緑組さんだったなり。 「五年前って言ったら、俺なんてまだ子どもだったもん」 そう言う緑組さんは、幾分子どもっぽさの減った顔で五年前に思いを馳せていたなり。 「俺ね、実はコンサート、終わってからうちに帰ったときに、TVの向こうにあの人を見るの好きだったんだよ」 黄組さんが言ったなり。 「俺たちとさっきまで一緒にライブやってた人なんだって、ちょっと自慢だったな」 そう言いながら、早めの飛行機に乗るためにライブ会場を急いで後にする彼の姿を思い出した黄組さんだったなり。 「だけど、俺はちょっと嫌だった」 赤組さんはそう呟いたなり。 「ライブの後もそうだけど、この五年間、あいつどんなに体調悪くても休まなかったんだぜ?絶対に無理してるってわかるのにそれでも仕事だからって、送り出さなきゃならないのは、ほんとに嫌だった」 赤組さんは、溜息をつき、そしてもう一度ブラウン管の彼を見たなり。 「でも五年だよね」 桃組さんは静かに言ったなり。 「最初はさ、畑違いだの何だのって、いろいろとても大変そうだったのに、結局誰にも文句を言わせない、番組の顔になっちゃったよね」 桃組さんが思いだしたのは、何種類かの新聞を読み比べている彼の姿だったなり。 「そうだよ、五年もずっと続けていたんだよ?」 黄組さんが言ったなり。 「だからね、お疲れさま会をこの後みんなでやろう?」 悪戯っぽい顔で呟いたのは末っ子だったなり。 「でもさ、五年も一緒だったんだし、番組でも何かやるんじゃないかな?」 桃組さんが冷静に言ったなり。 「そこは、ほら、あいつの大好きなSMAPゴネ、使っちまおうぜ?」 赤組さんが笑い、そして言ったなり。 「この番組が終わったらさ、さっさと、あいつのこと、かっさらっちまうとするか」 大事な大事な人を囲んで、ただ一つの言葉を告げるために集まろう。 大好きだよ、ありがとう。