パソコンの操作をしている赤組さんの肩にあごをのせて、青組さんはじっと画面を見ているなり。
「へへっ、ぼしゅーちゅーか、やってみよっかな?」
くすくす笑いながら青組さんが言ったなり。
「それ。やめて。俺、フォローしきれねぇ・・・・」
「あーっ、あっちの木村に比べて、おまえ愛が足りねぇんじゃねぇ?」
「・・・・愛・・・・?愛の多い少ないの問題??」
言いながら赤組さんは青組さんに振り返ったなり。
「なぁ、おまえ、ネット始めねぇの?」
「始めねぇよ、めんどくせぇし・・・・」
「そぉ?」
メールの受信を確かめて、赤組さんは接続を切ったなり。そして、身体ごと青組さんに向き直って言ったなり。
「始めよう?だって俺、中居から、メール欲しいもん」
「・・・・同じとこに毎日帰ってて、何でメールしなきゃなんねぇんだよ?」
「だからぁ・・・・」
赤組さんは青組さんに膝でにじり寄ると、青組さんの手を取って言ったなり。
「そうじゃなくって!逢えねぇ時とかあるじゃん!そういうときにメール欲しいの。・・・・例えば、俺がロケにいっている時とか・・・・」
「えっ?外国?外国にもメール出せんの?」
「だせるけど?」
「時間かかるんじゃねぇ?」
「かかんねぇよ、別に」
「じゃ、金かかるだろ?ほら、国際電話とかって、金かかるもんな」
「・・・・かかりません・・・・」
赤組さんは手近にあった紙をとって、簡単な図を描きながら、説明を始めたなり。
「つまり、プロバイダーって言って、とりあえずうちらはそこにつなげるの。そしたら、そのプロバイダーが、プロバイダー同士でつながりあって、相手にね・・・・」
「じゃあ、プロバイダーが国際電話代って持つわけ?それって、損すんじゃねぇ?それって変だろ?」
「だからぁ、プロバイダーっていうのは・・・・」
赤組さんは幾度か説明を繰り返したなりが、国際電話代は誰が持つのか、ということが気になって仕方ない青組さんは、どうしてもそこに戻ってきてしまうなり。
「わかった」
赤組さんは紙を畳むと言ったなり。
「とにかく、国際電話代はうちらは払わない。いい?」
「うん」
「うちらに必要なのは、プロバイダーまで、つまり市内の電話料金のみ、わかった?」
「うん」
「うちらが払わないでいいものの心配はしなくていい」
「でも、さぁ・・・・」
「しないでいいの!」
「・・・・は・・・・い」
赤組さんに握りしめられた手を「ぶんっ」と振られて強く言われ、とうとう青組さんも肯いたなり。
「だから、中居もネット始めよ?設定なんかは俺がみんなやるし・・・・」
にっこり笑って赤組さんは言ったなり。
「やだ」
間髪入れないタイミングで返した青組さんだったなり。
「何で!」
「だって、メールなんてめんどくせぇよ。「あ」は何処だっけ、「い」はどっちだぁ?なんて、やってらんねぇよ」
がっくりきた赤組さんだったなりが、負けなかったなり。
「だったらさ、今音声認識のできるメールソフトもあるから、それ入れよ。そしたら、中居、しゃべるだけでいいし、な?」
「うん」とうなずかない限り、解放されないのではないかという赤組さんの勢いに、とうとう負けてしまった青組さんだったなり。
翌日、早速、ネット環境まできちんと整えられたノートパソコンが青組さんのもとに届けられたなり。もちろん、アドレス帳には、赤組さんのEメールアドレスがきちんと入っていたなり。
そして、青組さんにEメールの送信方法をしっかりと教えて、赤組さんは映画のロケのために、日本を離れたなり。
その数日後、待ちに待っていた赤組さんのもとに青組さんからのメールが届いたなり。
「木村へ。多分、おまえのことだから待っていると思うので。大体、こんなあれ、これって消すときはどうすんだっけ?え?何?今言ってんのまで、字になってんじゃん。待てっ、うそぉ?・・・・もうしんねぇよ。早く帰ってきて、使い方もう一度説明しろ!じゃあな、これで送るっ!」
その時のあわてている青組さんの様子が、目に浮かぶような文字群に赤組さんはくすりと笑ったなり。
そして、その後に付いていた文を何度も繰り返し読んだなり。もう、終わらせたつもりだったのに入ってしまったのだろう、と思える言葉だったなり。きっとこんなつぶやきまで、一緒に送ってしまおうとは、青組さん自身も気づいていないに違いなかったなり。
「外国ってことで、ただでさえ心配だってのに、よけいな苦労まで増やしやがって・・・・あのばか」
END