××下宿屋木村番外編 中居くんとパパ××

 

「たっだいまぁ〜♪」

中居くんが帰ってきました。とってもにこにこしてて、そして、ちょっとお酒の匂いがします。

「ボニ、元気してたか?」

言いながら、ボニの首を抱きしめて、ボニの頭を撫でてくれます。にこにこにこ・・・・。けど今日のにこにこは、この前、パパと中居くんとボニで海に行ったときのにこにことは、ちょっと違うような気がします。何かあったのかなぁ・・・・。

 しばらくボニの頭を撫でていた中居くんの前にパパはコーヒーのカップを差し出しました。とってもいい匂いがします。

「はい、飲むでしょ?」

「ん、ありがと」

中居くんはカップを受け取ると、両手で抱えてパパの方に向き直りました。

「なぁ、木村ぁ」

中居くんがパパに言います。

「なぁ、俺、やめちゃってもいいかなぁ」

「ん?」

「俺さぁ、SMAPっていうか、芸能界、やめてもいい?」

えっ!ボニは驚いて中居くんを見ました。

「いいよ」

でも、パパは笑ってあっさりと言いました。

「やめてもいい?でも、やめちゃったら、俺、無職になるし、収入なくなったらキツイかなぁ」

「ん?それくらい、俺が食わせてやるよ?扶養家族がボニ1匹から、ボニと中居に増えたところで、平気だし」

「明日っから、もううちにいてもいい?邪魔じゃねぇ?」

「いいよ、昼飯と晩飯用意しとくわ。中居、何食いたい?」

 中居くんはちょっとうつむいて、手の中のカップを見ました。そして、顔を上げて、にやっと笑いました。

「・・・・なんて、本気で言うと思う?」

「あ、そうなの?俺、けっこう本気だったんだけど」

パパもにこっと笑いました。

「・・・・木村ってば、いー性格してるよなぁ」

「じゃなきゃ、おまえと12年もつるんでらんねぇって」

「ほんっと、いい性格」

そう言う中居くんにパパは優しく言いました。

「ところでさ、そろそろ、風呂、いい頃だと思うし、入ってきたら?」

「ん」

 中居くんはカップを置いて立ち上がりました。そして、部屋のドアを開けたとき、小さく

「ありがと」

って、消えちゃいそうな声で言いました。とってもとっても、小さな声だったから、パパに聞こえたかなぁって、ボニは思ってパパの顔を見ました。パパはとっても優しい顔をしていました。だから、パパはちゃんと知ってるんだなって、ボニにもわかりました。