何かを掴もうとしていたなり。必死で手を伸ばしたなり。あと少し・・・・指先が微かに触れそうなくらいだったのに、どうしてもそれには届かなかったなり。どうにかして掴みたかったなり。けれども、届かない。もどかしくって、苦しくって、どうしようもなくて、また腕を伸ばしたときに、突然目が醒めたなり。
「うぇ・・・・、気持ち悪ぃ」
身体にべっとりと嫌な汗をかいて、青組さんはベッドに起きあがったなり。
「何なんだよ・・・・」
ため息をついて、膝を抱えた青組さんだったなり。
あぁ、またあの夢だ。
青組さんは思ったなり。あの時から繰り返し見る夢だったなり。何を掴もうとしているのかさえもわからないままに、いつも青組さんは腕を伸ばしていたなり。ただ、それを掴まなくてはならないと、それだけがはっきりしていたなり。
1度だって届いたことのない何かを掴もうとして、青組さんは、また腕を伸ばしたなり。どうしても掴めないなり。どうせ届きはしないと、心のどこかでそう思うのに、伸ばさずにはいられないなり。焦りに、もどかしさに・・・・それでも、青組さんはそれを必死に掴もうと、腕を伸ばしていたなり。
けれども。
その時、青組さんの腕は何かを掴んだなり。
温かな何か。
「え?」
驚いて青組さんは、目を開けたなり。青組さんが掴んでいたのは、手、だったなり。
「おい、中居、大丈夫?」
そして、その手の持ち主が、青組さんの顔を心配そうにのぞき込んでいたなり。
「木村・・・・?」
青組さんは、ぼんやりと赤組さんの顔を見たなり。
「何だかさぁ、すっげえうなされてる声がしたから、悪いかなって思ったけど、部屋に入らせてもらったら、おまえ、何か一生懸命腕伸ばしててさ・・・・」
言い訳のように言って、赤組さんは尋ねたなり。
「なぁ、何の夢見ていたんだよ?一体」
青組さんは赤組さんの手を握りしめたまま、額に押し当てたなり。
「ん、大した夢じゃねえよ」
青組さんはにっこりと笑って見せたなり。もう、あの夢を見るとはない、と青組さんは確信して、もう1度赤組さんの手をぎゅっと握りしめたなり。