×× 下宿屋木村番外編 しあわせの匂い ××

 

最近パパは「あろまてらぴぃ」というのがお気に召しているらしいです。映画の撮影で、タイとか言う国に行ったとき、とってもいい感じだったんだって。

あ、ご挨拶が遅れました。こんにちは、木村ボニータです。えっ、と・・・・お久しぶりです?

とにかくパパは、あろまてらぴぃとかいうものに凝っていて、時々部屋に不思議な匂いをさせます。

「リラックスしたいから、今日はこれ」

とか、

「疲れているからこれにしよう」

とか言って、その度に違う匂いをさせます。

でも、中居くんはあまりその匂いが好きではないようです。帰ってきたときに

部屋に匂いがすると、何も言わずに窓を開けてしまいます。

「何すんだよ!!」

とパパは言いますが、中居くんは、一言、

「匂いがきつくて気持ちわりぃ」

といいます。パパはとっても不服そうですが、それで我慢をして(?)何も言いません。ボニも実は中居くんの意見に賛成です。どうやらボニはパパたちよりもずっと匂いを強く感じるみたいで、ボニにはあろまてらぴぃの匂いはきつすぎるみたいなんです。ラベンダーやカモミールの匂いも、中居くんがしばらくお部屋の空気を入れ換えて、それから窓を閉めた後くらいが好きなんだけど。

それにボニには、あろまてらびぃより好きな匂いがあるんです。ラベンダーやカモミールの匂いが強いとなかなか気づけないんだけど。

 

中居くんがあまり嫌がるので、パパは中居くんが帰る前に部屋の空気の入れ換えをするようになりました。ボニにとっても、それは助かります。

入れ替えがすんでしばらくすると中居くんが帰ってきました。あ、ボニの好きな匂いがするーぅ!ボニは嬉しくなって中居くんの周りをくんくんしました。パパも気が付いたみたいです。

「あれ?今日のサタ☆スマって、ベビーシッターだった?」

「わかる?」

「うん、赤ちゃんの匂いがする」

パパもボニみたいに中居くんのそばでくんくんしました。中居くんも、自分の服をつまむと鼻を近づけました。

「赤ちゃんの匂いっていいよな。なんか幸せの匂い、って感じがする」

パパが言いました。

「そんな単純なもんでもねぇのよ」

中居くんが笑いながら言いました。

「あのさぁ、俺がミルク飲んでるわけでも、ミルク出してるわけでもねぇのにこんなに匂いがするのって何故だと思う?赤ん坊って、結構何かのはずみでミルクを吐いたりするの。勢いよく吐くときもあるし、涎と一緒にたらーりって時もあるけど。だから、自然と赤ん坊の周りってミルク臭くなっちゃうんだよな。まぁ、俺も最近知ったんだけどね」

「結構大変なのな」

パパは言いました。

「でも、やっぱり俺、この匂い好きだよ」

「うん、俺も嫌いじゃない」

そう言っている二人の顔はとても優しくって、ボニはやっぱりこの匂いはしあわせの匂いなんだと思いました。